「ヴェロニカの嵐」茅田砂胡


大好きな大好きな茅田さんの新作です。


最初に茅田砂胡さんについてちょっとだけ。

初めて茅田さんの作品を読んだのは大学受験が終わり、読書解禁になったある初春。

それまで受験勉強中に長編に取り掛かるのは愚の骨頂…と我慢していた「デルフィニア戦記」が出会いでした。

貪るように読んだ全18巻…読んでいた時間のなんと幸福だったことか!


茅田さんの作品・シリーズは数あれど、「デルフィニア戦記」はやはり一番思い入れが深いです。

そのうちこのブログでも茅田砂胡作品全紹介、なんかやれたらなぁと思います。


まだ「デルフィニア戦記」を読んだこのないそこの貴方!

読まないと損です。

自信を持って断言できます。

特に架空戦記物が好きな方は必読です。

今は中公文庫にもなっているので(まだ刊行中ですが)、ノベルスだった時のイラストの表紙に手に取りにくい思いをされた方もこの機会にぜひぜひ。



って私どこかからのまわしものみたいですね(笑)



さて。気を取り直して「ヴェロニカの嵐」

クラッシュ・ブレイズの第3作目です。

クラッシュ・ブレイズは「暁の天使たち」シリーズの続編で、さらに「暁の天使たち」は「デルフィニア戦記」「スカーレット・ウィザード」の世界とリンクしたもの(主要登場人物がほとんど一緒。でも話の筋はまったく別物)


こう聞いたら興味惹かれません?無限に広がるこの作品世界は本当に奥が深いです。


ってまた話が脱線してしまいました。



『体験学習におずれた星は思いもよらない無人惑星だった。一体何の目的で誰が自分たちを騙しつれてきたのか。しかし詮索している暇はない。目下の彼らの仕事は生き延びることだ。

一方、体験学習にむかったはずが行方不明となった子供たち両親たちは大騒ぎになった。彼らをなんとしても見つけ出さなければならない。そのために奔走する大人たちの行動。

そして救助された少年たち。その果てに待っていたものは』



うーん、今回はうまくまとめることができませんでした。


物語の内容的には「十五少年漂流記」+アルファっていう感じでしょうか。


思うにストーリーはそんなに重要ではないのです。

今回の「ヴェロニカの嵐」はリィという少年がどんな少年か…(シェラもかな)ということを表現するためにだけあるような気がします。

考えると前2作もそうでした…ダイアナやレティシアがどんな生き物であるか、それに奉仕するように物語はつむがれました。


それを考えると「クラッシュ・ブレイズ」はおそらく、次のシリーズのための序章…なのでしょう。「暁の天使たち」の中で語られた、彼らの敵との戦いの前の束の間の日常。

日常というのはあまりにも非日常ですが、その日常を語ることでリィがルウがケリーがジャスミンが…どんな生き物であるか、を語るためのシリーズであるように思えます。


ますます次のシリーズが楽しみになってきました。

勝手に想像してるだけですけど(苦笑)



さてさて今回のお話についてひとくさ。

…冒頭から出てくるのでネタばれにはならないと思うのですが。


リィが訴えられている…という状況がうまく活かしきれていないような。


もちろん、回想の手法を使って、遭難していた時の状況を語らせる、というのは利にかなっているのですが。

さらにはともに遭難(じゃないんだけど)をした少年少女が証言、という形でリィという少年について述べるのは「リィがどのような生き物か」をあらわす方法としてとても有効だと思うのですが。


ですがですが、勿体ない気がするのです…枚数内に詰め込もうとして、無理してるような窮屈さを感じます。


できれば犯人発見までの道のりとか、リィとチャックのやり取りとか…もっともっと書き込んでもらいたいかったというのは贅沢でしょうか。


今回はそのちょっと展開が無理矢理な点がすごく残念でした。



とはいっても。

基本的にはやっぱり面白いんです。


次の新作がとっても待ち遠しいです。