シネオールの毒性 | forestwalkingのブログ

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2013年の暮れに、突然この世を去られた、理学博士 藤田忠男先生の研究を掲載していくブログです。

シネオールの毒性
■ユーカリプトール

ユーカリプトールは別名が多く、 1,8-cineol, 1,8-cineole, limonene oxide, cajeputol, 1,8-epoxy-p-menthane, 1,8-oxido-p-menthane, eucalyptol, eucalyptole, 1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2,2,2]octane, cineol, cineole と呼ばれる。精油ユーカリ(Eucalyptus globulus) の90%の成分だ。 沸点 沸点 176度、引火点は 49 度。

ユーカリオイルとかユーカリ精油というのは日本語の略称。 正しくはEucalyptus Essential Oilと言います。精油で揮発性の油。 ユーカリ油は日本薬局方に収載され、その規格では、 主成分は 1,8-cineole(eucalyptol)約70%以上とされる。 ユーカリ油を蒸留すると99.6-99.8%のユーカリプトールが得られる。



■ユーカリプトールの毒性

経口摂取の通常の用量以下でも毒性がみられる。皮膚塗布や吸引においても同様だ。 毒性は行動にもみられ、呼吸器系や神経系に影響がある。 LD50 は 2480 mg/kg (rat)。 女性においては生殖器に毒性がみられる。男性においても同様と思われる。



■ユーカリ油の毒性計算

ユーカリプトールの LD50 を 2.5 と見積もる。ユーカリ油(Eucalyptus globulus) の90%の成分。 大人の体重を 60 kg とすると、トータルで 150 グラムと算定される。 ユーカリ油を 2.5% 濃度に希釈して施術に用いるとする。

1mL x 2.5% = approximately 0.025 grams of Eucalyptol.

0.025 gms ÷ 150 gms (LD50 dose) = 0.000167 or 0.0167%.

このとき使われた精油は、LD50 の 0.0167% に相当する。6000 倍程度小さい値だ。

実際は 2.5% 濃度より濃い濃度で施術することもできる。 ユーカリ油 10 mL を使う時は注意する必要があるが、実際には 10-30% で用いることがある。 全部で10mLを使用したときは、LD50 の 600 倍の値になる。 医師または経験のあるセラピストの指導で投与を受けること。 LD50 は急性毒性に対する値であることに注意する。発がん性は知られていない。 このようにユーカリ油の毒性はユーカリプトールの毒性に起因すると考えてもよいだろう。 しかし、微量成分が多く含まれているので相乗効果・クウェンチング効果も効いているとみられる。


ユーカリオイル成分分析表


α-pinene


0.90


δ-terpineol


0.07


β-pinene


0.23


menthyl acetate


0.18


sabinene


0.22


α-erpineol


0.41


myrcene


0.07


C15H24


0.10


α-terpinene


0.03


carvone


0.18


limonene


1.10


δ-cardinene


0.11


1,8-cineole


91.90


cuminal


0.14


γ-terpinene


0.04


myrtenol


0.08


p-cymene


2.04


β-phenylethyl acetate


0.02


terpinolene


0.02


trans-mentha-1,8-dien-6-ol


0.06


C10H16O


0.01


β-phenylethyl propionate


0.05


α,p-dimethylstyrene


0.04


calamenene


0.01


C10H18O


0.02


caryophyllene oxide


0.09


trans-menth-2-en-l-ol


0.01


C15H26O


0.03


pinocarvone


0.05


globulol


0.05


terpinen-4-ol


0.51


viridiflorol


0.01


cis-menth-2-en-l-ol


0.02


spathulenol


0.06


C10H18O


0.02


γ-eudesmol


0.00


myrtenal


0.13


α-eudesmol


0.02


trans-pinocarvenol


0.09


β-eudensmol


0.03



■LD50 豆知識

ED50, LD50 が混同されがちだ。右のグラフではTD50と書かれている。毒性で半数の動物が死んだことを示す。 薬を投与しても微量の薬を投与しても効果はないが、徐々に用量を増やして効果が出るとき、 投与した中で50%のヒトで有効な効果がでる投与量をED50という。 薬の用量を増やしていくと作用が強くなり、多量にある一定値以上の量を投与すると死亡する。 このとき、50%のヒトで死んでしまう投与量をLD50という。実際は動物が死ぬことだ。

ED50, LD50 の横軸での幅が案全域に相当する。この幅が広いほど安全性の高い薬物とみる。 たいていは、薬物はED50より大きい用量で投与する。 薬物の効果が期待できない量を、副作用があり得るのに、投与することはない。 ED50, LD50 は皮膚吸収、経口摂取、空気中暴露などの投与経路によって異なる。 毒性試験のNOAELにも関心をもつこと。



■1,8-Cineole の NOEL

1,8-Cineole (eucalyptol, No. 1234) の28日間ラットを使った毒性試験で、 1,8-Cineole の NOEL はオスで300、メスで1200 mg/kg bw/day であった (National Toxicology Program, 1987a) 。 マウスの80週の毒性試験では、 NOEL は 32 mg/kg bw/day であった (Roe et al., 1979).



■コアラの1,8-シネオールの代謝

コアラはユーカリを主食とするが、それは1,8-シネオールの代謝経路が違う。また代謝速度は驚くほど早い。 ひとは、1,8-シネオールの環の炭素を酸化し、代謝酵素 P450 により、 主に 2α-hydroxy-1,8-cineole および少しの 3α-hydroxy-1,8-cineole の代謝物を生合成する。 しかし、コアラはメチル基の炭素そのものを酸化し環の炭素は酸化しない。これらの構造は特定されている。 このようにヒトとコアラなどの動物のシネオールの代謝が違うことが原因だ。