女は案外、いくつになってもオンナでいたいものだ。なら男も、いくつになってもオトコでいたいものなのだろうか。


 行きつけの近所のカフェバー、「ベル」での出来事。


 その日私は、一人で飲んでいた。夫の帰りが遅くなるのが分かっていたので、ちょっと遊びに行ってみたのだ。ピーナッツをつまみながらビールを飲みつつ、ママと談笑していると、やはり近所に住む常連、木俣さん(61)が入って来た。


 木俣さんとは以前何度か一緒になったことがある。定年退職して、毎日家庭菜園に精を出す、気のいいおじさんだ。飲むとガラが悪くなってからみ出す人もいるが、この木俣さんはそんなことはないので、私はけっこう好きだった。


 カウンター席の隣同士になって、他愛も無い話をしながら飲む。木俣さんがこの間行った旅行の話とか、菜園で取れたアスパラの話とか・・・ママも加わって、和やかに時が流れて行った。


 しかし木俣さんがビールの中ビンを空け、2杯目のコップ酒にさしかかった頃から、様子がおかしくなってきた。「あ~女が欲しい!」と叫び出し、昔の「武勇伝」を語り始めたのだ。40代の男盛りの頃には随分遊んだとか、女も大分買ったとか・・・その内話はとんでもない方向に流れ始めた。


 なんと、タイへ買春ツアーに行った体験を、嬉々として語り始めたのだ。さすがにこれはシャレにならない。若くて可愛い子がいっぱいいただの、相場より大分高いお金を渡しただの、罪悪感のかけらもなく、単純に観光のついでの、楽しい思い出として喋り続けている。その無神経さに私は辟易した。


 「ストップ!その手の話は、おおっぴらに話すもんじゃないですよ。すみませんけど、かなり引きました。」私がこう言うと、木俣さんは困惑した様子だったが、私にもママにも顰蹙を買ったのが分かったのか、話題を変えた。


 恐らく木俣氏は、木俣氏にとっての「若い女」である私とママの関心を引きたかったのだろう。「俺だって昔はブイブイ言わせてたんだぜい」と、アピールしたかったのかも知れない。しかし、アピールの仕方を完全に間違えている。(苦笑)


 61歳ながら、まだまだオトコの部分が残っているのだろう。頭はすっかり禿げ上がり、老眼鏡をかけていても、心は現役のオトコなのだ。体は言うこと聞かないかも知れないが・・・。木俣氏の言動はいかにもイタイが、同時にちょっと哀れでもある。


 男も女も、「もうおじさん(おばさん)だよ~。全然ダメ」なんて自分から言ってるうちは、まだまだ余裕なのだ。老境に差し掛かり、「ホントにもう終わりかも」と思い始めたら、なりふり構わなくなるのだ、きっと。


 年を取るって辛いなぁ。