花ちゃんちのごはん⑪

 

 

 

「好きなこと?」

これから、自分の好きなことをやってみたらどうかと、おじいちゃんに言われたママが、動きを止めた。

 

今まで、結婚したばかりの時はパパのこと第一

花ちゃんが生まれてからは、花ちゃんとパパのこと

パートで働いていたのも、花ちゃんの習い事の月謝を稼ぐためとささやかな自分のお小遣いのため

自分のことを考えること余裕がなかったことに、ママは気がついた。

 

「お義父さん、突然言われても、好きなことなんて思い浮かばないです・・・」

やっとのこと、ママの口から出た言葉だった。

 

「これから、ゆっくり見つけていけばいいよ。」

パパが、助け舟を出した。

 

それを見ていた花ちゃんが、ママに聞いた。

「ねえママ、

 ママが一番好きな家事って何?」

 

「花ちゃん、それはお料理だけど・・・」

 

それを聞いた花ちゃんは、大きな目をくりっとさせた。

「花、ママのご飯をたくさんの人に食べてほしいの。

 こんなおいしいごはん作れるんだもの。

 花んちだけで食べてるのは、もったいないって思うの。

 

 何十年もおうちごはんを作ってくれてるママは、立派なシェフじゃないかな?」

 

大きな目をもう一度くりっと輝かせて、花ちゃんは、言葉を続けた。

 

「ママのご飯も、おうちから卒業

 お店やってみるのも、ありじゃない?」

 

 

                             《おわり》