私は子供の頃から
劣悪な家庭環境から逃げるかのように
物語の世界に逃避するクセがあった。
気に入った物語の中で
私もその中のキャラクターの1人になって
魅力的な架空の友人たちと冒険の旅を楽しんだ。
時には強力な魔法を使い、敵を倒し、
時には自分の命を犠牲にして世界を守った。
けれど目の前にある現実は
家にあまりいたがらない母と弟
酒乱の父、
ペットのウサギやインコにしか心を開けない私。
それが現実だった。
私も家には居たくなかったので
近くの図書館に閉館ギリギリまで居た。
そんな日常だった。
ずーっと白昼夢ばかり見ていた。
大人になって働くようになってからもそれは続いた。
就職は地元から遠く離れたところにした。
けれども寂しくて、孤独でどうしていいかわからなかった。
同じように寂しくて孤独な人たちとなかよくなり
時々遊ぶようになった。
けれど、どちらも人を信じられないから
どこか遠い関係だった。
ある時私は精神科の薬とたくさんとお酒を飲み
死にかけた。
不思議だったのは朦朧とした意識の中で何故か
ベランダに布団を干しに行った事だった。
その布団は死んだばあちゃんが私のために生地を選び、真綿を入れ、一から打ち直してくれた綺麗な花柄の赤い布団だった。
雨が降っても干しっぱなしの布団を不審に思った近所の人が公団の事務局に連絡してくれて
実家から母がきて私は地元に連れ戻された。
この生きるか死ぬかの酷く情けない出来事が私の転機になった。
地元に帰った私は親の稼ぎの厄介になる半ニートな存在だった。
半日だけクリーニング屋さんのバイトをし、暇な時は原付バイクで温泉に行くという毎日を続けていた。
そんななかでだんだん私の中で何かが変わって行った。
ある日突然、どうしても白神山地に行ってみたくなり思い切って電車を乗り継いで行った。
大自然の中をを歩き、汗をかき、みたことのない絶景が広がる力強い命の経験が私の中に残った。
それから時間があれば電車に乗って近場、遠方問わず出かけた。
今はなき『寝台特急あけぼの』では日本全国を旅する女性と出会い、持ってるお菓子を交換しながら一期一会の出会いを楽しんだ。
その頃から少しずつ私は
イマジナリーマイワールドへ逃避しなくなっていた。
人生は無駄なことなんて何もないんだな。
どんな状況であれ心が躍る方向に勇気を持って歩み出すといいんだな。
今、私は長年勤められる職を得て、それなりに安定した生活をしている。
細かいトラブルはあるけれど
けれどもう大丈夫なんだなって思える。