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外国人雇用のいろは

若手士業が集まるビジネス研究会『サムライEX』から派生した『外国人支援SIG』のブログ。行政書士、社会保険労務士、税理士、弁護士等のメンバーが、外国人の雇用、在留、トラブル解決、生活に関する情報を発信します。毎週水曜更新!

『日本で暮らすチャイニーズガールを専門家が物語にしちゃいました』

■第8話 社宅への引っ越し

サムライEXトレーディングに入社したリさん。

新入社員に割り当てられた社宅アパートに早速入居しましたが、いきなり部屋が雨漏りに見舞われました。

その社宅はもう会社が何十年も前からなじみの大家さんから借り上げているとのこと。

まあ家賃6万円のところを自己負担1万円で入居させてもらっているからあまり大きなことは言えない気もしますが、

これって誰かに何か言えないのかな?直接大家さんに言っていいのかな?

そこでリさんは翌日、会社の総務部に聞いてみることにしました。

 

リ:「おはようございます。新入社員の李です。あの~、社宅の部屋が雨漏りするんですけど。。。。」

総務部社員:「おはよう!あ~あの新入社員用の社宅ね。あそこ古いからね~。」

リ:「これって私から直接大家さんに言っていいんですか?!というかそもそもこれって修理してもらえるんですかね?」

総務部社員:「李さんが暴れて壊したとかでなければ基本的には大家さんに修繕義務があるはずだよ。

でもこの社宅の賃借人は会社だから、大家さんには会社から修理するようお願いすべきだろうね。」


リ:「暴れて壊すわけないじゃないですか、、、まだ昨日が入居初日なのに。
でも修繕義務は大家さんにあるんですね。では会社から大家さんになるべく早く修理してもらえるよう言ってもらえますか?」


総務部社員:「了解!ちなみに酔っ払って部屋の壁壊しちゃったら、それは借りてる人が修理しなきゃいけないから気をつけてね!」


リ:「・・・・。」


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【解説】(弁護士 田中 康晃)

 こんにちは。弁護士の田中です。

さて、今回も李さんが困っているようですね。

せっかく会社の社宅に入ったのにいきなり雨漏りのトラブルとは。。。

ではこうした社宅の場合、李さんは何か請求ができるのでしょうか。

 そもそも賃貸借契約の場合、賃貸人は賃借人にその賃貸物を使用・収益させる義務を負うとともに、その賃貸物に関する修繕義務も負います(民法第606条1項)。

ただし、賃借人自らが賃貸物を壊した場合には、賃借人の債務不履行となり、その場合には賃貸人に修繕義務はなくなると考えられます。今回は入居早々の雨漏りトラブルですから李さん側に債務不履行はなさそうですね。

 
 では李さんは賃借人として大家さんに修繕義務を要求できるのでしょうか。

 李さんが住んでいる社宅アパートは、どうやら会社が大家さんから一括借り上げをしているようですね。李さんと会社との間では社宅使用契約が結ばれているようですが、この社宅使用契約は賃貸借契約といえるのでしょうか。

 賃貸借契約と考えた場合、社員である李さんも賃借人(転借人)として扱われますし、また借地借家法が適用されるのでその点が大きな違いになります。

とはいえ、一般に社宅使用契約といってもその実態は様々ですので、社宅使用契約がどういう契約なのか(具体的な法律上の地位や法律関係)は、その実態に即して考える必要があります。

 李さんの場合、会社が福利厚生施設として借り上げたアパートを社宅として社員に提供しています。

しかも李さんが支払う社宅使用料は1万円と通常の賃料より相当低額の使用料なので、この場合はさすがに李さんが社宅アパートの賃借人(転借人)とはいえず、会社が賃借人となっているアパートを使用することができる契約(賃貸借契約ではなくいわゆる社宅使用契約)が李さんと会社との間で締結されていると考えるべきでしょう。

 この場合、当然ながら会社と大家さんとの賃貸借契約には、社宅として利用することや会社の社員が居住することを特約として明記しているはずです。こう考えていくと、例えば社員の使用料の負担割合によってはいわゆる社宅使用契約というより、むしろ実態は転貸借契約(大家さん→会社→社員とアパートが転貸されている状態をさします)として社員にも賃借人(転借人)の地位や借地借家法の適用を認めるべき場合もあり得るでしょう。

 さて今回は、李さんは単なる社宅の使用者(=賃借人ではない)である以上、賃借人である会社から雨漏りの修繕義務がある大家さん(賃貸人)へ修理の要望を出すことが順当なようですね。総務部の社員の言うことに従いましょう。

ただし、大家さんと会社との取り決めの中で、社宅使用者が直接大家さんに修理要望を出すことを認める特約をしていれば直接李さんから大家さんへ言えることになります。

契約上の地位や法律関係は実態に即して考えていきましょう!