1994年6月某日(日)

早朝、電話の着信音で目が覚める。

●はい、もしもし

〇あ、キーチさん?

●あぁ、ケンちゃんか。どうした?

〇あのさぁ、トガシがさぁ、事故ったんだって。

●まじで?

〇うん

●どこでよ?

〇トガシん家の近くだって

トガシが事故った。
これは一大事である。
しかし、この時、俺はまだ寝たかった。
ケンゴもそれほど焦った感じではない。
むしろ、お使いを頼まれた小僧の様な語り口調である。

よし。 それならば、詳細は後回し。
今はコアな部分を確かめよう。

●で、死んでねぇんだろ?

〇うん、死んでない。

よし。 俺はまだ眠い。
正直「すぐに病院に駆けつけよう!」という気にはゼンゼンなれない。

●じゃあよ、今、病院行っても家族とか集まって慌しいだろうし、かえって迷惑になっからよ、後で行こうぜ。

〇うん、そうしよう。

「メンドクセェ」と言う理由をそれっぽい理由に変換し、俺はまた深い眠りに就いた。

昼過ぎに起床し、再度、ケンゴから事故の詳細を聞く。

事故発生時刻は同日・早朝。原因は居眠り運転。
夢うつつのまま、カーブに突入し、車は壁に激突横転 。
その際、トガシは窓から車外に放り出され起床。
目を開けたら、車が自分の下半身に落ちてきたらしい。

幸いな事に内臓は無事で、骨盤骨折と打撲の全治2ケ月で済んだとの事。(陰茎が紫色になってたそうな)

ケンゴは「お見舞い、いつ行く?」としきりに俺に尋ねてくる。
しかし、俺は、「別に今にも死にそうってワケじゃねぇし、そのうち行けばイイっぺ?」と思っていたので、曖昧な返事をしておいた。

さて、それはそうと困ったね。
ドラムが入院したんじゃあ、バンドは動けねぇよ・・・
しかも、2週間後には池袋でライブ、7月には恒例の稲毛海岸の野外ライブ、その後も数本ライブ予定アリ。

●おい、ドラムどうするよ?誰かにヘルプで頼むか?

〇トクイチでイイでしょ?

●あぁ、トクイチね。俺はイイけど、本人には聞いたのかよ?

〇まだだけど、やってくれるっしょ。

了解。
俺達は本人の了承も得ずに、勝手にトクイチにドラムをやってもらう事にした。
この頃のケンゴは、「たぶん大丈夫」という感覚のみで動く考慮深くナイ生き物だったので、これでOK。
実際、ほとんどの事が本当に大丈夫になっていたから不思議だ。

ちなみに、勝手にドラム担当に就任させられた「トクイチ」とは?
彼は当時、仁戸名パンクスから発生した「マリリンモンキーズ」というパンクバンドのギターリストであった。
マリリンモンキーズはR&Rベースのパンクロックで、俺の大好きな「ラストチャイルド」にも似た雰囲気の曲でカッコ良かった。

2週間後
俺は、まだトガシのお見舞いに行ってなかった。
ケンゴやヤマダは既に訪問済み。
さすがに、行かねぇとヤベエだろ?と思い、仕事帰りにケンゴと一緒にトガシの見舞いに行く事にした。

ケンゴは、でん六ピーナッツチョコレートをかじりながら、目をギラギラさせ「行くか!?行っちゃうか!!」と張りきっている。 ここ数日間、ケンゴはヒマになると「トガシの見舞い行く?」と言っていた。
見舞いってそんなオモシレェか・・・?

●よう、見舞いに手ぶらで行くのもなんだから、ケーキでも買っていくか?

〇え?大丈夫っしょ?

●大丈夫ってなんだよ? ナンにもいらねぇって事?

〇うん

●え?おまえ、いっつも手ぶらで行ってんの?

〇え、え~と・・・この前はチョコレート持ってった

●それ、おまえが喰うためじゃん

〇あぁ、そうか・・・

今思うに、ケンゴは「お見舞い好き」な野郎なんだと思う。
ヤツは誰かが入院しようもんなら、すぐに駆けつける。
こう書くと人情に厚いヤツと思うかもしれないが、本当は違う。
何が楽しいのか知らないが、目を輝かせワクワクしながら出張って行くのだ。
しかも、お見舞いにと持参する物は、「そんなの持って行っても迷惑じゃん?」と思われるウケ狙いの下らないモノばかり。
それか、自分が食べたいお菓子等だ。
ちなみに、これは↑「いらないの?じゃあ俺が食うよ」なんて言って、自分で全部食べちゃう。

ちなみに、トガシのお見舞いには変なキーホルダーを持って行こうとした事もあるらしい。
呆れた野郎だ。



病室に着くと、トガシのベッドの脇に見知らぬ女性が腰かけていた。
はて?誰だべか?

●よう、ケンちゃん、あれ誰だ?

〇あれ?あれトガシの前の彼女だ・・・

トガシは俺達の突然の訪問に戸惑いの表情を浮かべている。
微妙な空気を察知した俺達は暫く廊下で待つ事にした。

数分後、松葉杖をつきながらトガシがやってきた。
病室に戻り、今後のバンドの事等を相談する。
全ての事にうなずくトガシではあるが、ナゼかちょっとヨソヨソしい。
前の彼女を見られたからか?
いや、それは違うだろう。
やはり、俺が同じバンドのメンバーなのに2週間も見舞いに来なかった為であろう・・・。

他の仲間はみんな頻繁に見舞いに来ていた。
来ていなかったのは俺だけである。
俺は自分を恥じた。

やっぱ、仲間は大切にしねぇといけねぇよな!

2ケ月後
トガシは退院した。
そして、トガシは、俺にこう言いました。



あン時、前の彼女にフェラチオしてもらおうと思ってたのにさ
いきなりあんたら来るんだもんよ!!



アンタの演説聴きたくねぇぜ
ツラ見ただけで吐き気がするぜ
バカが集まりゃ答えは1つ
バカな事しか生まれない
Hey! Brother! Hey! Brother!
C&C is worst1

(RAP/theC&C)


C&C・・・
看板に偽りナシだぜ・・・