数日前、仕事帰りの地下鉄の中での出来事。
最高気温5℃というこの地方にしては極寒の日で、当然車内の乗客の服装は真冬仕様だった。この私もダウンジャケットにコーデュロイのパンツ、ショートブーツという重装備で、更に風邪予防にマスクをかけていた。

とある駅で若い女性が乗り込んで来て、私の真向かいに座った。私はその女性の着ているものを、見るともなしに見た。

厚手のダッフルコートにマフラーと手袋まで着けているのに、脚は何故か素足で夏物のつっかけを履いていた。その上半身と下半身のアンバランスさに、思わず目が釘付けになった。

女性は無表情で座っている。何か深い事情を感じ取れる風情でもない。ただ見事にちぐはぐなファッションで、黙って電車に揺られている。

他の乗客が上から下まで防寒第一の格好であるのに対し、彼女の服装は異様と言っても良かった。きっと私以外の人も、いぶかしく思っていたことだろう。
やがてその女性は降りて行った。夏物のつっかけの謎は、謎のままとなった。

彼女がああいう格好をしていた訳は、蓋を開けてみれば大したことではないのかも知れない。しかし妙に気になっている…。