後期の授業が始まった週の土曜、同僚のモリキさんと共に日本語科主任教師のバオ先生のお宅に招かれた。ご主人は顔を知っている程度であったが、経貿学院の外語学部教務室の職員である。ここで私はしこたま中国の”白酒(バイチュウ)”をご馳走になって酔いつぶれてしまった。人前で酔いつぶれたことはほとんど記憶がないのだが・・・。

   家は新しいマンションで内装はほとんどバオ先生の注文によるとかで、なかなかにシャレている。
客を招く時の中国人の流儀で家の中を案内された。それから分厚い結婚アルバムを見せてくれた。これでもかと様々なポーズの写真が満載。普段余り愛想のないバオ先生とは別人の感がした。当時まだお子さんはいなかった。料理は全てご主人が作っているという。中国では共稼ぎが普通だが、料理も男性が作ることはごく普通なのだそうだ。
   料理が出来上がったところで4人揃ってテーブルに。初めビールを一杯いただいた後、白酒を奨められた。白酒はコーリャンを原料とする蒸留酒でアルコール度数は45度。モリキさんは酒は弱いので、私とご主人とで乾杯(カンペイ)を交わした。中国流の乾杯は完全に飲み干さなくてはならない。日本のぐい飲みくらいな杯で一気に飲み干したら注いでもらう。杯をちょっと合わせてまた「カンベイ!」、これを何度も何度も繰り返す。白酒は非常に口当たりがいい。上等なものを用意してくれたようだ。酒もうまい。たちまち瓶(720mℓ?)が空いて、2本目を奨めてくれた。そこまではよく覚えている。2本目もかなり空けたようなのだが、それからの記憶が全くない。目が覚めたら宿舎のベッドの中であった。酔いつぶれて自分の足では立てず、ご主人とモリキさんが肩をかついで運び込んでくれたという。しかも宿舎まではご主人運転の車で・・・。なんという酒豪。
   振り返ってみれば私もそんなに長くない時間で日本酒に換算すれば1升近くは飲んでいる。相当飲んではいたのだ。しかし相手は酔いつぶれた私を車に乗せて連れて帰ったのである。  週明けにすぐバオ先生にお礼とお詫びをした。しかし日本人の無作法に眉をしかめるどころか、招いた側としてそこまで心を許してくれた客に親しみを持ったようなのである。その後時々バオ先生から人前で「先生はお酒が上手(=強い)」と言われ、穴があったら入りたい気持ちであった。中国の酒豪は凄いと思うばかりである。

        
    モリキさん・バオ先生ご夫妻/今、我が家にある白酒