年齢を重ねるほど、考える時間が奪われていく気がします。
メール、打ち合わせ、チャット。常に誰かとつながりながら働く時代に、“静けさ”を保つのは簡単ではありません。
だからこそ私は、意識的に「考える時間をつくる」ことを習慣にしています。
考える力は、時間の中でしか育たない。今日は、私なりの“静かな思考時間の確保術”をお話しします。
目次
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「考える時間」は勝手には生まれない
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朝の喫茶店を“思考の部屋”にする
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デジタルを切って、紙だけに向き合う
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まとめ:静けさの中でしか深まらない
1. 「考える時間」は勝手には生まれない
以前の私は、スケジュール帳に空いている時間があれば、そこで考え事をすればいいと思っていました。
「午後に30分空いているから、この時間に来月のことを考えよう」という具合です。
ところが、これがほとんどうまくいきません。
30分の空白を見つけると、「それなら一本電話をしておこう」「このメールだけ返そう」「この資料も確認できるな」と、なぜか仕事を詰め込みたくなるのです。
気づけば空白だったはずの30分に予定が三つほど入り、肝心の“考える”は翌日に持ち越されます。
しかも厄介なのは、考える仕事には締め切りが見えにくいことです。
メールには返信相手がいます。打ち合わせには開始時間があります。
提出書類には締切があります。しかし、「会社の半年後について考える」といった仕事には、目の前で催促してくる人がいません。
だから後回しになる。
けれど経営をしていると、本当はこういう時間こそ大事なのだと思うようになりました。
目の前の案件を処理するだけなら、一日はそれなりに進みます。
しかし、その働き方を続けていると、いつの間にか「忙しく仕事をしているのに、どこへ向かっているのか分からない」という状態になってしまいます。
そこで今は、金曜の午前中などに「思考時間」とだけ予定を入れるようにしています。
予定表だけを見ると、何もしていないように見える時間です。でも私の中では、きちんとした仕事です。
先日は、その時間に「最近、やらなくてもいいのに続けている仕事はないか」と考えてみました。
書き出してみると、ありました。
習慣で確認している資料。毎回自分が返している問い合わせ。何となく続けている細かな作業。
一つひとつは10分程度でも、それが積み重なると結構な時間になります。
逆に、「これから時間を使うべき仕事は何か」も書き出してみました。
すると、不思議なもので、忙しい最中にはぼんやりしていた優先順位が見えてきました。
時間がないから考えられないのではなく、考える時間を先に取らないから、いつまでたっても時間がなくなる。
最近は、そんなふうに考えています。
2. 朝の喫茶店を“思考の部屋”にする
私が考え事をするときによく使うのが、朝の喫茶店です。
大阪の川沿いにある小さな店で、少し早い時間に入ると、まだ客もそれほど多くありません。
コーヒーを注文して、窓際に座り、ノートを開きます。
別に特別なことをするわけではありません。
最初に書くのは、そのとき頭に浮かんでいることです。
「最近気になっていること」
「決めなければならないこと」
「なぜか引っかかっていること」
そんな言葉を思いつくまま書きます。
最初の10分くらいは、たいした内容が出てこない日もあります。
「昨日ちょっと寝不足だった」
「資料を一つ作らないといけない」
「昼は何を食べよう」
我ながら経営者の思考時間とは思えない内容ですが、それでも構いません。
しばらく書いていると、その下から本当に考えたかったことが出てくるからです。
ある朝、「最近、仕事が細かく途切れる」と書きました。
そこから、「なぜだろう」「連絡を見る回数が多い」「午前中に打ち合わせを入れすぎている」と続き、
最終的には「午前中は外部との予定を減らしたほうがいいのではないか」というところまでたどり着きました。
会社で机に座っていたら、たぶんここまで考えなかったでしょう。
会社にいると、どうしても“処理する頭”になります。
資料を開けば直したくなる。メールを見れば返したくなる。
誰かから話しかけられれば、そちらに意識が向く。
その点、喫茶店ではできることが限られています。
コーヒーを飲む。ノートを書く。窓の外を見る。
この「できることが少ない」という環境が、意外に重要なのかもしれません。
もちろん、いつも深い答えが出るわけではありません。
一時間考えた結果、「今日は特に結論なし」という日もあります。
以前なら、そういう時間を無駄だと思ったでしょう。
でも今は違います。
結論が出ないことを確認するのも、考える仕事の一つです。
コーヒー一杯で会社の未来が全部見えるなら、経営者はみんな喫茶店に住んでいるはずです。
そう簡単にはいきません。
だからこそ、同じテーマを何度も持ち帰りながら、少しずつ答えに近づいていけばいいと思っています。
3. デジタルを切って、紙だけに向き合う
思考時間にもう一つ決めていることがあります。
できるだけスマートフォンやパソコンを触らないことです。
便利なのは間違いありません。
調べたい言葉があればすぐ検索できますし、過去の資料も数秒で開けます。
しかし、考え事をしているときには、この便利さがかえって邪魔になることがあります。
一つ検索したつもりが、関連する記事を読み始める。通知が出てメールを見る。ついでにチャットも確認する。
気がつくと、何について考えていたのか分からなくなっています。
以前、紙のノートに仕事の方向性を書いている途中で、数字を一つ確認しようとパソコンを開いたことがありました。
数字だけ見ればよかったのですが、未読メールが目に入りました。
一通返信。
さらにもう一通。
そこへチャットが届いて返信。
15分後、ノートを見ると、途中で止まった文章が一行。
「今後もっと大切にしたいのは——」
……何を大切にしたかったのか、自分でも分からなくなりました。
思考というものは、案外デリケートです。
一度途切れると、同じ場所まで戻るのに時間がかかります。
その経験以来、考えると決めた時間は紙のノートとペンを基本にしています。
紙には通知が来ません。
こちらが書かなければ、何も起こりません。
この不便さがいいのです。
私はノートを書くとき、きれいに整理しようとは思いません。
矢印を書いたり、丸で囲んだり、思いついたことを余白に付け足したりします。
ときにはページの半分以上が意味不明な図になります。
それでも後から眺めると、「このとき自分はここで迷っていたんだな」と分かります。
仕事では、数字や資料に基づいて判断することが当然必要です。
私自身、補助金や助成金の申請支援に関わっていると、計画や根拠、数値を整理する重要性を日々感じます。
ただ、その数字をどう読むか、何を優先するか、最終的にどちらへ進むのかを決めるのは人です。
資料を増やしたからといって、自動的に答えが出るわけではありません。
むしろ情報を集めすぎると、かえって決められなくなることがあります。
そんなとき、一度デジタルから離れて、「自分は結局、何をしたいのか」と紙に書いてみる。
極端に単純な方法ですが、私はこれに何度も助けられてきました。
そしてもう一つ、最近大事だと思うのが「何も書かない時間」です。
ノートを開いたまま、数分ぼんやりする。
窓の外を眺める。
コーヒーを一口飲む。
昔なら、「何もしていない」と焦ったと思います。
今は、それも思考の一部だと思っています。
頭の中には、すぐ言葉になる考えと、まだ形になっていない考えがあります。
後者は、急かすと出てきません。
沈黙しているうちに、「あ、そういうことか」と突然つながることがあります。
だから空白を全部埋めない。
これは予定表についても、ノートについても同じなのかもしれません。
まとめ:静けさの中でしか深まらない
今の仕事は、とても便利になりました。
どこにいても連絡できます。資料を共有できます。オンラインで打ち合わせもできます。
以前なら一日かかっていたことが、数分で終わることもあります。
その便利さには、私自身ずいぶん助けられています。
一方で、「いつでも何かができる」からこそ、何もしない時間を自分で守らなければならなくなったとも感じます。
考える時間は、余った時間ではありません。
先に確保する時間です。
一日10分でも、週に一時間でもいい。
誰かから届いた情報ではなく、自分の頭の中にあることだけに向き合う。
すると、目の前の仕事の見え方が少し変わります。
「これは本当に今やるべきだろうか」
「この仕事は誰のためにしているのだろう」
「半年後、どうなっていたいのだろう」
こういう問いは、忙しく動いている最中にはなかなか出てきません。
そして経営でも仕事でも、案外大切なのは、答えをたくさん持っていることより、良い問いを持っていることなのではないかと思います。
静かな時間をつくることは、仕事を止めることではありません。
むしろ、進む方向を確かめるための時間です。
車でいえば、アクセルを踏み続けるのではなく、ときどき地図を見るようなものです。
地図を見る数分を惜しんで走り続けた結果、全然違う方向へ向かっていた、では困ります。
忙しいときほど、静かな時間を予定に入れる。
何かを足すのではなく、いったん情報を減らしてみる。
その小さな習慣が、結果として仕事の判断を速くし、迷う時間を減らしてくれるように感じています。
静けさは、仕事をしていない時間ではありません。
より良く仕事をするための、大切な仕事の一つです。
今日のメモ
・午前:思考時間ブロック1時間確保
・午後:案件整理と優先順位メモ作成
・夜:週次レビューと来週テーマの下書き
明日やること
・午前中の「連絡を見ない時間」を決める
・来月までに考えるテーマを3つ書き出す