『やわらかい砂のうえ』
寺地はるな/祥伝社文庫
寺地はるなさんの作品は、優しくて、気持ちが暖かくなります。
エンターテイメント性はありませんが、じんわりと心に染みます。
登場人物たちの何気ない日常のなかに、共感できる言葉や勇気付けられる言葉がたくさん散りばめられていました。
「ひとりの人間には「友人にしか見せない顔」も「職場でしか見せない顔」も「家族にも話していないこと」も存在する」
「自信は生まれながらに備わってるものでもないし、自然に身につくものとも違うの。他人から授かるもんでもないし。~~他人に否定されたらどうなんの?その自信、またすぐぐらつくんちゃう?~~ほめられるにせよ貶されるにせよ、自分の評価を他人に委ねている点では変わらない~~自信を持つぞ、って自分で決めて持ったらええねん。」
「真実でも、正論でも、相手の状況とか状態えかんによっては、受け入れてもらえんこともあるしな。ぜんぶ離せるのがいい関係やとは、私は思ってない」
「あんたが自分の思う『正しい生きかた』を実践するのは勝手やけどな。それを盾に他人を裁くのはどうなん。ちょっと傲慢なんとちゃう?」
「正解がわかってもそっちを選びたくない時は、誰にだってある」
「どれほど好きでも他人の存在を生きる指標にするなんて」
「~それはただ自分が歩くためだけの靴なんだよね。他人を殴るために使っちゃいけないんだ~~」
「ためらいなく繋いだ手を離せるように、隣を歩いている人を信じる。自分の足でしっかり立つ。」
「やわらかい砂のうえ」というタイトルが、物語全体で伏線になっています。
寺地さんの作品は、私には冗長で合わないものもあるのですが、この作品はとても面白かったです。
早田さんについては、「一体なんなの、この人」で終わらせず、ちゃんと彼なりの事情があることで救ってくれるのが、寺地さんの作品のいいところ。
おまけとして、早田さんの突っ込みどころのある言動、高校生くらいになったら、長男に読んでほしい!と思いました。
私自身、共感できる部分が多くある作品でした。
「そうそう、そうなんだよね」と思うことを、きっちり言語化して、物語に落とし込む。作家の方は、本当にすごいなと思います。