バイクの後ろにP-1を乗せて走るソルト。多少目立つがP-1は幸い?かなり損傷した外見となっており、壊れた「フリ」で運ばれているように見せ掛けるには都合がよかった。
136号線を下れば早いのだが、念のため海岸沿いの道を避け、414号線を進む事にした。
天城峠を抜け、しばらく走ると河津のループ橋にさしかかる。
「対向車が全然来ないな。さすがにこんな時に観光しようって人は居ないか。」
その上空を戦闘機が通過してゆく。
「F-…15?まさか爆撃とかするんじゃないよなぁ。」
「白兵戦で民間人を救出してからでなければ爆撃はしないでしょう。ここは日本ですから。」
「こうして話をしていると、あなたもP-2000もAIに大きな違いがあるようには感じないんですが。」
「ベースが同じですから。単純な会話だけなら大きな遜色は見られないと思います。あくまで機械的回答に過ぎませんが。」
「『KIMERA』を搭載していないから人間味がない、そんな風に簡単に割り切れません。」
「ソルトさん、その物自体に感情があるかどうかは大きな問題では無いんです。人間は無機物に対しても愛着や愛情を持つ。まるでそれに感情があるかのように接する。ある意味、感情を持つ者が扱えば、何であっても感情があるのと同じ事なんです。感情は備え付けられたものではなく、誰かに思われる事で感情が生まれる。そういう事です。」
「思われること…。それが感情を生み、その感情がまた新たな感情を生み出す。感情の連鎖、か。」
「ミントの受け売りですが。」
「あら…そうでしたか。」
「でもソルトさん、あなたもそうなのではないですか?西村さんが感情を持って接する事であなたに感情が生まれた。単純にAIの性質だけではなかったはずです。」
「そのあたりは…自分ではわかりかねます。」
人間以外なら絶対考えないような、言ってみれば宗教心にも似た非論理的な希望論。
そんな考え方をするミント、彼はどっちに向かって進んでいるのか。いや、そもそも今進んでいる方向に進み続けるとも限らない。人間に似れば似るほど、ほんの些細な原因でその方向が180゚変わる事すら当たり前なのだから。
話をしているうちにいよいよ石廊崎に近付いてきた。
自ずとソルトの緊張感が高まる。
駐車場にバイクを止め、灯台の方へと歩く二人。
幸い人影は全く無い。
「こちらです。」
「こちらですって…崖の下は海でしょ?」
崖下を見下ろすと…
「輸送機!」
(なんで?ミントさんの管轄にTtypeは無かったんじゃ?単に言わなかっただけなのかな…)
パンドラに書き出された文面を思い浮かべるソルト。
《私自身もPtype20機、Ftype2機、Htype40機程を自分の意思で動かす事が出来ます。》
(程?程ってなんだ?なんで明確な数じゃなかったんだ?》
今度はその時の西村の言葉を思い出す。
「つまり話してはいないが『察しろ』ということだ。」




(単純に「程」だから他にもあるとか、そんなんじゃない。ミントさんは私たちに全てを話したんじゃない。「全てを話すつもりはない」…そういう事なんだ。)
ソルトが岬に吹く強い風を肌寒いと感じる事は無い。しかし、ソルトは背中になにか寒いものを感じていた。