昨日「ニュースZERO」の、貧困をテーマにした特集の中で「食パンだけを食べて生きる派遣OL」が取り上げられていた。
福岡在住のその女性は35歳、事務職の派遣をやって生活している。家賃42000円のアパートで一人暮らしをしているのだが、手取りが11万ちょっとなので生活が苦しく、食パンしか食べられないほど貧乏なのだと言う。その人の家には洗濯機もテレビもなかった。一斤80円の特売食パンをまとめ買いし、冷蔵庫に保存している。食事時にはそのパンを1枚ずつ出し、冷たいままのを何もつけずにかじるのだ。飲み物ももちろんない。それでも一日二食しか食べられないと言う。
彼女の一ヶ月の食費は6000円を切る。本当に食パンしか食べていないようだ。そんな食生活だからガリガリに痩せていて、顔色も悪い。35歳という実年齢よりも老けて見える。顔はボカシが入っていたので分からなかったが、多分化粧もしていないんじゃないだろうか。あばら骨が浮き出た体で朝早くから、3つ先のバス停まで30分も歩く。バス代を50円浮かせるためで、この50円が彼女にとっては貴重なのだ。
彼女は大学を出て、大手企業に正社員として就職した。しかし上司のボスハラが原因でうつ病になり、退職を余儀なくされてしまった。仕方なく派遣に登録して、不安定な派遣事務職に身を落としたのだという。収入は正社員時代の半分以下となった。派遣先の企業の都合で契約途中でも首を切られる。正社員たちからは「所詮ハケン」という目で見られ、冷遇される。面接を受けて、ほぼ決まりかけた企業からドタキャンされる・・・派遣社員となってからの彼女の人生は不遇続きだった。そんな生活を何年も続けるうち、食パンしか食べられないような極貧状態になった。
彼女の境遇には同情を禁じえないが、一つ疑問に思ったことがある。手取り11万、家賃4万ちょっとで、食パンしか食べられないほど余裕がないって、あり得るのだろうかってことだ。我が家の食費は一ヶ月3万である。(外食費は除く・・・でもうちはほとんど外食しない)これで朝昼晩3食まかなっている。夫の弁当ももちろん込みだ。しかしたまには牛肉も食べるし、そんなにつましくやっているわけでもない。一人暮らしだとムダが多くなるから、単純に半分にはできないだろうが、それでも2万を少し切るぐらいには押さえられるような気がする。
家賃が約4万、食費が2万、光熱水費が2万ぐらいとして・・・ざっと8万だ。まだ3万残っている。貯金はできないにせよ、そんなに極貧というわけでもない。しかし現実に、彼女は洗濯機も持てず、まともな食事も取れないほど貧乏している。一体何故なんだろう?
よく、節約上手な主婦がワイドショーに出て来るが、彼女たちは夫の手取りが20万そこそこで、家族4人が食べている。食費が一ヶ月2万とか、光熱水費が全部合わせても1万いかないとか、ありえないような節約術を駆使して、せっせと貯金に励んでいる。主婦向けの雑誌にも、「手取り20万で年100万貯める方法」とかいった特集がほぼ毎月組まれていて、料理や買い物の裏技がこれでもかと紹介されている。同じ貧乏なのに節約主婦たちはむしろ生き生きと節約に励み、貯金をし、件のOLは食パンを食べてギリギリの状態で生きている。両者の違いは一体何なのか。
一つ思ったのは、食パンOLはもしかしたら生活費以外のところで、かなりお金を使っているのではないかということだ。洗濯機もないアパートだったがなぜかパソコンはあり、しょっちゅうネットをやっているような感じだった。このネット代がけっこうな額に上るのかも知れない。我が家はパソコンの接続料はマンションの管理費に含まれていて、24時間つなぎ放題で定額である。これは分譲の集合住宅だからできることで、賃貸の場合は個人が個別に契約しているだろうからやや高くつくだろう。私はよく知らないが、一ヶ月1万以上はかかっているかも知れない。
彼女はネットで職探しをしていた。しかし職探しのためだけにわざわざパソコンを買ったとは考えにくい。無料の求人情報誌などいくらでもあるんだし。そうするとやっぱり、普段からネットサーフィンやブログなどでパソコンに親しんでいると考える方が自然だ。おそらく、彼女の唯一(?)の趣味なのだろう。ネットはお金もかからず、楽しいから気持ちは分かる。しかし・・・もしパソコンの接続料が生活を圧迫しているのだとしたら、少しネットから距離を置いた方がいいような気がする。
ほんの10年前までは、パソコンなどなくても普通に生活できた。今だってできないことはないはずだ。ネットに費やすお金を食費にかければ、少なくとも食パンばかり食べる生活からは、脱出できる。もし彼女がそれを敢えてやらずにいるのだとしたら・・・完璧な「ネット依存症」だと思う。
ネットは確かに楽しいが、ネットが与えてくれるものは案外少ない。全てはコンピュータのスクリーン上で起こっていることで、現実ではないのだ。そこをはっきり認識しないとどんどん依存症になり、現実的な生活感覚が薄れて行くと思う。
貧困ゆえにネットに走り、そのネットが原因でますます貧困に拍車がかかっている・・・食パンしか食べられなくてもパソコンが維持できて、ネットもできるという社会の貧困問題は、一筋縄では行かないほどいびつで根が深いと思う。