過去の朝ドラを全て観てるわけではないので断言はできないが・・・
これほどヒロインやその家族に共感を覚えないドラマがかつてあったのだろうか？
もちろん、家族全員が”品行方正”である必要はない。ひねくれ者やどうしようもない問題児がいた方が現実味もあるし、話の展開上も面白くなるかもしれない。
だが『梅』の場合は、”全員問題児”だから始末に負えない。
尾崎や岩谷CPの意向であえて”全員変人”に設定したのだろうが、その結果、「梅ワールド」では”常識人”の居場所がなくなってしまった。
「当たり前のことを言う人間が、変人たちにやり込められ改心、謝罪する」構図。
番組開始から何度見せられたであろう。
所詮、「ドラマですから」という言い訳は要らない。
これが「戦後の日本人」であるかのように宣伝するのはやめるべきだ。
ケーキを頬張りながら、家長を愚弄して楽しんでいる息子たち。
暇を持て余し、”自分探し”に家出する母。節操もなく遊び呆ける祖母。
そして逆ギレして当り散らすヒロイン。
今から５５年以上前の話には、全く思えない。
彼らは、いわば「戦中派」。間違っても、戦後のお気楽世代ではない。
なのに、現代人以上に「平和ボケ」、頭の中は”色恋沙汰”ばかり。
戦後のシリアスな部分を前面に出せとは言わないが、全く出さないというのも不自然だ。
例えば病気なら、「感染症」。戦後は大流行し、死者も多数出たのに、「梅ワールド」では無視されたままだ。
「ラジオ」も出てこない。テレビが普及する昭和３０年代後半までは、庶民の娯楽であったラジオが全く出てこないのはあまりに不自然だ。
先祖や死者、神様への祈りも出てこない。
終戦直後の日本人なら、身内や知り合いで多くの戦没者がいたはずだ。神様への信仰も程度の差はともかく、普通の日本人なら持っていたはず。
なのに「梅ワールド」では、一切の描写がない。仏壇があるのにお祈りも、お供え物すらないという。
お墓参りも、新年のお祝いも、「お守り」も登場しない。
さらに言うと、地域のお祭りもイベントも何もない・・・東京・蒲田ってこんな町なの？
出てくるのは、「実写フィルム」と、「新聞ネタ」だけ。
しかも、史実を歪曲して描写するというおまけつき。
「ダンスが大流行」で、女学生にキャバレーでダンパさせ、
「山口判事事件」で、家長そっちのけでスキヤキを食らい、
「金属供出」で、白鳥さんをマンホールに突き落とし、
「朝鮮戦争」で、建造と鶴にコントをさせ、
「パチンコ」「ボーリング」に梅婆はうつつを抜かし、
「三種の神器」で、加藤家は昭和30年にオール電化になり、
「集団就職」で、地方差別を助長するなど・・・
付け加えるなら、登場人物たちの名前を過去の名作と呼ばれた朝ドラから拝借していること。これはオマージュというより、対抗心、敵愾心のようなものを感じる。ヒロイン・梅の着ているニットのセーターは、『ゲゲ』の茂が貧乏時代に年中身に着けていた物と同じ柄だ。
この制作者たちは、一体何がしたいのか？
同じ局の番組をパクったり、貶めたりして何が面白いの？
「反日」という言葉は好きではない。
だが、あまりにも戦後の日本をバカにしすぎではないか？
良い悪いという現代の価値観に関わらず、過去の歴史、風俗は勝手に変えられない。家長絶対主義、男尊女卑の傾向は、当時の日本には色濃く残っていたのだ。
例え「足かせ」になったとしても、その部分をきちんと押さえないと、観ている側には時代性が感じられず、「戦後の日本」という大前提が崩れてしまう。
結論になるが、やはり6月末で「打ち切り」するべきだった。
ヒロイン・梅が独立開業して大団円で済ませれば、マシだった。
その後のぐだぐだな展開は当初から予想されていたこと。
時間の無駄でしかないドラマ。感動することも泣くことも笑うこともない。
このような愚作を世に送り出した、東京制作には嫌悪感しか涌かない。
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