広島で30年続いた「爐談亭」を受け継いだスピリッツの松本社長、「東京に持ってくるとしたら、やはり神楽坂かな?」ということで、インスパイアできる店として「伊勢藤」と「かも蔵」に。

「伊勢藤」は日本酒の通の間では、伝説的な店。古民家そのままを活かした造りで、引き戸を開けると、緊張ただよう凛とした空気が。いろりの向こうにはご主人が鎮座。

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座敷席に座る。まわりの客も静かに日本酒を傾けている。

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店員さんが「熱燗でよろしいでしょうか?」と一言。「とりあえずビールを」なんて、場違い。小鉢が3つセットで付いてくる。

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この店では、大声で話したり笑ったりするのは、ご法度。我々も、「もう少し小さな声でお願いします」とご主人からお叱りを受けました。日本人が忘れかけている謙譲の美徳、控えめの文化というものを思い出させてくれる。

そして、「お酒はぬるめの燗がいい…」。松本さん、「爐談亭」と相通じるポリシーを感じたようだ。そう、日本酒復活とか、そういう次元ではない。日本人が背骨を伸ばしていた時代の文化そのもののルネサンスを!

神楽坂通りと大久保通りが交差する辺りになんとも造りの悪い飲食ビルがある。プロなら、絶対手を出さない物件
。居抜きだからか、あえてそんなビルの2階に店を出したのが「かも蔵」。サンズイの醸に蔵と書いて、「かもぞう」。「魚金」金原兄弟のてしごとやグループの「野崎酒店」から暖簾分けした店だよな、確か。全国の酒蔵さんが押しかける日本酒のメッカだ。

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ソムリエのいるワインバーの日本酒版だと思えばいい。好みの味を言えば、利き酒師が、一升瓶セラーから、3本ほどを客席に持ってきて、説明してくれる。もちろん、テイスティングもできる。

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「かも蔵を知らずして、日本酒を語ることなかれ!」。この店は、日本酒復活のキー店になると、私は評価している。若い客層が多いからだ。