“ネオ大衆酒場”市場になだれ込む大手チェーン

ついにワタミが新業態の"均一低価格"居酒屋の概要を明らかにするなど、大手チェーンの大衆酒場市場への参入が加速している。その激戦ぶりを追ってみた。


ワタミが6月出店で進出を予定している新業態は低価格居酒屋「仰天酒場和っしょい(わっしょい)」。いま血まなこになって物件を探している。客単価は1800円を想定し、同社の居酒屋業態の中でもっとも低い価格帯だ。250円均一のメニューが全体の約7割で、残りは500円のメニュー。「ちょっと1時間ぐらい立ち寄って軽く飲み食いしたい」というニーズに対応する、いわば“ファスト居酒屋”である。当然、原価率は高くなることから、セミセルフ方式を導入することによって人件費比率を抑えることになる。平均店舗規模は25~30坪とワタミとしては最も小型店舗となるようだ。女性客を取り込むために“プチおしゃれ”な内装になるようで、駅前エリアで常連客を相手にしてきた個店居酒屋や大衆酒場にとっては大きな脅威になるに違いない。

このワタミの参入によって、大手チェーン間の“均一低価格”居酒屋競争はますます激化してくるだろう。“280円じゃんぼ焼鳥”でこのマーケットをリードしてきたのは「鳥貴族」だが、いま物凄い勢いで出店を続けている。“270円均一”と描いた大きな看板を街のあちこちで見かける三光マーケティングフーズは、「金の蔵Jr.」をメインに既存店の半数以上を均一業態に変えた。 モンテローザも、既存店の100店舗以上をを300円前後の均一居酒屋業態にリニューアル。ほとんどの店は看板も内装もそのままだという。さらにコロワイドが「うまいもん酒場 えこひいき」、レインズインターナショナルが「ぶっちぎり酒場」で参入し、出店攻勢をかけている。

一方、均一居酒屋業態ではないが、新しいタイプの低価格居酒屋、いわゆる“ネオ大衆酒場”ジャンルに新業態を投入し、店舗を増やしているチェーン店も多い。天狗の「テング酒場」、養老乃瀧の「一軒め酒場」などだ。つぼ八も新業態「ホルモンの美味しい焼肉 伊藤課長」を6月にオープンする。OL・サラリーマン層をターゲットとし、良質な肉とジャズを調和した空間を提供するという。かなり早くから大衆酒場ジャンルに参入しヒットを続けているサザビーリーググループ・アイビーの「手前みそ」、「串かつでんがんな」に続き「鉄板酒場 鐵一」を投入したフォーシーズなども、今後さらに勢力うぃ拡大していくだろう。こうした大手居酒屋チェーン、中堅チェーン系企業の“逆襲”がどこまで“個店系”の地盤を切り崩していくか注目されるが、“ネオ大衆酒場”マーケットが拡大されることだけは間違いない。


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