約6時間半のフライトの後、無事ハワイに到着した。ホノルル空港のイミグレーションで並んでいる時、すぐ前に私たちと似たような年格好のカップルが並んでいた。なんだかひどく雰囲気の悪い二人で、女は仏頂面、男は神経質にとんがっていた。イミグレーションのカウンターの所で小競り合いをしている。倦怠期の夫婦が、長時間の夜間フライトで疲れて、不機嫌になって喧嘩しているように見えた。
そのすぐ後、偶然にもシャトルバスの受付カウンターで、件のカップルに再会した。バスに乗るためにまず名前とホテル名を照会してもらわなければならないのだが、ここでもやはり私たちのすぐ前に彼らは並んでいた。係の女性と何か話している。
係の女性「お式の打ち合わせは13時からと伺っておりますが・・・」
カップル女「はい」
係の女性「お衣裳は一式、今お持ちでいらっしゃいますか?」
カップル女「ティアラをスーツケースに入れて、さっき預けてしまいました」
係の女性「そうですか・・・衣装合わせも兼ねておりますので、お衣裳一式ご用意いただきたいのですが」
カップル女「どうしたらいいんですか」
係の女性「すみませんが、預けられた荷物の中から、お衣裳だけ取り出していただけますか」
カップル女「(仏頂面で)えー・・・他に何か取って来るものありますか?結婚証明書とか?」
係の女性「お衣裳関係のみでけっこうでございます」
するとここで男が、いらいらした様子で口をはさんだ。
カップル男「カバンごと取ってこればいーのっ!」
カップル女「どうしてそういう言い方するの?!」
いきなり場の空気は悪くなり、女は男を睨みつけ、係の女性は困ったように曖昧な笑みを浮かべている。驚いたことにこのカップル、新婚らしい。しかも厳密には挙式前の。ハワイで挙式、ハネムーンという黄金のパターンをとりあえず踏襲してみたようだが、それに似合う甘いムードは皆無であった。結局女が憮然とした顔で、さっき荷物を預けたバスの所まで一人で戻って行った。普通こういう場合、男が手伝わないか?しかも女の手荷物を預かる素振りも見せない。なんだか酷薄そうな男だった。女も決して気立てが良いとは言えない。このカップル、大丈夫か。
ホテル行きのシャトルバスに乗り込むと、またしても例のカップルが近くの席だった。バスの中でも二人の空気は最悪で、一言も言葉を交わさないばかりか、目を合わそうともしない。これから結婚式を挙げるんじゃないのか、この二人。夫も彼らのことが気になったらしく、「一言も喋らなかったね、あの二人」と言っていた。
詳しい事情は分からないが、あの夫婦はひょっとしてダメなんじゃないかと思った。仲が良すぎてケンカばかりとか、基本的には仲が良いが時々衝突するとか、そんな雰囲気じゃなかったのだ。もう初めっからソリが合わないというか、とにかくかみ合わない夫婦だった。何より夫の方が、妻に対する気遣いが無いのが気になった。妻の荷物を一回でも持ってやろうか?とさえ言わなかったのだ。自分は手ぶらなのに。
あの二人はあれからどうなっただろう。度々私たちの話題に上ったが、果たして無事式を挙げられたのだろうか?