さて、前回の続きです。
「とも」のゴリラの姿勢が、走るために重要な役割を持つ理由についてでしたね。
1..ゴリラの姿勢のおさらい
前傾姿勢を取る場合、足の指でグリップして、軽くヒザを曲げると自然な姿勢になります。
この姿勢を維持するためには、主に四つの筋肉と背骨を使って上体を支えることになります。
(1)背筋
(2)お尻
(3)ハムストリングス
(4)ふくらはぎ
足の指でグリップする時は、指の付け根(ぷょぷよした所)もペタッと踏み込みましょう。
先ほどの四つの筋肉なんですが、この筋肉は身体の後ろ側に付いている筋肉ですよね。
身体の後ろ側に付いている筋肉は、走るために重要な筋肉なんです。
2.筋肉を動的に使う時は筋肉の伸長収縮反射を!
筋肉を動的に使う場合、筋出力の最大化(筋肉のパワーを最大限に発揮)のためには、筋肉の伸長収縮反射が必要です。
ちょっと難しい理論なので簡単に説明しますと…。
人間の筋肉はゴムのような働きをします。
もちろんルフィーほどは伸びません(笑)。
次の画像のように、両手で思いっ切り伸ばしたゴムを、どちらかの手を放したらどうなりますか?
当然、ゴムはパチンと勢いよく縮まりますよね。
この動きが筋肉の伸長収縮反射です。
多くの方が勘違いされていると思いますが、単に筋肉に力を入れればパワーが出る…というものでもありません。
筋肉に力を入れてパワーを出すのは、ウェイトリフティングのように筋肉を静的に使う場合です。
そもそも、サッカーの動作って筋肉を動的に使いますよね。
先ほどもお話したとおり筋肉はゴムのような働きをするので、もしも筋肉に力を入れたとしたら、かえって硬直して動きが悪くなるんです。
つまり、筋肉を動的に動かすほとんどの競技スポーツでは、筋肉の伸長収縮反射が必要なんです。
また筋肉の伸長収縮反射を起こすためには、全身のリラックスも絶対条件です。
要するに、筋肉を動的に使うのか?静的に使うのか?
先ずは、ここを理解しないとダメなんですね。
特に、ジュニアユースとか中学の部活とかになると筋トレを始めることがあります。
そうした時に、身体の後ろ側の筋肉(背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎなど)を、きちんと鍛えてますか?
腕立て伏せ、腹筋、スクワットとかも大切ですが、同時に身体の後ろ側の筋肉も鍛えないと筋肉の伸長収縮反射が起こり難いので、選手の育成にはならないと思います。
3.筋肉の伸長収縮反射の例
ここでは、筋肉の伸長収縮反射について、「走る」という動作を例にして詳しく説明します。
太ももの筋肉の伸長収縮反射を例にとると、
(1)大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)
(2)ハムストリングス(太ももの後ろ側の筋肉)
の動きに注目してください。
次の動画をごらんになると分かりますが、左右どちらの足も前方向に踏み出す時は、空中に放り出すような動きになっています。
この足を放り出す動きが、前に向かうための推進力になります。
筋肉の伸長収縮反射のサイクルは、
地面を蹴る→地面反力を得る→ヒザが曲がる→大腿四頭筋の伸長(ハムストリングスの収縮)→足を前方に踏み出す→大腿四頭筋の収縮(ハムストリングスの伸長)です。
つまり、大腿四頭筋とハムストリングスを交互に伸長収縮という反射運動を起こしながら走るわけなんです。
先ず、地面を蹴った時の筋肉の動きは、
(1)大腿四頭筋→収縮
(2)ハムストリングス→伸長
となります。
この時、地面を蹴った反作用として、地面反力を得ます。
次に、ヒザを曲げたときの筋肉の動きは、
(1)大腿四頭筋→伸長
(2)ハムストリングス→収縮
となります。
最後に、足を前方に踏み出す時、
(1)大腿四頭筋→収縮
(2)ハムストリングス→伸長
となります。
地面を蹴る→地面反力を得る→ヒザが曲がる→大腿四頭筋の伸長(ハムストリングスの収縮)→足を前方に踏み出す→大腿四頭筋の収縮(ハムストリングスの伸長)。
というサイクルによって、前に向かうための推進力を生み出しているんですね。
ところで、ふだん私たちが使うアゴの筋肉っていつも鍛えられていますよね。
だって、みなさん一日三食の食事をするでしょ?
どんなに運動音痴の人でもアゴの筋肉だけは発達しているはずです(笑)。
要するに、良く使う筋肉は発達しますよね。
これと似たようなことなんですが、日常生活を行う上で、大腿四頭筋とハムストリングスは、どちらがよく使われると思いますか?
実は、大腿四頭筋の方なんです。
なぜなら、人間の太ももって、大腿四頭筋を優先して使う傾向があるからです。
ふだんからハムストリングスを使うように意識する人って、ほとんどいません。
試しに、ご自分の太ももを触ってみてください。
大腿四頭筋とハムストリングスでは、どちらが太いですか?
ほとんどの方は大腿四頭筋の方が太いはずです。
そうなると太ももの前後の筋肉がアンバランスに発達するんです。
だから、ハムストリングってケガを起こしやすいんです。
先ほど「大腿四頭筋とハムストリングスを交互に伸長収縮という反射運動を起こしながら走る」とお話しましたよね。
それなのに、大腿四頭筋だけが発達してハムストリングスが未熟であったら、十分な伸長収縮反射は起こりにくく、走るスピードも不十分になります。
速く走るためには、ハムストリングスと大腿四頭筋が同じ程度のパワーを持たないとダメなんです。
大腿四頭筋は日常生活の中で使われやすいから、放っておいても発達します。
でも、ハムストリングは鍛えないと発達しません。
だからこそ、ハムストリングスと大腿四頭筋を均等に発達させるという意味で、ハムストリングを重点的に鍛える必要があるんです。
4.ゴリラの姿勢は走る筋肉を自然に鍛えている
先ほど、ウサイン・ボルトを例にして、筋肉の伸長収縮反射をお話しましたよね。
筋肉の伸長収縮反射を適格に起こすためには、この筋肉をいつも使える状態にしておく必要があります。
だからと言って、子どもに筋トレは厳禁ですよね。
そうすると鍛えることは出来ない…。
でも、そんなことはありません!
実は、筋肉って意識するだけで鍛えられます。
もっと正確に言うと緊張状態にすれば良いだけなんです(タイツ先生の考え)。
その理由を言うと、中年太りの人がお腹を意識すると、お腹を引っ込めようとしますよね(笑)。
これと同じことなんです。
先ほどの四つの筋肉である、
(1)背筋
(2)お尻
(3)ハムストリングス
(4)ふくらはぎ
を意識すれば緊張状態になるので、いつの間にか自然と鍛えられるんです。
(現在の「とも」のハムストリングスとふくらはぎ)
先ほど、日常生活の中では、大腿四頭筋は発達してもハムストリングはほとんど発達しない…とお話ししました。
これって、背筋、お尻、ふくらはぎにも言えることなんです。
つまり、身体の後ろ側の筋肉って日常生活の中ではほとんど発達しないんです。
だからこそ、四つの筋肉(背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎ)を鍛えなくてはならないんです。
当然、サッカーに役立つ筋肉ですからね。
「とも」は小二のころから、サッカーをする時はゴリラの姿勢を維持しています。
だから、疲労がピークになると四つの筋肉がいつも筋肉痛を起こします。
特に、ハムストリングの筋肉痛は六年以上のお付き合いですね(笑)。
筋肉痛を起こすということは筋肉が発達している証拠なんです。
だから、他の同年代の子どもたちと比べると、ハムストリングはもちろん、背筋、お尻、ふくらはぎも発達しています。
ところで、ゴリラの姿勢はハムストリング、背筋、お尻、ふくらはぎの筋肉を鍛えるため…だけじゃあないんですよ。
ドリブルでもキックでも重要なんです。
そこで、次回はドリブルとキックを例にしてお話したいと思います。
お楽しみにね
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