本日は「立夏」。

 

“夏の立つがゆへ也”(暦便覧)

 

夏の始まりの時期です。

さわやかな五月晴れの空に鯉のぼりが気持ちよさそうに泳ぎます。

 


「立夏」から始まる夏の3ケ月を蕃秀(ばんしゅう)の季節といい、天地の陰陽の気が盛んに交流する生長期です。

『素問・四気調神大論』には、「繁茂にして穂を出すといわれ、天と地の気が交わり、万物は花が咲いて実を結ぶ」とあります。

 


漢方では、“ 天人合一(てんじんごういつ)”という思想があります。

人体を自然の一部として捉え、自然界で起こる事象は人間の身体でも起こりうると考えています。

そのため人間の身体でも春になると、冬の間じっと内包していたエネルギーが外へ向かうようになり、活性化していく時季であるとされています。

夏の陽気は春よりも一層外へ出て行こうとするため、人の気も外へ外へと向かいます。

焦ったり怒ったりしないように注意し、花が咲くようにほがらかに過ごしましょう。

 


また、『素問・宝命全形論』には「人は天地の気をもって生まれ、四季の法則をもってなる」と記されています。

これは 内的・外的環境のバランスを保ち、病気の発症を避け、体調の不安材料を減らすという考え方です。

その気候の特徴に合わせて養生することが大切なんですね。

 

日本の夏は湿度が高く、蒸し暑いのが特徴です。



心身に悪影響を与える暑さ(暑邪)は、汗として水分を発散させ、体内のエネルギーも消耗させるので、『熱中症』のような症状があらわれやすくなります。

また、湿気(湿邪)によって余分な水分が体内にたまると、『胃腸の症状』や『痛み』『だるさ』としてあらわれます。

晴れた日には寝具を干して部屋の風通しを良くし、水分補給は「少量を早目、こまめに」の原則を意識しましょう。



冷たいものの飲みすぎや、冷房の使い過ぎにも気をつけたいものです。

 

食養生では、夏野菜やゴーヤなど苦みのあるもので身体の余分な熱を取り除き、季節の果物の程よい酸味と甘味で必要な潤いを補います。

料理の味は気持ち薄めにして五臓の「脾(胃腸・消化吸収)」をいたわり、シソや生姜などの薬味を取り入れて身体を冷やし過ぎないように調節することも大切です。

 


中医学の五行説では、夏は五臓の「心(心臓の循環機能・自律神経)」が深く関係しています。

「血と気」の不足によって引き起こされる『動悸』『血圧上昇』などにも注意しましょう。

『黄帝内経』では、「夏に養生を怠ると心気が損なわれ、秋に『咳(せき)』の症状があらわれ、冬に病気になる」と表現されています。