花ちゃんちのごはん⑧
「花ちゃん、今日ママお仕事で帰りが遅くなっちゃうから、夜ご飯作ってくれない?」
朝出かける前に、ママが言った。
「ママずるい。こんなギリギリに言われたら、嫌って言えないよー。
仕方ないなー。」
花ちゃんが、スラックススタイルの新しい制服に足を入れながら、答えた。
「花ちゃん、よろしくね。行ってきま~す。」
そう言って、ママは出かけて行った。
家では、手際のあまりよくないと思ってたママが、パート先では頼りにされているらしいと、花ちゃんが知ったのは、つい最近のこと。
さらに、最近家で何か必死で勉強しているな、と思っていたら、今日は昇格試験とかで朝早く出かけて行った。
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「ただいま~、
花ちゃん、ありがとうね。助かったわ。」
そう言いながら、ちょっと疲れた笑顔でママが帰ってきた。
「ご飯できてるよ
今日は、ママのすごさがよくわかった。
とりのから揚げだったら簡単って思って作ってみたんだけど、ママみたいに美味しく
できないの。
本当にママって、天才💗」
そう花ちゃんが言うと、ママは照れ臭そうに冷蔵庫からゴソゴソとボトルを出してきた。
「花ちゃんが褒めてくれて、とっても嬉しいんだけど、から揚げの下味はこれが
一番おいしいと思うのよ」
ボトルには、《塩キャベツのたれ》と書いてあった。
《つづく》