実質賃金は何によって決まるのか
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実質賃金の下落が止まりません。21カ月連続の減少です。一時的に上昇しても、大きなトレンドを見れば、1997年以降実質賃金は下落傾向でその下落は止まっていません。なんと四半世紀以上も実質賃金は下落しているのです。

これが政策ミスではなくて何でしょうか。マクロ経済政策が間違っていたと素直に反省するべきです。

政治家や官僚は「自らの愚かさに気が付いたときに賢くなった」という逆説を知るべきです。

ところで、実質賃金は何によって決まるのでしょうか。どのようにすれば上昇するのでしょうか。生産性の向上と労働分配率です。

あとは外部要因として輸入物価によっても影響を受けますし、企業にとっての外部要因である消費税によっても影響を受けます。

実質というのは量です。GDP三面等価の原則や名目と実質の違いを知っていれば説明の必要もありませんが、生産額というのは価格×数量です。

そして生産額と所得額と支出額は等しい。企業は何らかの財やサービスを生産して、所得を得るのですが、賃金はその所得額から一定の量を労働者に分配することによって決まります。

つまり企業が生み出した付加価値額の一部を労働者に分配することによって、賃金が決定されるのです。

そしてその付加価値額の何割を労働者に分配したかという率が、労働分配率と言われるものです。その労働分配率も下がっている。

企業経営者が将来不安をもっているので賃金も上げづらいということでしょう。

あとは輸入物価上昇により仕入れる額が強制的に増えてしまうわけですから、付加価値額が減ってしまう。

このことにより実質賃金に影響するわけです。

また、消費税というのは、付加価値額に掛けられる税金ですから、付加価値額に対する罰金と言ってもよい。

企業が合理的な経済活動として、付加価値額を減らそうとする。

つまり付加価値額というのは、ほぼ人件費と減価償却費と利益の合計ですから、それを減らそうとする。人件費を減らそうとする。

投資を減らそうとする。そういう行動に出てしまうのです。

このように、生産性の向上が進まず、労働分配率の低下が起こり、輸入物価も上昇し、消費税もかけられるとなったら、四重苦で、それは実質賃金の低下も起こるでしょう。まことに愚かな政府を持ったものです。
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岡田磨左英(中小企業診断士)