アブソリュート | forestwalkingのブログ

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2013年の暮れに、突然この世を去られた、理学博士 藤田忠男先生の研究を掲載していくブログです。

Rose absolute
■有機溶剤抽出法による精油

有機溶剤抽出法による精油はアブソリュート absolute と呼ばれ、特にメンタルに影響する精油です。 代表的なものはローズ・アブソリュート (Rosa centifolia or Rosa Damascena | Petals) CAS# 8007-01-0 です。 脂溶性が高い物質が抽出され、血液脳関門を通過しやすい物質です。 水蒸気蒸留法で抽出されるものとは違い、化学物質の溶剤により抽出されるところが特徴的です。 この方法は植物の芳香成分などの化学物質を濃縮して抽出できることが特徴的です。 アレルギー起因物質であるアレルゲンを混入する危険性もあり注意深く取り扱うことが必要です。 一般名ローズ・アブソリュートのアレルゲン混在はよく知られています。 ひとのヒーリングに強い効果があるといわれています。芳香によく使われています。ローズ・アブソリュートは低温になると固まります。 冷しても、固まらない場合は偽和ということになります。

有機溶剤抽出法では以下の精油が製造されている。右の写真はインドの有機溶剤抽出のプラントです。



    Jasmine absolute
    Lavender absolute
    Oakmoss absolute
    Rose absolute
    Lotus absolute
    Clary sage absolute


■有機溶剤残留

有機溶剤抽出法では有機溶媒を使うので、それらが残留している可能性があります。 肌接触や血液循環に入ると脳神経系などの生体に悪い作用をする可能性があります。製造のときに完全に取り除くことが必要であり、 GC/MS などの精密解析により抽出溶媒が残存していないことを確認する必要があります。



■ローズ・アブソリュートの製品規格

精油の規格書の例を示します。基本的にはロット毎に作成して保存する義務があります。 特徴成分のΒーフェニルエチルアルコールは、45-71% 含まれる。シトロネロールは、6-12% 含まれる。 これは一般にはMSDSと呼ばれるものです。 この中で精油の成分も書かれていますが、特定ロットについての分析表ではないので成分表とは呼びません。 成分の標準濃度を示しています。実際のロットと異なっていて当然のことです。 ローズの産地はブルガリアやトルコなどで、分析化学での実力がないのでしょう。

一般にバラの匂いに酔うという表現があります。パラの匂いを嗅ぐと酒に酔ったような感覚がすることを指します。 βーフェニルエチルアルコールが主原因物質と思われますが、確かにエタノールにフェニル基が置換した構造をもっています。 α位の水酸基のあるフェニルエチルアルコールはバラの匂いがしないという。



INFORMATION ON ROSE ABSOLUTE
Botanical name: Rosa damascena (P.Miller)
Part of plant used: Blossoms
Country of origin: Bulgaria
Cultivated herb: Yes
Natural herb: Yes
Gathered herb: Yes
Organic certification - certifying body Not certified
Method of manufacture: Extraction
Material safety data sheets: Available upon request
Method of analysis Gas-chromatography
Known formulation incompatibilities: N/a
Must be homogenous blend: Yes
Seasonal harvesting: During May and June
Certificate of analysis: Yes
Appearance: Liquid
Synonyms: None
Storage: Keep in well-sealed containers at to 5・15 degrees C, without direct exposure to sunshine or heat sources.
Color: Orange-red
Aroma: Fresh of roses
Physicochemical indices:

Acid value, mg KOH/g

not more than 11.0

Relative density, d 20/20

from 0.950 to 0.995

Refraction number, n 25/D

from 1.4900 to 1.5150

Ester value, mg KOH/g

from 13.0 to 30.0

Ester value after acetylation, mg KOH/g

from 217.0 to 274.0

Content of characteristic ingredients, %

phenyl-ethyl alcohol from 45.0 to 71.0
citronelol from 6.0 to 12.0
geraniol from 2.5 to 7.5
nerol from 1.5 to 6.5
evgenol from 0.9 to 2.2
ethyl alcohol up to 2.0
methyl evgenol from 0.3 to 0.8
Composition: Phenyl-ethyl alcohol, geraniol, nerol and others.
Expiry term: Three years.
Application: Rose absolute is a product used as a component in Perfumery & Cosmetic items.


■βーフェニルエチルアルコールの構造

エチルアルコールにフェニル基が置換したもの。芳香を醸しだす。現在では化学合成できる。phenyl-ethyl alcohol と書かれているが、 phenylethyl alcohol と書くのが一般的。精油に添加されている可能性があります。典型的な芳香成分です。

■Geraniol の構造

モノテルペンアルコール。

■Nerol の構造

モノテルペンアルコール。ゲラニアールとの幾何異性体。2重結合の箇所でシス体になっています。原子数が同じでも構造が違うと物性が変わります。

■Citronelol の構造

モノテルペンアルコール。

■Evgenol の構造

Evgenol というフェノールが微量に含まれている。エーテル性の基も併せ持つ。この化合物はローズアプソリュートの特徴的な芳香をもつだろう。 フェニルエーテルの類になる。Eugenol (CAS 97-53-0) が一般的な名前。

■エチルアルコール

エチルアルコール CH3CH2OH は最大2%までと書かれているが残留溶媒。 有機溶剤抽出法の最終段階ではエチルアルコール可溶の物質が抽出される。刺激性をもっている。

ローズアブソリュートは残留溶媒を含むので芳香剤と化粧品材料として用途を限定している。 テルペンアルコールはわずかに水に溶解するので芳香蒸留水が喜ばれている。



■冷浸法(アンフルラージュ)

ローズ、ジャスミンなど温度の低い条件で精油を抽出する方法。 ガラス板に精製した豚脂肪か牛脂肪を塗り、花などの植物抽出部位を一面に敷き詰める。 精油成分を脂肪に吸収させるため、このガラス板を木枠に積み重ね数日間放置する。精油成分を吸収した脂肪はポマードと呼ぶ。 ポマードからエチルアルコールを使って精油を分離させる。 この方法で得られる精油はアブソリュートと呼ばれる。 アブソリュートは植物自体が高価な上、手間がかかるため高級品となる。 冷浸法よりはアブソリュートを抽出するには溶剤中抽出法が使われている。



■ローズ・オットーは水蒸気蒸留法

ローズ・アブソリュートは有機溶剤抽出法では有機溶媒で抽出されますが、 ローズ・オットー Rose Otto (Rosa Damascena | Petals) は水蒸気蒸留法で製造されます。同じ CAS 番号で登録されています。


■Rose oil CAS# 8007-01-0

Rosemary absolute, otto は、抽出方法が違い成分も異なりますが、同じ CAS# で登録されています。 登録者がローズの精油としてひっくるめて同じ番号で登録しています。




■ブルガリアローズの製品保証書

ローズアブソリュートは高級な精油です。ブルガリアの輸出の柱になっています。製品保証書は参考になります。 色や匂いの特徴と特徴成分の成分表が書かれています。残留溶媒のチェックなどの分析値はないようだ。

画像が鮮明ではないのですが、ロット番号などが書かれている。 トルコ産のローズでは、保証書のテンプレートは PDF ファイルでも公開されている。実際は公印が押されている。

これらの保証書は精油のサプライヤーのコンプライアンスで作成されている。 品質管理基準もさまざまだ。日本に輸入されたとき購入者の手元に渡る必要があります。

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■有機溶剤抽出法の問題点

この方法は限定的で、ジャスミンなどデリケートで水蒸気蒸留法による抽出では香りの成分が変化したり、失われたりする場合に用います。 石油エ-テル、ヘキサン、ベンゼンなどの揮発性の化学溶剤の中に植物原料を漬けこみ、精油成分を抽出する方法です。 この方法で採取した精油はアブソリュートと呼ばれます。 蒸気蒸留法でバラの花から採取したものは「ローズオットー」と呼ばれ、有機溶剤抽出法の場合は 「ローズアブソリュート」と呼ばれます。 アブソリュートにはほんのわずかですが、溶剤が残っているので、肌に直接塗るスキンケア・マッサージにはあまり向かず、おもに香水などに使われます。

アンフラルージュでは、 ガラス板に精製した脂肪を塗り、その上に摘み取ったばかりの花びらを広げ、 花びらを新しいものを取り替えていきながら抽出を続けます。 そして、脂肪を集めこの脂肪をポマードと呼びます。 それからこのポマードにエチルアルコールを混ぜて、脂肪とエッセンシャルオイルを分離します。 しかしこの製法は手間がかかるので、現在はあまり行われていません。

精油は化粧品配合材料として使われます。化粧品は薬事関連法規により全成分表示が義務付けられます。 有機溶剤抽出法による精油の残留溶媒も表示しなければならず、そのために商品価値を失うことになります。 分析技術の精度が向上しているので、微量の残留溶媒も発見されます。 そのために、より安全な水蒸気蒸留法で採られる精油を配合するようになります。 化粧品はグローバルに製造販売されるので、供給量が多い水蒸気蒸留法による精油を配合しています。