承前

 

私が最初にその方に声をかけてから2週間ちょっと

住民さんではなく、住民票も無い

ホームレス状態の1人の方の命を守るために

ボランティアではなく、NPOでもない

縦割りの役目がある立場の人たちが

普通はやらない、できない行動をとってくださり

区役所まで約束を取り付けて

いよいよ救出に

という当日。

 

 

 事態は混迷

約束の時間に包括の方が訪ねてみると

部屋のドアが少し開いた状態で固定され

玄関には荷物がまとまったカバンが3つ。

 

玄関からすぐのトイレとお風呂を確認してもいません。

すぐに私に連絡が入り、駆けつけました。

管理センターにも連絡して、1時間ほど待っても

帰ってくる気配はなく、私は防犯ビデオを確認しました。

 

前日にコーディネーターさんからご本人に

「明日は部屋に戻れないと思うので荷物はまとめてください」

と伝えた時に、朝の9時半にお金を借りる方と約束していると

言っていたとの事で、約束の場所にまだいるのか

どこかで倒れていないか、皆心配する中

防犯ビデオには、それよりも早い時間に出て行く姿が映ってました。

 

午後にはセンターの方も駆けつけて

結局、夕方まで待っても帰って来られず

施錠されていない部屋をこのままにはできず

一旦借りの施錠をせざるを得ないとの事で

施錠しました。

 

皆一様に落胆と心配と憤りなどが混じり

面倒みてくれる人の家にいている なら良いが

そうでないなら公式気温が氷点下近く

雪がちらつく中で外で過ごしていたら相当危険です。

 

私は夜に何度も戻っていないか確認しましたが

日付けが変わる直前までは戻ってきませんでした。

私もさすがに眠くなり、就寝しました。

 

 

 雪が降る極寒の中で

4時間ほどで起きてしまい

外はまだ暗い未明

ドアをノックする音が聞こえ

出てみると救急隊の方です。

 

私からその方の名前を言うと

救急の方は驚いて、ご存知ですか?事情を聞かせてくださいとの事。

そのまま救急車に行くとその方が横になっていました。

 

朝に通りかかった方が119番をしてくれたようで

仮施錠した部屋の前で寝ていたとの事。

救急隊は名前や生年月日は聞けたが

それ以上の事があやふやで、部屋の鍵は持っているのに

南京錠で施錠されており入れない どうなっているのか

という事で、仮施錠後にドアに御用の方はセンターか私まで連絡を

という貼り紙がされていたので、救急隊が私の部屋を訪ねました。

 

その方は測れないほどの低体温ですが

意識はあり、身体も動かせ、比較的に元気でした。

雪が降っていた極寒の夜に外で寝ていたようです。

 

 

さらに事態は急展開 

 

 人道

 

時刻はまだ6時台

救急隊の方に経緯を詳しく伝え

また救急隊からも、搬送先が無く

かなり遠方の病院になってしまうなど状況を伺いました。

既に救急車が到着してから90分が過ぎて

ちょうどゴミの日に当たっていたので

住民さんが沢山集まっています。

私は降りて説明して部屋に戻っていただきつつ

コーディネーターさんに連絡をしました。

コーディネーターさんから包括の方に連絡をとってもらい

とにかく9時の格事業所や役所が開庁するのを待つしかない状況に。

 

救急隊の方は9時が勤務シフトの終わりとの事。

交代の連携もとっていました。

コーディネーターさんが駆けつけてくれ

そのうちに時刻は9時をまわり

一斉にそれぞれの機関に連絡。

包括の方は区役所に直行し役所と連携して待機

管理センターからも駆けつけて

みんなその方に親を諭すように話しかけて

10時になろうとする頃に

例外中の例外で救急車が区役所に搬送してくださるとの事で

救急車は4時間以上待機したまま、そして隊員が変わると

事情をまた説明しないといけないなどで皆さん残ってくださり

そのまま区役所へ。

そして私たちも一旦解散しました。

その後防犯ビデオを確認すると

深夜の1時過ぎに帰ってくる様子が映ってましたが

既に雪がちらついていました。

 

 

 予想外の驚くべき展開に

解散後、やきもきしながら連絡を待ちましたが

そのまま夜になりました。

夜8時をまわった頃にコーディネーターさんから連絡があり

結論から言うと、隣県の老人ホームに入所したとの事。

縁も縁もない隣県のそれもかなり山深い観光地で有名な所。

しかも片道3時間近くかかる所を施設から車でお迎えに来たと。

もうびっくりするやら、何やら

何がどうしてそうなったのか

プライバシーの事もあり詳細は書けないですが

ただ、暖かい所で寝る場所と、栄養管理が行き届いた食事

健康管理もしてもらえるので、一旦は良かったと思いました。

 

しかし、その方にとっては、自分の意志ではなく

遠い地の施設に入り、知らない人たちばかりに囲まれて

生活を送る事は、それは良かったのかどうか

わかりませんが

少なくとも、居住権の無い部屋に違法に滞在して

しかもライフラインが止められ、所持金も無い状態よりは

命のを永らえ、次の生活への一歩を踏み出せる機会にはなったと思います。

 

 

 オトコマエな対応の格機関の方々

それにしても

今回は、それぞれの機関の方々

そして突然巻き込まれた救急の方々まで

皆オトコマエな対応をしてくださり

社会の中に埋もれた方の命を守って下さったと感謝しています。

中には上司の反対や困惑する機関を説得して動いてくださった方も。

それで感謝されたり、昇給昇格したりなどなく

皆、ほっとかれへん の一点です。

 

前述のように、その方にとって

今の状況は良かったのかどうか

ご本人にしか分かりませんが

役所に行く約束の時間にいなかった理由を

最初は迷惑をかけてしまうから

と言ってましたが、役所に同行した包括の方には

当日お金を貸してくれた人が、そんなの明日でも良い

と言われたと語っていたと。

ドアを開けていたのは、帰るという意思表示だったとも。

 

それはともかく時間が経って、よかったなと思ってもらえたら

格機関の方々の行動も報われると思います。

 

今回は可視化できたので

色々な対応ができましたが

世の中には埋もれた人たちが大勢いる事を

為政者は知るべきです。