研修生みんなを東京見物に案内したかったが、それは残念ながら東京からの遠隔地在住者にはできないことであった。日帰りで東京見物ができるのは首都圏在住者に限られた。具体的に宇都宮と栃木佐野および大宮の研修生たちである。
   ところで、初めての上京ではとんでもないドタバタ劇があった。それは研修生たちがまだ携帯を持っていなかったことに由来する。
   その一つは宇都宮からケイ・コウエンとその仲良しのチョウ・ホが出て来た時のことである。宇都宮始発の電車に乗る時に公衆電話から私の携帯に発車時刻を連絡すること、上野駅で下りたらそこから動かないことを前日のメールで申し合わせしていた。私はその連絡を受けてから家を出れば十分に到着ホームで迎えることができる。ところが電話が来たのは「上野に着いた」という連絡であった。「何い!」、私はすぐ上野駅に飛んで行った。しかし、どこにいるのかこちらからは連絡ができない。取りあえず上野の駅員に公衆電話のあり場所を聞き、中央改札出口付近の電話コーナーに行ったらそこに2人がいた。1時間ほどそこでじっとしていたようだ。とにかく時間は遅れたが落ち合うことができた。【写真左】  
   二つ目は佐野のケイ・ショウロ及びトウ・セイと新宿駅で待ち合わせた時のこと。2回の乗り換えを含めた電車の時間を教え、新宿駅に着いたら一歩も動くなと前日のメールで確認しておいた。しかし、予定通り電車が着いてもホームにはいなかった。丁寧に2往復してみたけれど見つからない。もしかして電車の遅れなどで乗り換えがうまく行かなかったのだろうか、今どこにいるのか、こっちからは電話ができない。日本でまだ西も東も分からない2人である。さんざん気を揉んでいたら30分以上経って公衆電話から連絡が入った。「さっき新宿に着いた」と。私は「一体どこにいるんだ。一歩も動くなと言ったろう」と怒鳴り返した。南口にいると言うので改札内を見たり改札を出て探したりしたが見当らない。また電話があったので、そこから何が見えるか聞いたら「みずほ銀行」と言う。これまた探し回ったがみずほの支店などいくらでもあるだろう。いい加減にもう帰ろうかと思ったところに3回目の電話。今度は「高島屋」が見えると言ったのでやっと出会うことができた。そこは南口ではなくて新南口であった。言いつけを守らなかったことで思わぬトラブルに遭い、私はキレて怒りまくっていた。
   事情を聞くと、中国では出迎えや見送りなどでホームに入ることが出来ない。日本での事情の違いを知らず、とにかく下車客の流れにくっついて行って、駅を出たところで待つものと考えたようだ。それで改札を出たものの公衆電話が容易に見つからなかったらしい。同じ間違うにしても南口に出ていればすぐそこに公衆電話があり、もっと早く連絡ができたものを。とにもかくにも約1時間気を揉んだ果ての合流となった。【写真中】
   大宮のソン・ソバイたちの時は、大宮発着の電車が多すぎてどれに乗せたらいいか分からないので、大宮駅で待ち合わせをしたためそういうドタバタは起こらなかった。【写真右】