[小話]勇者 | まどろみの庭 R2

まどろみの庭 R2

PSO2の日記とかかいたり。最近心が折れそうな風太さんがお送りいたします。

*妄想ゲームネタ
*アレン勇者ルート バッドエンド






「この世界も、救えたんだ。救ったんだ、俺が」

荒れた荒野、崩れた機械兵。
それらを背後に、黒い髪の青年はひとりごち、虚ろな目を閉じた。


――大切なものは、みんななくなってしまった

――あの世界のラスボスも
――兄以上に思っていた剣の師匠も
――無責任な、創造主も
――世話焼きな幼馴染も

――七界はもう存在しないんだ


――秩序は壊れて、世界は崩壊した
――崩れた世界は際限なく分かれ
――ひとつひとつが世界となって
――その全てが求めている
――たったひとりの訪れを


「救世主、勇者、英雄……」


――俺は、ただ一人残ってしまった
――旧世界の最期の秩序に守られたから


――俺は、勇者だ

――世界の新しい秩序に選ばれた、勇者だ


破壊しきれていなかった機械兵が、巨大な剣で背後から青年を貫く。
しかし青年は眉一つ動かさずにそれを引きぬき、片手に持っていた剣で一閃した。
傷口から血が大量に吹き出すも青年は倒れる気配も見せない。

「俺は全ての世界を救うまで、死ぬことができないんだよ」


こうしている今も、旧世界の断片はひとつの世界になっている。
完全に機能が停止され、崩れ落ちた機械兵を見て、諦めたように続けた。


「死ねないんだ。ずっとひとりのまま」


「俺はもう、ずっと、ひとりぼっちなんだ」