この間、とても素敵な女性に会った。


 仕事帰りにたまたま担当になったタクシーの運転手さんなのだが。偶然だが彼女はちょっと前、変な男に睨まれて困っていた時に乗せてくれた人だった。50年配の、水前寺清子か宝塚の男役のようなイメージのマニッシュな女性で、声も低く喋り方もさばさばしている。あまり「女性」を感じさせない人だった。


 今日は寒いですねぇというようなんでもない話から、運転手さんの前職の話になり、次第にプライベートな話題になった。彼女はタクシーの運転手になる前は、観光土産の会社の営業を10年ほどやっていたという。更にその営業になる前、22歳の頃から17年ほどタクシーに乗っていたそうだ。


結局古巣に帰って来ちゃったんですよ。向いてるんでしょうね、この仕事が。営業の仕事も面白かったけど、不景気でね。先が見えなくなったもんだから。タクシーなら食いっぱぐれないしね。他にも違う仕事を少ししたけど、一番長いのがタクシーかな。気楽なんですよ。お客さんと色んな話もできるし。


 彼女はさらりと言う。どうやらずっと一人で生きて来た人らしい。


あたしは結婚もしてないし子供もいないから、子育ての苦労は分かんないけど・・・でも一人で生きる苦労も楽しさも知ってますよ。一人だと自分の羽で行きたいところに自由に行けるんです。・・・羽が折れたこともありましたけど。

 

 笑いながらそう言った。


 「羽が折れたこともありましたけど」何気ない一言だが心に響いた。彼女はずっと一人でやって来て、普通に結婚して子育てしている女性よりも、波乱に富んだ人生を送ってきたのだろう。そうして50近くになって、あんな爽やかな笑顔ができる人になったのだから、おそらく今までの人生、背筋をシャンと伸ばして凛として過ごして来たのだと思う。たとえ何があったとしても、自分の芯がブレない人は素敵だ。


 当たり前だが、人の生き方は一つではない。幸せも不幸せも、結局はその人の姿勢次第、裁量次第・・・。こんな単純なことに、彼女と話をして改めて気づいた。家庭に収まって主婦やってると、どうしても世界が狭くなる。もっと広い視野を待たなくちゃなぁ。