木材の基礎知識
何気なく歩行者通路に生えている樹から、山林地帯の樹まで、樹と言うものは身近な資源であり存在です。木材を化学成分で分析すると、C(炭素)が約50㌫・H(水素)が約6㌫・そしてO(酸素)が約44㌫で、この元素組織は樹種が異なっても、ほとんど変わりません。N(窒素)が含まれていない事に気付いた人もいるかと思いますが、木材には窒素は、ほとんど含まれません。木材は生命活動を終え、細胞の内容物を持たない死んだ細胞から構成されます。
木材を構成する細胞壁はセルロース・ヘミセルロース・リグニンに大別される、高分子の化学成分によって構成されています。これら3種の化学成分は、どれもC・H・Oだけを元素として含む化合物です。木材の化学成分の覚え方に「蝶」と言う覚え方がありますが、炭素・水素・酸素の元素記号でC・H・O(蝶)と読む事ができるのです。
木材は古くから燃料として利用され、今も木材の総需要量の約半分が「燃料としての利用」です。木材が燃料として長い間使われたきた理由として、木材を完全燃焼させるとH2o(水)とCo2(二酸化炭素)だけが生成し、他の有機物の燃焼の際に問題となる、NOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)が発生しないと言う点も理由でしょう。
樹を燃焼すると水と二酸化炭素になります。これを逆に考えると、樹は光合成過程で光エネルギーを使って水を分解して得た水素を二酸化炭素に与えて、二酸化炭素を炭水化物として固定化したものと言えます。そして、二酸化炭素を固定化するだけではなく、それと同時に酸素をも作り出しています。
この様に樹と言うものは、太陽光エネルギーを利用した二酸化炭素の固定化によって、「木材」と言う資源を作るほか、同時に他の生物が生きる上で必要となる「酸素」を作り出しています。「たかが樹」かもしれませんが、樹の存在は地球上の生命活動の維持に、大きな影響を持っているのです。