BS 6月に放映される名作映画案内 Part4 | アラフォー世代が楽しめる音楽と映画

アラフォー世代が楽しめる音楽と映画

結婚、育児、人間関係、肌や身体の衰え、将来への不安...
ストレスを抱えるアラフォー世代が、聴いて楽しめる音楽、観て楽しめる映画を紹介します。
でも自分が好きな作品だけです!    

 自分の意識では大して長い月日が経っているとは思っていないのだが、久々に見る親戚の子息の成長に軽く戸惑う時がある。つい最近までランドセルを背負っていた少年が高校生になったくらいならまだしも、「結婚して子供もいる。」と改めて聞かされると驚いてしまう。勿論、彼の結婚式にも招待されたし、子供が生まれた報せも聞いている。それでも目の前の現実を認識しようとする思考回路が動かないのだ。周辺が時流変化しているにも拘らず、まるで自分だけが地球の自転に乗らずに昔の状態のままでいる錯覚に陥る。都合の良い理屈である。
 映画を観た時も同じような感慨に浸ることがある。『ALWAYS 三丁目の夕日』が大ヒットした理由の一つに、昔は生活が不便だったが、溢れる人情の温もりに堪らない郷愁を抱かせるからと思っている。その映画で薬師丸ひろ子が母親役を演じていた。彼女は暫く表舞台に出なかったせいもあるが、極端な話、ボクの中では『野生の証明』のいたいけな少女や高校生役の面影しか持っていない。それから『禁じられた遊び』のブリジット・フォッセーも然り、いつまでもミシェルの名を叫びながら、雑踏に中に消えていくポーレット少女のままなのだ。
 悲痛な結末ほど、映画の中の少女達にこれから訪れるであろう境涯を案じてしまう。不遇に挫けずに成長し、幸運を掴んで欲しいと強く願うのだ。ボクは演じた役柄と実際の女優を同一視してしまう。だからこそ彼女達が20余年過ぎて、別の映画で人並みの暮らしをする母親役の姿に心から安堵するのである。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 その情感は『レオン 完全版』を観終わった時も顕れた。両親や姉から疎ましがられた孤独な少女マチルダは、家族が虐殺された日から隣の部屋に住むプロの殺し屋と奇妙な共同生活を始める。復讐に燃えるマチルダは殺し屋から銃の扱いを教わり、逆にマチルダはイタリア育ちの彼に英語の読み書きを教えた。こうして二人の間には仄かな恋心が芽生える。
 しかし殺し屋は麻薬取締局の汚職捜査官に指揮の下、警官隊に完全包囲された。彼はマチルダを外へ逃し、壮絶な銃撃戦の後、汚職捜査官を道連れに爆死してしまう。独り残ったマチルダは厚生施設に入れられ、彼の彼の唯一の楽しみだった鉢植えの観葉植物を庭に植える...。
 現実と虚構が交錯する中、ボクは哀れなマチルダのその後を追ってみる。だがナタリー・ポートマンが成長した2000年代はボクが映画に疎遠だった時期と重なり、彼女の他の作品を観ていない。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 ふと数年前から記している鑑賞履歴を眺めてみると、『レオン 完全版』の前に『ブーリン家の姉妹』を観ていたことが判った。この映画は中世イングランド王ヘンリー8世の2番目の妻アン・ブーリンの生涯を描いたものだ。アンは最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンの侍女だったが、巧みにヘンリー8世に自分に関心を持つように仕向け、遂には王妃の座に就く。宮廷を追い出されたキャサリンは軟禁生活を強いられ、当然ながらアンを憎む...。ナタリーは知性教養が優れているが故、傲慢で自己顕示欲が強かったアン・ブーリンを巧く演じていたと思う。
 後に判ったことだが、この映画でキャサリンを演じた女優がアナ・トレントだと判り、仰天した。名作『ミツバチのささやき』で、彼女が演じたフランケンシュタインの怪物の存在を信じる無垢な少女アナ役に強烈な印象があるからだ。彼女もまた行く末が気になる少女であった。だがメイクアップのせいもあるが、もうその面影は無かった。30年以上の月日が流れれば、無理もないところだ。
 それでも時代に遡行しているとは言え、マチルダがアン・ブーリンに、アナがキャサリン・オブ・アラゴンに化身したのは面白い。まだナタリー・ポートマンや妹メアリー役のスカーレット・ヨハンソン、それにアナ・トレントの経歴や代表作を殆ど知らなかった頃の戯言である。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 さて『ブーリン家の姉妹』の舞台となったのは今から約500年前、イングランドが中世から近世へ大きな変革が遂げようとした時代である。1491年、国王ヘンリー7世の次男として生まれたヘンリー(後の8世)は屈強な体格で、馬上槍試合を得意としていた。また教育環境にも恵まれてラテン語、フランス語、スペイン語を流暢に話し、更に舞踏や音楽にも秀でる等、文武両道に長けた類まれな人物であった。
 その才能を政治手腕に発揮し、現在のイギリスの基礎を作った王として有名であるが、一方では残忍な性格を持ち、目的を遂げる為には宗教改革を施し、国体が揺れることも厭わなかった。ヘンリー8世の究極の願いは妻に世継ぎ(嫡男)を産ませ、チューダー王朝を堅守することである。それ故、正妻が男子を産める見込みが無くなったと見るや、難癖をつけ、離婚を正当化する為に謀略を図っては次々と王紀を替えていったのだ。だが当時のイングランドはローマ法皇下にあり、国教であるカトリック教は離婚を禁じていた。そこでヘンリー8世は宗教改革に乗り出し、ローマ・カトリックと訣別し、自らを長とするイギリス国教会を発布したのだ。
 実にヘンリー8世は生涯で6度もの結婚をしている。その6人の王妃のうち、自分の意に沿わない2人とは強制離婚、2人を処刑したのである。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 気品と威厳を兼ね備えていた最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンはスペイン王室出身である。だが元々キャサリンはヘンリー8世の兄アーサーの許に嫁いで来た王女なのだ。これは当時、大海の覇権を競っていたイングランドとスペインが無闇な戦争を起こさないようにと、両人が幼い頃に取り決められた政略結婚だった。
 キャサリンが16歳の誕生日を迎えると、すぐさまイングランドに迎えられ、結婚式が執り行われた。処がその僅か半年後、兄アーサーが病死してしまう。両国は国交関係を維持する為に、キャサリンと弟ヘンリーの結婚を画策する。だがヘンリーは才媛たる兄嫁キャサリンに強く憧れていたものの、自分の同意もなく一方的に決められたことに反発する等、この結婚話は紛糾する。
 やがて父ヘンリー7世が逝去し、ヘンリーが8世を名乗り、王位を継承した。元々キャサリンを思慕していたヘンリー8世は彼女を妻とすべく、兄嫁を娶ることを法律で禁じていたローマ法皇の特許状を得た後、華燭の祭典を挙げたのである。高貴で知的なキャサリンは若く精力的な王を支え、政治の片腕としても力を発揮する等、二人の仲は良好だった。
 しかし時が経つに連れ、二人の間に溝が深まっていく。王妃には世継ぎの息子を産む重要な役目があった。処がキャサリンは死産、流産も含め6人の子供を産んだのだが、二人の男子は何れも生後間もなく夭折してしまう。唯一生き残ったのは女子でメアリー(後のメアリー1世)と名付けられた。ヘンリー8世は「イングランドでは女性が国王となることに法律的な制限は無い!」と見做し、メアリーに英才教育を受けさせ、後にプリンセス・オブ・ウェールズ(世継ぎする王女の地位)の称号を与える。
 それでも当時のヨーロッパ諸国では女性が王位に就くことを認める法律も前例も無かったのである。メアリーに王位継承権を与えたのも、ヘンリー8世の焦燥の表れだと思う。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 そんなヘンリー8世の心の隙間に首尾よく入り込んだのが、キャサリン王紀に仕える侍女アン・ブーリンだった。アンは機転の利く計算の立つ女性で、執拗に迫るヘンリー8世を焦らし「王妃にしてくれないなら別れる。」と言い放ったのである。王は怒るどころか、一筋縄ではいかないアンに増々夢中になっていき、キャサリン紀との離婚を模索する。
 だがかつてローマ法皇の特許状を得てまで結婚したキャサリン妃との離婚が認可されるとは到底思えなかった。王はその折衝を大法官(宰相)トーマス・ウルジーに命ずるも、難航を極めて結局ウルジーは失脚した。そこでヘンリー8世はローマ・カトリック教と訣別して独自のイングランド国教会を創立する宗教改革を断行した。この時、ウルジーの後任にサー・トーマス・モアが大法官に選任されたのだが、元々モアはこの離婚問題には反対の立場を採り、間もなく大法官の職から退いた。
 モアの言動が癪に障ったヘンリー8世は後日、側近クロムウェルに命じて、モアがカトリック信徒の立場から国王至上法(国王をイングランド国教会の長とする)に反対したと悪意に曲解しては査問委員会にかけ、反逆罪の汚名を着させた。モアは弁明することなくロンドン塔に幽閉され、断頭台に立った。だがモアは怖気づかず、その姿は優雅であった。


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$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 こうしてヘンリー8世はローマ教会と訣別してまで強引にアン・ブーリンと結婚しようとした。しかしその前に問題があった。キャサリン妃との離婚が成立しないことには、重婚罪に問われるからだ。そこで妙案を思いつく。ローマ教会と訣別したのであれば、かつての特許状も無効と解釈したのである。そこでヘンリー8世は当時空位となっていたカンタベリー大司教にトーマス・クランマーを任命し、二人の結婚は初めから無かったという裁定を出させ、アンとの結婚を正式なものとして認めさせたのだ。その結果、キャサリンは王妃の地位を剥奪され、第一王位継承者である娘メアリーは庶子(愛人が産んだ子)扱いに身分を落とされた。
 正式な王妃になったアンは間もなく出産(既に妊娠4ヶ月)するが、女子(後のエリザベス1世)だった。男子誕生を待ち望んだヘンリー8世は落胆した。

 メアリーに不幸が忍び寄ったのは、彼女が16歳の時だった。アン王妃は先妻キャサリンの娘メアリーに対し、生まれたばかりのエリザベスへの臣従を命じた。しかしメアリーは「妹としては認めるが、王女としては認めない!」と拒否した。
 激怒したアンはメアリーを強引にエリザベスの侍女に貶めさせ、また王妃の地位にいる間、父ヘンリー8世との面会を拒絶させた。そして愛娘エリザベスの地位安定の為に、メアリーを徹底的に苛め抜いたのである。

 数年後、メアリーの実母で前王妃キャサリンが幽閉されたキンボルトン城で没した。その数週間後、アン王妃は2人目の子を流産してしまう。皮肉にも男子だった。ヘンリー8世の苛立ちはアンへの失望に転じ、彼女への情熱も冷めていった。その後、アン王妃は懐妊することがなかった。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 アン王妃に愛想を尽かしたヘンリー8世は新たにジェーン・シーモアと情事に耽るようになった。彼女はキャサリン、アンの両王妃に仕えていた女官なのだ。今のアンは自分がかつて仕向けた深慮遠謀と同じ目に遭っているのだ。まさに因果応報である! しかもジェーンはヘンリー8世の王妃に対する手の内を熟知していたことから、愛を受ける条件として王妃になることに執着していたらしい。
 ここでまたヘンリー8世は今や御用済みとなったアンを追い出す謀略を練る。それはアンに不義密通の疑いをかけ、反逆罪に問い、キャサリン同様に結婚無効に追い込むことだった。アンの流産から4ヶ月後、彼女の兄ジョージと四人の宮廷関係者が突然逮捕された。その中の一人が拷問に耐えかねて、アンとの密通を自白させられた。これを証拠にアンは逮捕され、ロンドン塔の断頭台に散ったのである。無実の罪を着せられたアンは2歳の娘エリザベスを残したまま、たった1000日で王妃の座から引き摺り下ろされたのだ。尚、娘エリザベスは母親が王妃の地位を剥奪された為、以前のメアリー同様、庶子扱いとなった。
 その10日後、ヘンリー8世はジェーンと正式に結婚する。暫くしてジェーンは懐妊し、待望の男子を産み、エドワード(後のエドワード6世)と名付けられた。しかしヘンリー8世最大の望みを叶えたジェーンは王妃は三日三晩の難産が祟り、12日後に産褥熱で世を去った。因みにこの時生まれたエドワードは、マーク・トウェインの小説「王子と乞食」のモデルになった王子である。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 その後もヘンリーは再婚を繰り返した。4番目の妻はローマ法皇と対立していたドイツと同盟を結ぶという意味合いが濃かった。既にヘンリー8世には嫡男エドワードを得ていたので、過去三回の結婚のように焦る必要はなかったのだ。
 側近クロムウェルは政治的思惑からドイツのクレーヴス公ヨハン3世の妹アンを勧めた。ヘンリー8世は彼女の肖像画を見て、美しさに惹かれて結婚したのだが、実際のアン・オブ・クレーブズは肖像画とはかけ離れた容姿だったので、一度も寝室を共にすることがなかった。怒り狂った王はクロムウェルを処刑し、その肖像画を描いた宮廷画家ハンス・ホルバインの宮廷出入りを禁止した。
 そこへキャサリン・ハワードという魅惑的な女性が現れた。ヘンリー8世はアンとの結婚解消を画策するが、元々ヨーロッパからの孤立を防ぐ目的の結婚であった為、国際関係に微妙に影響する。そこで正当な理由付けを編み出さなければならなかったのである。側近達は知恵を絞り、アンがかつてロレーヌ公の息子と交わした婚約が、公式には解約されていなかったと主張(難癖)したのだ。斯くしてヘンリー8世はドイツとの友好関係に配慮し、アン王妃に「王の妹」という称号を与えて僅か半年で体よく追放したのである。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画
 4番目の妻アン王妃との結婚を解消するや、ヘンリー8世は脱兎の如くキャサリン・ハワードと結婚した。キャサリンは2番目の王妃アンと従姉妹の関係であったが、彼女と違って幼少時代に全くの教育を受けていなかった。そんな身分不相応にも拘らずキャサリンは、老いて肥満が目立ち、潰瘍性疾患を持つヘンリー8世を疎んじてくる。
 そのうちキャサリンは大胆にも前夫を秘書として宮廷に呼び入れ、情欲に耽るようになる。ヘンリー8世の耳元に妻の不貞の噂が入ってきた。そこで王は調査委員会を開き、動かぬ証拠を見せつけて妻キャサリンを反逆罪で斬首刑に処したのである。奇しくも従姉妹のアンと同じ罪での処刑であった。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 5番目の妻キャサリン・ハワード処刑の翌年、ヘンリー8世は上品な未亡人キャサリン・パーと結婚する。ヘンリーの6人の妻のうち、キャサリン名が3人、アンが2人と非常にややこしい。尤もイングランドではキャサリン、アン、メアリー、エリザベス等はよく使われる名前であろうが...。
 彼女の父はヘンリー7世に仕えたサー・トーマス・パーで、資産家に育った彼女は母の教育熱心からラテン語、ギリシャ語、フランス語に通じ、宮廷内の学者とも互角に張り合う才女振りを披露していた。そして行儀の良さと優雅さは側近達にも理想の女性像と映っていた。
 王妃の座に就いたキャサリンは老境のヘンリー8世に良く仕え、片腕として執務を無難にこなしていた。キャサリン王妃の最大の功績は夫ヘンリー8世を説得し、先に庶子扱いのままになっていた、前妻達の娘メアリーとエリザベスの二人に剥奪されていた王位継承権を復活させたことだろう。更にまだ7歳だった皇太子エドワードの教育にも腐心し、年齢が近かったエリザベスと共に王位に君臨する素地を養った。キャサリンは継子達に優しかったのである。
 1546年、王位継承法が改正された。因みにこの時の王位継承順位はエドワード⇒メアリー⇒エリザベスとなる。

 衰えが隠せなくなったヘンリー8世は元々肥満体質の上、梅毒の影響での脚の腫瘍と酷い頭痛に苦しんで寝込むことが多く、只でさえ横暴なのにヒステリックに激昂することも多かった。しかしキャサリン王妃は夫に献身的に接し、腫瘍の痛みで苦しむ脚をさすったり、癇癪を起こすのを宥めたりしていた。
 しかしあれだけの権勢を誇っていたヘンリー8世は1547年、最後の王妃キャサリン達に看取られて他界した。紆余曲折の末に授かった嫡男エドワードへの王位継承が叶ったのだから、波乱万丈な一生は最後は幸せだったと言えるかも知れない...。
 ヘンリー8世の治世の歴史的意義を日本人であるボク等が評価するのは難しい。またこの時代の英雄の所業を現代の感覚や価値観で判断してはいけないと思う。そもそも身分が違うので、権力者の物事の考え方や王室の内部事情を知る由もない。自分の意に沿わぬ側近達を処刑し、カトリック教からイギリス国教へ宗旨替えした際、カトリック修道院の財産を没収する等の非道ぶりは絶対権力者であったからこそ可能だったわけだ。絶対権力者は決断する時、非情に徹しなければならないのである。$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画
 意外な気もするが、ヘンリー8世は法律を尊重した国王だった。強引な宗教改革を断行したのも、法律を盾に気兼ねなくカトリック信徒を迫害する目的があったと思う。そう考えると不要になった王妃を離縁、処刑したのも国王として妥当な決断だった。為政者は自国を安定して治めなければならない。その為には自分一代だけではなく、自分の意志を継続する世継ぎが必要なのだ。王妃が男子を産めなかったのは全くの悲運だ。だが国王たる者はいつまでも悲観に暮れてはならない。国体を堅守する為に、善後策を練る必要があったのだ。決してヘンリー8世は好色や私欲の為に妻を何度も取り替えたわけではない。

 振り返ってみると、常に緊張状態を強いられたヘンリー8世には知性と優しさを持った母親的な存在の王妃が相応しかったと思う。その観点から言えば、最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンと最後の妻キャサリン・パーが最適任者であった。


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 それではいつもに沿い、『BS映画放送カレンダー』が掲載する放映予定リストの中から、作品の優劣は問わずにあくまでボクの嗜好に沿った映画をピックアップしてみた。従って下記に羅列した作品集は所謂お勧め映画の紹介ではなく、個人的な確認メモという位置付けであることをお断りしておく。
 尚、何処のBSデジタル放送局で放映されているか判り易くする為、作品名の接頭部に各放送局の略語を表記した。解説文は下記の各ホームページからの抜粋である。
         ・(N)=『NHK-BS』
         ・(日)=『BS日テレ』           ・(A)=『BS朝日』
         ・(T)=『BS-TBS』           ・(J)=『BSジャパン』
         ・(E)=『BSイレブン』
         ・(S)=『BSスカパー!』        ・(D)=『Dlife』
 あまり面白くないと感じた映画でも、最低もう一度は観るべきだ。大抵は前回とは違う印象を持つ。それも良い方向にである。何故なら以前あっさり見通した場面から、その映画の機微が伝わってくるからだ。久し振りの映画ならば尚更である。その間に様々な経験を積み、立場や事情も変わってくる。人間的な成長は物事に対する考え方に幅を持つようになるのだ。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 『時代屋の女房』は、そのシュールな展開に「何だろう、これは?」と、頭が混乱してしまった映画だ。しかしここ1年で立続けに観たせいか、何となくその雰囲気が良くなり、叙情感さえ抱くようになる。そしてさほど気に留めていなかった女優が途端に素敵に見えてくるから不思議なものだ。その女優とは夏目雅子である。
 夏目雅子についてはボクが高校生の時に観ていたテレビドラマ「西遊記」の三蔵法師役が強く印象にあるせいか、あまり女性としての魅力を感じなかった。彼女が昭和60年に白血病で亡くなった時も驚きはしたが、特にファンでもなかったので淡々としていた。処が偶然出張で立ち寄った地方営業所の庶務員がボクに同意を求めてきた。彼女は法政大学出身の才媛で、2学年上に女優の星野知子がいて、「よくキャンパス内で見かけた。」と言う。星野知子と夏目雅子は同い年で、彼女も謂わば同世代だから、若死にしたことが余程ショックだったと思う。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 少しだけ『時代屋の女房』の粗筋を述べる。東京の大井町で「時代屋」という骨董屋を営む男の許に夏のある日、野良猫を抱え、銀色の日傘を差した真弓という女が訪れ、そのまま店に居ついてしまう。半年が過ぎ、二人は籍は入れてないものの、夫婦同然に暮らしていた。だが真弓は度々失踪しては数日後に戻ってくることがあった。それでも男は真弓がどういう過去を持っているか、聞こうともしなかった。彼女の何度目かの失踪をする。直感で今度は戻って来ないと思った男は、以前二人で訪れた盛岡の古びた旅館に手掛かりに探し回るが、結局彼女は見つからず、東京へ戻る...。
 かつてボクは8年間盛岡市に住んでいた。映画に出てくる平野旅館は盛岡市本町に実際にある雑貨屋だ。この地はレトロ風の建物が今も残っており、周りの光景からノスタルジーに浸れる。また同行した悪友と別れたのが市内の厨川駅、現在のIGR(いわて銀河鉄道)で、何度か訪れている。
 それが大きな理由かも知れないが、今では『時代屋の女房』の醸し出す何とも言えない雰囲気が心地良い。そして改めて夏目雅子の顔と姿態を眺めてみる。思えばボクは信州上田にいた頃、会社の同僚達と公開したばかりの『鬼龍院花子の生涯』を観に映画館へ足を運び、また意識的に映画を観るようになった、ここ数年来で『二百三高地』『瀬戸内少年野球団』等を観ている。何と美しい女優ではないか! もっと映画に出演して欲しかった。つくづく悔やまれる...。

 ・(N)『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』  6月24日(月) 13:00~15:12

   49歳で大企業のエリートの道を捨てて電車の運転士となった男が、失われかけた家族との絆を取り戻
  し、人生をやり直していく姿を描いたヒューマン・ドラマ。
   仕事に追われる日々の中、母が倒れたとの連絡を受けて故郷の島根へ戻った筒井。同じ頃、同期の親友
  が事故で亡くなったと聞いた彼は、自分の人生を振り返り、今まで一度も自分の夢に挑戦することなく生き
  てきたことに気付く。

 ・(N)『ブーリン家の姉妹』          6月24日(月) 21:00~22:56

   16世紀、イングランド。王妃アラゴンは流産と死産を繰り返し、国王ヘンリー8世は世継ぎとなる男子に恵
  まれないことに苦悩していた。そこに目をつけた新興貴族ブーリン家は長女アンを王の愛人に仕立てようと
  企てる。処がブーリン家の思惑と違い、王が目を止めたのは才気溢れる姉アンではなく、気立ての好い妹メ
  アリーの方だった。
   フィリッパ・グレゴリーの同名小説を『クィーン』のピーター・モーガンが脚色。

 ・(S)『ローラ』                  6月25日(火) 10:00~11:24

   ヌーヴェル・ヴァーグの真珠と謳われるジャック・ドゥミ監督の長編処女作。港町ナントで恋人の帰りを7年
  間待ち続ける踊り子ローラの純真でひたむきな恋の物語。
   幼い息子と暮らすキャバレーのローラは、7年前に姿を消した恋人ミシェルの帰りを待っている。米国人水
  兵、再会した幼馴染みのローラン等彼女に好意を寄せる者は後を絶たないが、彼らが去った後、ローラも
  旅立とうとする...。
   映画音楽の巨匠ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミ監督の初コンビで、『シェルブールの雨傘』『ロシュフォ
  ールの恋人たち』へ続くローラ三部作の第1話目。『男と女』のアヌーク・エーメが本作でも神秘的な美女を
  演じている。            

 ・(N)『三人の名付親』             6月25日(火) 13:00~14:47

   ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演で、銀行強盗を働いた三人の男達が母を亡くした赤ん坊を連れ
  て砂漠地帯で逃走劇を繰り広げる異色ウエスタン。
   リーダー格のボブとメキシコ人のピート、そしてまだ年若いキッドは水もない厳しい状況の中、追手の裏を
  掻いて北へ向かう。枯れた水場に放置された馬車の中で生まれたばかりの子を母親から託された三人は、
  赤ん坊の世話をしながら死の恐怖と直面していく。

 ・(N)『動く標的』                 6月26日(水) 13:00~15:02

   私立探偵のルー・ハーパーはある日、友人の弁護士アルバートの紹介で大富豪サンプソン邸を訪れる。
  サンプソン夫人から行方不明になった夫の捜査を依頼されたハーパーは早速周囲の調査に取り掛かる。
  そこには欲に目の眩んだ犯罪組織が潜んでいると推察。そんな時、サンプソン氏から夫人の許へ一通の
  手紙が届く...。
   ローレン・バコール、他にジャネット・リー、ロバート・ワグナー等の共演陣も豪華。

 ・(N)『宮本武蔵 一乗寺の決斗』      6月27日(木) 13:00~15:09

   吉岡道場の嫡子・清十郎を倒した武蔵が復讐に燃える吉岡一門七十三人と激しく対立するシリーズ第四
  部。
   武蔵は清十郎の弟・伝七郎から果たし状を受け取った。挑戦を受けるべく三十三間堂へ出向き、これを倒
  した武蔵だが、面目を失った吉岡一門は総力を挙げて武蔵への復讐を画策する...。
   泥田の中で繰り広げられる壮絶な戦いは、内田監督の手腕が光る名シーン。

 ・(N)『モロッコ』                  6月28日(金) 13:00~14:33

   熱砂の町モロッコを舞台に外人部隊の兵士と酒場の歌姫の愛を描いた日本初の字幕スーパー作品。
   戦闘を終え、疲れた身体を休ませる為に寄った酒場で美しい歌姫アミーと出会ったトム。お互いに真実の
  愛を恐れつつも強く惹かれ合い恋に落ちるが、大富豪ベシエールがアミーを愛していると知ったトムは、化
  粧鏡に口紅でメッセージを残し、再び戦場へと向かった。
   ドイツ人女優マレーネ・ディートリッヒのハリウッド・デビュー作。

 ・(S)『東海二十八人衆 [東海水滸伝改修版]』  6月28日(金) 17:01~18:23

   清水の次郎長がヤクザ稼業から足を洗う事を決意し、刀を封印、酒を断ち石松に金比羅代参を命じる。無
  事にお参りを済ませ浅草の評判の親分に出向き、香典を預かった石松だが、都鳥の吉兵衛に会いついつ
  い酒を飲んでしまい、預かった百両の香典を吉兵衛に貸してしまうのだった。
   石松を片岡千恵蔵、次郎長を阪東妻三郎、七五郎を市川右太衛門と、時代劇大スターが演じている。伊
  藤大輔と稲垣浩の時代劇映画の巨匠による共同監督作品。

 ・(J)『海底二万哩』                6月28日(金) 20:00~21:52

   ジュール・ヴェルヌの傑作小説を映画化し、アカデミー賞2部門に輝いたSFアドベンチャー!
   19世紀半ば、世界中の海で船の沈没事件が続発。航行中の船が謎の怪物に襲われるらしく、米国政府
  は調査艦を派遣することに。海洋学者アロナクス教授と助手コンセイユが調査団に加わり、銛打ちの名手
  ネッドも怪物を仕止めようと乗艦する。3ヶ月の調査が続いたが怪物は現われず、帰国を決意した夜、調査
  艦は怪物の体当りで沈没してしまう。博士、コンセイユ、ネッドの3人は漂流の末、巨大な潜水艦に辿り着
  くが...。

 ・(N)『アメイジング・グレイス』         6月28日(金) 23:45~25:44

   18世紀のイギリス。裕福な家庭に生まれ育ち、若き政治家となったウィリアム・ウィルバーフォースは奴
  隷貿易が収入源となっている現状とその実態に心を痛め、廃止を訴えることを決意。それを決心させたの
  は、彼の師が奴隷貿易への罪の思いを込めて作詞した賛美歌『アメイジング・グレイス』だった。やがてウィ
  ルバーフォースは賛同する仲間達と共に立ち上がり、国中で演説を重ね署名を集め、次第に世論を動かし
  ていくが...。

 ・(J)『時代屋の女房』               6月29日(土) 19:00~20:47

   東京の大井に「品物ではなく時代を売る。」と称する骨董店“時代屋”がある。店主は安さんと呼ばれる35
  歳で独身の男。ある夏の日、時代屋に野良猫を抱え、銀色の日傘を差した美女がやって来る。真弓という
  名のその女は、そのまま店に居つくことに。
   一緒に暮らし始めても、お互いの過去には一切触れない二人。真弓はふらりと家を出て行くと暫く戻らず、
  周囲の人々が心配していると、やがて何事も無かったように帰ってくるのだったが、三度目の家出は既に6
  日が過ぎていた...。

 ・(A)『マディソン郡の橋』             6月29日(土) 21:01~22:58

   世界中でベストセラーとなった大人の恋愛小説をクリント・イーストウッド、メリル・ストリープという2大スタ
  ーの共演で映画化。
   たった4日間の恋に永遠を見い出した男女の細やかな心情を描く。

 ・(D)『ニューヨークの恋人』            6月30日(日)  0:15~2:25

   キャリアウーマンのケイトはアパートの上階に住む元恋人を気にして暮らしていた。ある日、元恋人の部
  屋で時代錯誤の衣装を身に纏い、「自分は公爵だ。」と名乗る不思議な男レオポルドと出会う。最初は不信
  に思っていたケイトもハンサムで紳士的なレオポルドに次第に惹かれていき、レオポルドもまたチャーミング
  なケイトに惹かれていくのだが...。

 ・(日)『黄色い星の子供たち』           6月30日(日) 14:00~15:52

   1942年に行われた、史上最大のユダヤ人一斉検挙“ヴェル・ディヴ事件”。列車に乗せられた4051人
  の子供たちは一人も戻らなかった―。50年もの間歴史に封印された真実が、遂に明らかとなる。
   ナチス占領下のパリ。街で暮らすユダヤ人は、胸に黄色い星をつけることが義務付けられた。夜明け前の
  パリで奪われた、ささやかな幸せ。昨日まで母に抱かれていた子供たちの運命は―。
   家族と引き裂かれながらも、過酷な運命を懸命に生きた子供たちの真実の物語。

 ・(N)『コント55号と水前寺清子のワン・ツー・パンチ三百六十五歩のマーチ』
                                6月30日(日) 16:00~17:28

   東京で一旗揚げようと母親の残してくれた遺産金を抱えて九州から上京してきた坂下二郎は、駅でスリに
  遭いそうになったところを板前の萩村金一に助けられる。やがて意気投合した二人は、二郎の資金で共同
  経営の小料理屋を開くことに。処が人の好い二郎は相手に足許を見られ店を買い損ない、資金をもっと増
  やそうとした金一は競輪で半分近くの資金を摩ってしまう...。
   名匠・野村芳太郎監督による喜劇演出にも注目。

 ・(E)『殿方ご免遊ばせ』               6月30日(日) 20:03~21:45

   ブリジット・バルドーの魅力溢れるコメディ映画。彼女の代表作にして自身もお気に入りのラブコメディ
  ー。
   フランス首相の一人娘ブリジットは官房長のミシェルに熱を上げ、首尾よく結婚するが、彼の女性関係の
  多さにうんざり。そこで新しい恋人を物色し、国賓のシャルル王子を相手に浮気を決行しようとするもの
  の...。


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