「破壊出来ない敵ではない」
P-2000を撃墜したことで、光明を得た自衛隊。
もちろんいつもうまく行くとは思っていなくとも、浮足立つ程に士気が高揚した事は言うまでもない。
同時に弾薬を不足させている今が一番の好機である事も再認識した。
この好機をどう生かすか、短期間でその戦略を打ち出す必要があった。
だが…あれは本当にpepper軍の追い込まれた状況から打ち出された進軍であったのか。
西村の言うように、統括する何者かが居て、あくまで試験的な進軍であり、シナリオの一部であったとしたら…。
一方で、補給に向かう1つのpepper部隊がその補給のための拠点に到達しようとしていた。
そこは既に自衛隊に拠点を把握され、空爆を受けていた。
天野のラボからそれほど遠くないその場所は、かの地と同じくダム湖のほとりにあった。
静かな山村であったはずの「美和湖」のほとりは、当然避難命令が出され、爆撃の標的となっている山は山火事か、火山活動でもあったかのように焼け焦げている。
不思議な事にここまで何も反撃が無く、爆撃をしている自衛隊が、本当にここに拠点があるのかと疑う程になっていた。
だが、そこに接近するpepper部隊ありとの報告を受けると俄かに緊張が走り、警戒区域の周辺を固めていた自衛隊は防衛体制へと展開を変更した。
今度は接近するpepper軍も散開して森林の中を進む。絨毯爆撃をするような爆撃機を持たない自衛隊は、それでも迫撃砲、ロケット弾で牽制する。可能であればナパーム弾でも使いたいところだが、周囲の山々まで全て焼け野原にする訳にもいかない。
「敵は接近する部隊だけではない、基地方向の監視も怠るな!」
基地方向から別動隊が現れる可能性も考え、万一にも挟撃されない配置を維持しつつ展開する自衛隊。既に御殿場での勝利の報はここにも届いていた。
御殿場と環境は違えど、弾薬の尽きかけているであろうpepper軍を決して逃すまいと意気込む自衛隊。航空戦力の支援もあるとなると尚更だ。
しかしここに大きな誤算が発生した。
挟撃を受けぬ様、pepper部隊と基地を結ぶラインには部隊を展開せず、かつ容易にpepper部隊が基地に近付けぬように部隊を大きく二手に分けた自衛隊。その一方は湖のほとりに展開していた。
その部隊に、突如湖面に現れたpepper部隊が急襲する。
「な、なんだあれは!?」
水中に潜んでいたP-1000は、水中、水上用の推進装置を付け、凄まじいスピードで自衛隊に迫りつつ、砲撃を開始する。
湖畔にあった破壊済みの出入口こそ警戒していたものの、あらぬ方向からの攻撃対し、ほぼ無警戒だった自衛隊は即座に反応できず一撃を浴びる。
そこに、補給の為に接近してきたpepper部隊が一気に森林を駆け降り逆方向からの攻撃を仕掛ける。
挟撃を受けぬ様展開したはずが、完全に挟撃を受ける様となった。
もう一方の自衛隊軍は距離が離れ支援に間に合わない。
既に接近しすぎた状況の中、航空部隊も支援出来ず、上空を旋回するのみ。
さらに湖からTtypeが姿を現す。これも湖底に潜んでいたようだ。
そこから対空砲火が発射される。
被弾こそしないものの、支援活動を継続する術も無く航空部隊は戦線を離脱、その間に湖畔の自衛隊は殲滅された。
山間に展開していたもう一方の部隊に航空部隊から、湖畔の部隊の全滅の一報が入る。
「総員、退却!各自散開して撤退せよ!」
「ここが墜ちれば奴らは弾薬を補給してしまいます!手は無いんですか!?」
「近隣の航空部隊に大規模な空爆を要請する。今は他に方法は無い。我々が動ける可能性があるとすれば、その空爆が済んだ後の残党狩りだ。」
「くっ…了解しました!」
pepperの追撃を受けぬ様、蜘蛛の子を散らすように散り散りに撤退を始めた自衛隊。
その様はかつて太平洋戦争において支援を絶たれ、「各自、自活せよ」と取り残された日本兵を彷彿とさせる有様だった。
この地での敗戦の報を受けた本部は大規模な爆撃部隊を派遣するが、部隊が現地に到達した時には既に目標となるpepper部隊の姿は無く、先の戦闘における残骸が残るのみであった。
再び水中に隠れたか、拠点の中に潜伏したかもわからぬ状態、付近に再び地上部隊を派遣するには余りにも危険性が高く、やや離れた場所から監視する以外手は無かった。

大きく明暗を分けた二つの戦いは、「戦略」の難しさを浮き彫りにした。
成功をおさめた作戦であっても、常に次の新しい戦略に切り替え続けなければ勝つ事は出来ない。
各地で移動を続けるpepper部隊。
自衛隊は次の一手を打てず、防衛と撤退を繰り返し続ける状況に転じていった。