機内の日本未公開映画『セックステープ』『ミケランジェロプロジェクト』『レッツビーコップス』他 | 映画の中の奇妙なニッポン

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クール・ジャパンの向こう側、フール・ジャパンの世界へようこそ

バンコクからアムステルダム乗り換えでリスボンに向かうKLM機内。往復で10数本の映画を観た。ろくに眠らず、目を血走らせながら。。。

ジョージ・クルーニーが監督し、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマンらが出演した『ミケランジェロ・プロジェクト』The Monuments Men。大戦中、ヒトラードイツ軍に略奪された美術品を取り戻すミッションに従事していた小部隊モニュメンツ・メンの活動を淡々と描いている。映画ファンならそそられそうな役者がそろっているが、事実に基づいているせいか、かったるいショートエピソードの羅列といった印象でしょぼい仕上がり。ハリウッドならではの「素晴らしきアメリカ」ノリにもげんなり。結局、日本でも
20世紀フォックスが劇場公開中止のお知らせ を出しオクラ入りとなった。『ザ・インタビュー』The Interview ハッキング事件で流出したメールの中で、ソニー・ピクチャーズ重役が「ジョージ・クルーニーは批評家の評価ばかり気にしている」と言っていたが、まさにそんな感じの作品。


映画ザ・インタビュー


四十路キャメロン・ディアスが初ヌードを披露している『セックステープ』Sex Tape。これも赤字予想で日本公開中止となった一品。手違いで自分たちのアクロバティックな性交動画がネットにアップされてしまったエロ夫婦のドタバタお色気コメディ。文字通りトホホなお下劣企画で、笑うより先に観てて落ち込んでしまった。ファレリー兄弟 の『メリーに首ったけ』There's Something About Mary みたいな「魅力ある下品」って難しいということがよくわかる作品。


日本では公開延期され、結局2015年2月7日の公開が決まった『ミュータント・タートルズ』Teenage Mutant Ninja Turtles。1990年代につくられた「かぶりもの着ぐるみタートルズ」の愛嬌などまったくない不気味な亀CGと、どこがおもしろいのかよくわからないセリフのかけあい。。。雪山滑落などのアクションシーンも意外に地味だし、日本ではどういう層が劇場に足を運ぶのか、そっちのほうが気になった。


『レッツ・ビー・コップス』Let's Be Cops。白人と黒人、さえない2人の仲良しダメ男が、警官の制服を着てニセポリスマンになりすまし、うさばらしをしながらついでに正義のために戦っちゃうおバカコメディ。機内のヒマツブシに最適なB級感がたまらない。でも日本で公開されることはなさそう。

ジョン・ル・カレ原作の『誰よりも狙われた男』A Most Wanted Man。すごく観たかったのに観逃していた作品だったので、機内の映画メニューにタイトルを見つけたときは喜んだが、日本語字幕もないしイヤホンから聞こえる英語音声もクリアじゃなくて、まいった。ゲイリー・オールドマンがスマイリーを演じた『裏切りのサーカス』Tinker Tailor Soldier Spy には遠く及ばないが、フィリップ・シーモア・ホフマンのしょぼくれつつも野心メラメラといった風情はグー。


『グランド・ブダペスト・ホテル』The Grand Budapest Hotel。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』The Royal Tenenbaums のウェス・アンダーソン監督の最高傑作。粋なリズムで流れるように展開する映画ゆえ、機内アナウンスに鑑賞中断されるとムッとしてしまう。旅情や冒険心をかきたてる描写も多く、海外へのヒコーキ移動のとき見るのにふさわしい作品かも。

あと、思い出すまま列挙すると。。。


シートテレビのちっこい画面でも意外に楽しめた『イントゥ・ザ・ストーム』Into the Storm。ギャレス・エドワーズの2014年版『GODZILLA ゴジラ』Godzilla もメニューに入っていたけど、逆にこっちは大画面でないとダメだと思った。


『ミッション:8ミニッツ』Source Code は『月に囚われた男』Moon の監督(デヴィッド・ボウイの息子だが、名前が出てこないのがいろんな意味で哀しい)の第二作。基本的に脳内ゲームという設定なので、どうしても切迫感に欠けてしまう。過去やり直しタイムワープものなら、やっぱり『バタフライ・エフェクト』The Butterfly Effect みたいなやつが万人ウケするんだろうね。


気にはなっていたけど、きっと『真夜中のサバナ』Midnight in the Garden of Good and Evil や『ミスティック・リバー』 Mystic River みたいな感じだろうと思って観ていなかった『チェンジリング』Changeling。独特のテンポのイーストウッド演出は、飛行機の窮屈な座席で観ても引っぱられる。やっぱり死んでいたという救いのないオチに、ポール・ハギスの『告発のとき』In the Valley of Elah を連想。疲労のたまる長距離移動中、できれば暗い映画は避けたかった。


ブライアン・シンガーが再びメガホンを取った『X-MEN:フューチャー&パスト』X-Men: Days of Future Past はシナリオに無理やり感があるものの、やっぱりおもしろく見れてしまうのがすごい。リュック・ベッソンの『ルーシー』Lucy は期待外れというか、なんじゃらほいな世界。でも悪役が台湾の韓国人マフィアという設定はちょっと気になった。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』Guardians of the Galaxy は、この世界観にすんなり入っていけるかどうかで、おっさん化がどれぐらい進んでいるか判定できそう。木のヒューマノイドとか遺伝子改造された傭兵アライグマとか言われても。。。


『オール・ユー・ニード・イズ・キル』All You Need Is Kill。展開がスピーディーって、寝不足の機内では結構しんどい。体調万全のときに見たら、それなりに盛り上がったのだろう。2014年版『ロボコップ』RoboCop もそこそこ楽しめたが、わざわざリメイク・リブートする意味がわからなかった。リブートといえば『猿の惑星:新世紀(ライジング)』Dawn of the Planet of the Apes。猿の惑星シリーズって、たいした話でもないのに、メニューにあるとついつい見ちゃう。「エイプはエイプを殺さない」というセリフで、「人間なのに人間を殺した」という『アメリカン・バイオレンス』のエド・ケンパーの言葉を思い出した。


リスボンのデパ地下映画館
ポルトガル・リスボン

スペイン系デパート・エルコルテイングレス地下にひっそりある映画館