清水エスパルスは再生しなければならない | スルーパスの美学old

清水エスパルスは再生しなければならない

清水エスパルスは再生しなければならない。

それはおこがましいがJのためでもある。

なぜか?



清水エスパルスというチームは、なかなか特殊なチームである。

はじまりは清水FCというチーム。当時のJリーグで唯一母体となるチームを持たなかった。

「サッカーどころ清水にチームを」という意義を中心にして、選手は集まった。

選手もサポーターもプライドを胸に活動していった。


成績は良かった。でも勝ちきれなかった。シルバーコレクターという不名誉な称号も受けた。

唯一のタイトルはナビスコカップだけ。終電の新幹線を気にしながら応援したっけ。


そんな清水エスパルスは、ここ数年低迷していた。いや、まだ「している」のかもしれない。


そうなった理由はいくつか考えられる。


1つは、フロントもサポーターも選手も「清水」という名前にあぐらをかいてしまったから。

元来静岡県は、サッカーが強かった。しかし強かった理由は、もちろん優秀な指導者が育ったこともあるが、全国各地から「静岡で、清水で」という志を胸に若い選手が集まっていたからという面もあった。

それが、Jが生まれたことにより、それぞれの土地でサッカーをする意義を見つけ出し、静岡に、清水に集まらなくなった。

しかしチームもサポーターも、「清水は強い」というプライドだけは忘れることができなかった。

結果、フロントが他の地域からうまく優秀な選手をとることができなかったり、選手が謙虚になることができなかったり、サポーターが弱体化を許せず結果として入場者数の低迷などを引き起こしりた。



「エスパルス」という血にこだわるがあまり、スカウティングをおろそかにしてしまったこともあった。確かに清水のユースは強い。だが、強いユースからプロで通じる選手が輩出されるかどうかは別の話だ。

事実、今のエスパルスには「働き盛り」と言われる70年代後半~80年代前半の選手が極端に少ない。

もともとはたくさんの選手、それもそれぞれの年代代表に選ばれるような選手ばかりいたのだが、ひとり、またひとりと減っていったのだ。その真の理由は誰にもわからない。しかし、血が濃くなりすぎたが故、競争意識の欠如やプロ意識の欠如、高いだけのプライドが蔓延したことは事実だろう。



まだまだ他にも理由はたくさんあるのだが、とにかく清水は低迷してしまった。

次々と失敗する監督人事。

その失敗した監督と軋轢を生み、次々と退団、移籍していく選手。

若い血、新しい血がないため、歪みばかりが残ってしまたチーム。

選手のプライドが高いがゆえに、気に入られなければ浸透しない組織プレー。


とにかく、様々な理由で低迷したのだ。

昨シーズンには、ついに降格候補にまで落ち込んでしまった。


そんな清水が、いま立ち直ろうとしている。

監督には、本来なら予定していなかった人事ではあるが、清水の一時代を築いた長谷川健太が帰ってきた。

監督をサポートする人事には、健太と協力し、ともにがんばっていけるコーチ陣がそろった。

スカウティングも過去の失敗を反省し、県外からも優秀な選手、特に落ちぶれてしまったチームを立て直せるような、各チームをキャプテンとして引っ張ってきた選手を入団させることに成功した。

名前ではなく、意気込みで、そしてプレーで評価し、チャンスを与えるチームに生まれ変わった。


そんなエスパルスは、少しずつだが再生し始めている。

非常に見ていて面白いことに、どの試合も勝つこと以外に「この試合を通じての目標」「」次の試合にむけての改善点」が明確に理解できる。例えば開幕直後の試合では「失点しないこと」を。大分に不甲斐ない敗戦を喫してからは「失点しても焦らず組み立てること」を。守備が安定し、各チームからも警戒されるようになった今は「ダイナミックで素早い攻撃」「意思を持ったバリエーションある攻撃」を。そしてそんなことをしながら、すでに新入団選手の8割がベンチ入りをし、そのほとんどが公式試合に出場している事実。まさにチームは新たな胎動を始めているのだ。

ほんの少しであるが、結果も出ている。ナビスコで名古屋に敗れるまでは9試合連続で無敗であった。こんなことが、去年降格圏をさまよったチームから想像できたであろうか。

今のチームは、一時だけの輝きは発することはできないかもしれない。しかし、毎試合磨くごとに、少しずつ、少しずつ輝きを取り戻し始めている。今年のエスパルスはスタート地点こそ低けれど、後戻りするチームではなくなった。


負けてもいい、とは言いたいけれど言えない。

降格しても応援する、とは言いたいけれど断言できない。


しかしこれだけは断言できる。


今年、サポーターはチームが成長していく喜びを覚えた。

少しずつチームとして完成していく手ごたえ。

弱者に落ちてはじめて知る喜びだ。




これからJのいくつかのチームが低迷し、エスパルスと同じような境遇に置かれるかもしれない。

特に強いチームほど、この喜びを知らないだろう。

そんなチームに、サポーターに、新たな喜びがあることを教えるために・・・

清水エスパルスは、再生しなくてはならない。

市民チームとしての失敗、地元優先ゆえの失敗、プライドが高いがゆえの失敗・・・。すべての失敗を糧として、素晴らしいチームに生まれ変われることができることを、Jリーグに示さなければいけない。


Jリーグがはじまってはや12年。Jリーグの記録には残らない実績を作るため、清水エスパルスは再生しなければならないのだ。