需要が減っているのに供給を増やしてしまった愚策

From 岡田磨左英(中小企業診断士)

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2024年問題と言われていますが、具体的にはどういうことでしょうか。

簡単に言えば、「運送業にも残業規制が厳格化され、物が届かなくなる」という問題です。

いったい原因は何でしょうか。簡単に言うと、需要が減っている中で、運送業参入規制などを緩和し、供給が多くなり、競争が激化し、運賃が安くなり、運賃が安くなるということは、売上が減り、従業員の賃金も安くなり、運送業に就職する人も減り、人手不足となりさらに物が届かなくなるということです。

きっかけは、1990年の物流二法の改正という規制緩和です。具体的には、認可運賃から事前届け出運賃に変更(「自由」な運賃制度への変化)、免許制から認可制への変更(新規参入の増加)、最低車両台数の削減(全国一律5台に)です。

しかし、タイミングが悪かった。バブルが崩壊し、需要が縮小する外部環境下で、競争が激化した結果、確かに運賃は下がったが、企業の生き残りのため、それ以上のペースで運転手の給与が下落していくことになったのです。

そして、デフレ不況の中にも関わらず、小泉政権下の2003年にふたたび規制緩和をしてしまったのです。つまり、営業区域制の廃止、運賃が事後届け出制になどです。

そんなことをするものだから、さらに供給サイドの規制緩和により競争が激化し、同時に需要サイドでも変化が起きました。

デフレによる競争激化で、多品種小ロットの運送が主流になってしまいました。そして、デフレで荷主側のパワーが高まり、「必要なものを、必要な量と必要なタイミングで」という、いわゆるジャストインタイムが流行り、そういう物流が当然とされ、負担が運送事業者に押し付けられてしまったというわけです。

具体的には、多頻度小ロットにより、貨物一件当たりの貨物量が激減(何と1990年の三分の一に)、結果的に、物流件数が二倍に、しかも、貨物積載率が何と四割以下(六割、空気を運んでいる)、荷待ち・荷役時間が平均3時間と、無茶苦茶に非効率になってしまったのです。

なんという失策をしてしまったのでしょうか。経済政策の間違いにより、ドライバー不足となってしまったのです。
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岡田磨左英(中小企業診断士)