福岡県の介護サービス事業者が知っておくべき重要ポイント

福岡県では、介護サービスの質向上と適切な運営を確保するため、さまざまな取り組みが行われています。ここでは、介護サービス事業者の方々が特に押さえておくべき主要な情報をまとめました。

1. 介護サービス情報の報告と公表

介護サービス事業者は、提供するサービスの基本情報と運営情報をインターネットを通じて県(政令市)に報告する義務があります

• 新規事業所:事業開始時に基本情報のみ公表義務があり、運営情報は免除されますが、任意での公表も可能です。

• 既存事業所:前年度から継続している事業所は、年に1回(県が定めた時期)情報を公表します。

• 調査の希望:事業所が任意で調査を希望する場合、所定の方法で申し込み、手数料を納付することで、県(政令市)による調査が実施され、その結果に基づき介護サービス情報が公表されます。

2. 介護職員の専門性向上と特定行為の実施

介護福祉士や介護職員が特定の医療的ケア(喀痰吸引等)を実施するためには、専門的な研修と登録が必要です。

• 介護福祉士:基本研修または医療的ケアを修了している場合でも、登録喀痰吸引等事業者または登録研修機関で実地研修を修了し、実施できる喀痰吸引等が付記された介護福祉士登録証の交付を受ける必要があります

• 登録喀痰吸引等事業者:事業所内で介護福祉士が実地研修を修了していない場合は、当該事業所が実地研修を行う必要があります。

• 認定特定行為業務従事者:介護職員等が喀痰吸引等を実施するには、必要な知識・技能を習得するための研修(喀痰吸引等研修)を修了し、県から認定を受ける必要があります。

3. 事業所の安全対策と地域連携

利用者の安全確保と地域との協力は、事業所運営の重要な側面です。

• 防犯対策:受付表示や入所者との区別を明確にし(案内看板、誘導線、来訪者カードなど)、不審者への声かけ、防犯カメラや防犯設備の活用が推奨されます。

• 地域との連携:地域住民、保護者、関係機関(警察、自治体)との連携を深め、地域の行事にも積極的に参加することが求められます。

• 福祉用具の安全:福祉用具の重大事故に関する情報にも注意し、利用者の身体状況に応じた適切な用具調整と使用上の留意事項の説明を徹底してください。

4. 事業所の変更届出について

事業所の運営状況に変更があった場合、速やかな届出が必要です。

• 届出が必要な変更の例

    ◦ 法人の代表者、役員、事業所の管理者、サービス提供責任者、介護支援専門員の異動。

    ◦ 事業所の移転、増改築等による設備変更(事前に担当県事務所・市役所等との協議が必須)。

    ◦ 電話・ファクシミリ番号の変更。

    ◦ 事業の譲渡、法人の合併・分社等、開設者の変更(新規扱いとなり、事前に協議が必要)。

    ◦ 運営規程に定める事項(営業日、営業時間、通常の事業の実施地域等)の変更。

• 届出が不要な変更の例

    ◦ 介護報酬改定に伴う利用料金(貸与料金)の変更

5. 人材育成とキャリアアップ支援

介護職員の定着とスキルアップを支援するための多様な取り組みが奨励されています。

• 採用・人事・研修制度の構築:事業者共同での採用活動、人事ローテーション、研修制度の構築が推進されています。

• 幅広い採用:他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者など、経験や資格にこだわらない多様な人材の採用を促します。

• キャリアアップ支援:介護福祉士取得を目指す者への実務者研修受講支援や、ユニットリーダー研修、喀痰吸引、認知症ケア、マネジメント研修など、専門性の高い研修受講が支援されます。

• 働きやすい環境整備:子育てや家族介護と仕事の両立を支援する休業制度の充実、事業所内託児施設の整備、柔軟な勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、有給休暇を取得しやすい雰囲気づくりなどが挙げられます。

• 特定事業所加算:居宅介護支援事業所が特定事業所加算を取得するためには、介護支援専門員の実務研修の実習受入など、人材育成への協力体制整備が算定要件となります 。

6. 高齢者虐待の防止と対応

高齢者虐待は断じて許されず、その防止と早期対応が強く求められています。

• 「養介護施設従事者等」の範囲:老人福祉法や介護保険法に定める施設・事業の業務に従事する全ての者が対象となり、施設長や事務職員、介護職以外の職種も含まれます。

• 高齢者虐待の定義:高齢者が他者からの不適切な扱いにより、権利利益の侵害や生命、健康、生活が損なわれる状態に置かれることを指します。

• 虐待の種類と具体例

    ◦ 身体的虐待:身体に外傷が生じる、または生じる恐れのある暴行、身体拘束など。

    ◦ 心理的虐待:著しい暴言、拒絶的対応、無視など。

    ◦ 介護・世話の放棄・放任:入浴や着替えをさせない、褥瘡を放置する、水分・栄養補給を怠る、必要な医療を受けさせない、介護計画の見直しを怠る、必要な用具の使用を制限する、劣悪な環境に置くなど。

    ◦ 性的虐待:わいせつな行為をする、またはさせること。

    ◦ 経済的虐待:本人の年金や預貯金を無断で使用する、生活に必要なお金を渡さないなど。

• 「不適切なケア」と身体拘束:ささいな「不適切なケア」が放置されると虐待につながるため、「虐待の芽」を摘む取り組みが重要です。「緊急やむを得ない場合」以外の身体拘束は虐待とみなされます

• 事業者の義務:2021年4月1日より、全ての介護サービス事業者に、虐待防止のための委員会開催、指針整備、研修実施、担当者配置が義務付けられました。特に新規採用職員への虐待防止や身体拘束に関する正しい知識の早期習得が重要です。

• 通報の義務:高齢者虐待が疑われる場合でも、速やかに市町村に通報する義務があります。通報者の情報は漏洩しないよう保護されます。

• 発生要因と対策:高齢者虐待の主な発生要因は「教育・知識・介護技術等に関する問題」とされており、組織的な取り組みが求められます。

7. 個人情報保護の徹底

利用者の個人情報保護は、介護サービス提供における基本的な責任です。

• 個人情報の例:ケアプラン、介護サービス提供記録、事故状況記録など。

• 安全管理措置:個人情報の漏えい、滅失、毀損の防止のため、適切な安全管理措置を講じる必要があります。

• 利用目的の特定と同意:個人情報の利用目的を明確にし、目的の範囲を超えて利用する場合は本人の同意を得ることが原則です。ただし、人の生命・身体・財産保護、公衆衛生向上、国・地方公共団体への協力、学術研究目的などの場合は、同意なしに提供できる場合があります。

8. ノーリフティングケアの推進

介護職員の身体的負担軽減と利用者の安全・尊厳の確保のため、ノーリフティングケアが推進されています。

• ノーリフティングケアとは介護職員が利用者を抱え上げない介護方法です。

• メリット:介護職員の腰への負担軽減だけでなく、利用者の安心感向上、残存能力の活用、転倒・転落事故の防止にもつながります。

• 推進と研修:福岡県では、マネジメント研修や技術研修を実施し、スライディングシート、スライディングボード、リフトなどの福祉用具を活用した介助方法を普及させています。地域連絡協議会も設置され、普及活動が行われています。