新聞にこんな投書が載っていた。
『40代専業主婦です。夫が義母と一緒になって私の悪口を言います。義母とは元々折り合いが良くなかったのですが、夫はかばってくれるどころか、義母の側に立って私を非難して、とても辛いです。夫は浮気もしているようです。』
この主婦はまさに四面楚歌の状態にある。家族に誰も味方がいないのだから。子供がいるのかいないのか分からないが、いたとしてもこの主婦の置かれた状況を劇的に改善するとは思えない。まだ40代なら、子供は母の味方になって敢然と父と祖母に立ち向かうほどの強さは期待できない年齢だろうから。
妻を非難しながら浮気までする夫は最低の奴だが、こうなったのは100%夫が悪いとは言えない。夫婦の不仲は、どちらか一方に全責任があるわけではなく、両方少しずつ責任があるのではないだろうか。妻を悪く言うということはそれだけ浮気相手に気持ちが傾いているという事で、そんなにまでなってしまったのは、妻にも多少の落ち度はあると思う。家事をこなし、子供を育てるだけでは妻の役割は十分とは言えなかったのだ、この夫にとっては。確かに貞操義務を怠ったという点では夫が悪いが、人は何もかも理性で割り切れるわけではない。夫が感情の部分で他の女性を求めたとしたら、妻に夫の気持ちを引き付けておく魅力が足りなかったということだろう。だからと言って母親と一緒になって妻の悪口を言うなんて行為は、到底許されるものじゃないが。
この主婦はこれからどうするのだろうか。新聞に投書して愚痴って、それで終わるのだろうか。それとも、決然と反旗を翻し、離婚して家を出るのだろうか。何となく前者のような気がする。投書には『辛いです』と書いてあったが、『悔しい』とか『怒りを感じる』と言った言葉は見当たらなかった。自分から行動を起こすパワーに欠けている人のような気がする。何より、彼女は専業主婦だ。これから職を探し、自分を食べさせていくぐらいの収入を得るのは簡単なことではない。愛情の無い夫に不満を持ちながら、それでも我慢して、夫の元にい続けるだろう。
こうして見ると専業主婦はつくづくリスキーな立場だと思う。自分の生活が、配偶者の愛情のみに支えられているのだから。愛情が無くなれば、生きて行く術を失う。自分で稼ぐ能力の無い中年の女が離婚するということは、丸裸で荒野に放り出されるようなものだ。そんな辛い目に遭うくらいなら、我慢して夫の仕打ちに耐えた方がましと思うかも知れない。
しかし、それは人間の尊厳を放棄した生き方だと思う。笑いたい時に笑い、怒りたい時に怒り、泣きたい時に泣く。臆することなく自分の考えを述べる。信頼できる人が身近にいる。そんな人間として当たり前のことができないなんて、最も大きな不幸だと思う。たとえ経済的になに不自由の無い生活を送っているとしてもだ。
やはり最低限、自分を食べさせていけるだけの経済力は誰にとっても必要だ。