精油と微生物学 | forestwalkingのブログ

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2013年の暮れに、突然この世を去られた、理学博士 藤田忠男先生の研究を掲載していくブログです。

アロマテラピーと微生物学
■アロマテラピーと微生物学の関係

アロマテラピーにおける微生物学(microbiology)では医学部、看護学部、薬学部の初歩的な知識を身につけておく必要がある。 特に皮膚科の本当に基礎的な知識がないと、アロマテラピーそのものが理解できない。 ラベンダーを皮膚に塗布する意味はなにか。揮発した蒸気の中に酢酸リナリルがあり、それが脳において鎮静効果をもたらすのか。 それは化学成分が粘膜や肺胞から吸収され、血液循環にのり、血液脳関門を通過して脳細胞において作用した場合の問題だ。

皮膚に塗布したときに、皮膚の微生物が死滅する場合がある。これを殺菌という。ウィルスを含めて病害を受けないようにする抗微生物効果もある。 殺菌、抗微生物効果において、化学成分による作用メカニズムが大事になる。化学物質が微生物に対してどのように作用して死滅させたか。



■アロマテラピーと抗菌効果

抗菌アロマテラピーという造語も飛び出してきた。精油には微生物のいやがる化学成分があり、それで殺菌、抗菌効果を利用する。 微生物は人間にとって利益になるものがあるが、たいていは人間にとって敵の関係になる。 そのために、精油は利用されてきた物質だ。 今日のように抗菌剤が安く販売される前は、精油あるいはアルコールを抗菌、殺菌に用いたものだ。 天然由来のものは生産に限りがあるので合成抗菌剤が主流になってはいる。 アロマテラピーと微生物学は古くて新しい関係になる。



■微生物学の範囲

微生物学は、顕微鏡で見える程度の大きさの微生物を対象とする。 微生物とは(真正)細菌、古細菌、原生生物、真菌類など、顕微鏡的大きさ以下の生物を指す。 微生物学では、主として原核生物(細菌、古細菌)をその対象とする場合が多い。また、ウイルスをその対象に含める場合もある。 そして微生物の生化学的な解析を行う。細菌では微生物の分子構造まで踏み込んでいる。

1876年に、ロベルト・コッホによって炭疽菌 (Bacillus anthracis)が分離され、その病原性が明らかになったのが始まりだ。 1945年以降は遺伝学と生化学が微生物学と融合してきた。最近の研究では、大腸菌の遺伝子を操作して、有用なタンパクを作り出そうとしてきた。 遺伝子工学がもとはやされた時代もあった。

大阪大学微研堀口先生のところで細菌毒素の研究をやっている。 微生物が人間に多くの病気をもたらすので、 微生物学の研究は必要になっている。大学ではタンパク構造レベルでの研究になっている。


■光学顕微鏡

微生物学者は光学顕微鏡を宝物にしている。皮膚科医も光学顕微鏡を使う。皮膚科医は聴診器は使わないだろうか。 皮膚病の病原菌を見て診断をする。それに対応する薬剤や抗生物質を決める。

顕微鏡を用いた細胞の観察は現在でも必要欠くべからざるものである。現在は、電子顕微鏡をはじめ多くの高性能な顕微鏡が開発されているが、 その結果微生物表面に存在する鞭毛運動やタンパク質の挙動などが明らかになってきている。



■寒天培地による培養が基本

微生物学の最も基本的な手法は、微生物の純粋培養技術つまり単一微生物を分離することだ。 多種類の微生物同士が種間相互作用を行っているので、 個々の種類の性質を研究するには、微生物を純粋に培養することから始める。 純粋培養には器具の滅菌、ならびに培地の組成など微生物のみならず、細胞を扱う学問の基礎となる技術が伴うので、 大学では学生実験として教える。

環境から取得した土を滅菌した水などに懸濁し、静置後上澄みを適当に希釈し寒天培地に塗布する。適温に放置し菌の生育を待つ。 生育してきたコロニーをさらに白金耳などで寒天培地に塗布しシングルコロニー(単一菌体由来のコロニー)を取得する。 これが実験のあらましだ。



■テルペン系アルコールの殺菌効果

たとえば、サンダルウッド精油の特徴成分であるサンタロールのような脂溶性テルペン系アルコールの作用で、 菌の細胞膜の2層ある脂質を溶解することで、 サンタロールの細胞内への浸透性が高まり、細胞膜および細胞内のタンパクや核酸を変性させるメカニズムで菌を殺すといわれる。

精油の化学成分のテルペン類はきわめて脂溶性の高い化合物で、細胞膜を溶かして穴をあけテルペン系アルコールの作用を増強させると考えられています。 複数の化合物の協力によるもので、これを相乗効果とよんでいます。



■バクテリアの構造

バクテリアは生命体の最小単位の構造をとっていて、研究対象になっている。細菌細胞はDNAを含む nucleoid、細胞質、細胞膜、細胞壁、から成る。グラム陰性菌は細胞壁の外に外膜を持つ。 これに、鞭毛、線毛、きょう膜など付属器官を持つものもある 総ての菌は構造上、グラム陽性、陰性、いずれかの仲間に分類される。



グラム染色 菌名
球菌 陽性 ブドウ球菌(Staphylococcus)
連鎖球菌(Streptococcus)
肺炎球菌(Pneumococcus)
マイコプラスマ(Mycoplasma)
陰性 淋菌(Neisseria gonorrhoeae)
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)
かん菌 陽性 リステリア(Listeria)
ジフテリア(Corynebacterium dyphtheriae)
$炭そ菌(Bacillus anthracis)
$*ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)
$*破傷風菌 (Clostridium tetani)
$*ガスえそ菌(Clostridium perfringens)
抗酸菌(マイコバクテリア、Mycobacterium)
:結核、らい
陰性 赤痢菌(Shigella)
大腸菌(Escherichia coli)
サルモネラ菌(Salmonella)
チフス菌(S. typhi)
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)
肺炎かん菌(Klebsiella pneumoniae)
百日咳菌 (Bordetella pertussis)
コレラ菌 (Vibrio cholerae)
キャンピロバクター(Campylobacter)
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
在郷軍人病(Legionella pneuophila)
*バクテロイデス(Bacteroides)
スピロヘータ(Spirochete):梅毒
レプトスピラ、ボレリア(ライム病)
クラミジア(Chlamydia):トラコーマ、オウム病
非淋菌性尿道炎
リケッチャ(Rickettsia):つつがむし病

* :酸素存在下で死ぬ菌(胞子を除く)。
$ :胞子を形成する菌。胞子は熱、乾燥に強い。



■グラム陽性、陰性の区別

総ての菌は構造上、グラム陽性、陰性菌に分類される。

方法を説明する。
★ガラス板に菌を塗り付け乾かし固定する。
★クリスタルバイオレット(青)染色後、次いで水洗する。
★NaI+I2(媒染剤)処理する。
★アルコールで洗う。
★サフラニン(赤)で染色する。

菌が青く染色されたらグラム陽性、赤く染色されたらグラム陰性である。 即ちグラム陰性菌はアルコール処理で脱色され、陽性菌は脱色されないということだ。 グラム陽性菌には外膜(outer membrane)がないが、 陰性菌には外膜が有る。また、細胞壁はグラム陽性菌の方がより厚い。