私たちの町の
私たちの桜に
もうきっと二度と会えなくなった事に
私たちが気がついたあの日から
もう何年も経って
今年もまた
桜の季節が訪れて
あの川縁の桜がだいすきだったから
喪失感を拭えず
あの川縁の桜がだいすきだったから
他の桜に馴染めずに
道路を挟んだ桜並木も
始めてみる川を覆う白い桜も
通りゆく人々に
愛想を振り撒いているけど
他人行儀な笑顔に思えてしまうのは
きっとこの子たちが悪い訳じゃなく
私の心がまだ
春の雪解けを迎えていないから
川縁の桜
緑色に変わる頃には
白い着物を翻し
慰霊塔の周りをくるくると舞っていた
あの子も
爽やかな緑色に衣替えをして
毛虫と
蝉と
赤い葉
夏も秋も冬も
一年中
喜びの感情だけを
周囲に漂わせていた
大好きだったあの桜
もう二度と会うことはないけど
きっと他の桜の
きっと春の喜びを祝う声を
もう一度聞こえる日が来たら
あの子だってまた笑ってくれるかな