2010年は「外食氷河期」突入?

今年もあと2ヶ月を切った。例年、この季節になると、私のところに「2010年飲食トレンドを予測してほしい」というマスコミからの依頼が来る。しかし、今年は少ない。テレビも雑誌も、マスコミにはわかったようにタレントや俄かアナリストが出てきて、安易に「これがトレンドだ!」と吹きまくっているからだろうか?



ちょうど一年前、私はこのコラム に、2009年トレンドを予測するにあたって、こんな“つぶやき”をしている。「来年は外食暗黒時代だな」。そして、以下のようにブツブツとつぶやいている。
・大波乱期に入る。2010年まで破綻、撤退、閉鎖、リストラなどが続く。
・首都圏では、オーバーストア状態にあり、5割の店舗が姿を消すかもしれない。
・3割の勝ち組が残り、負け組の受け皿となる。残りの2割は現状維持。
・大手チェーンも再編化。M&Aによってメガグループに集約される。
・不動産系、ファンド系、業態開発・運営力のスキルがない新規参入、新興企業が危ない。
・チェーンビジネスのモデルだけで多店舗した会社が危ない。
・“飲食の本来の価値観”が問われる。
・客単価でいえば、3,000円以下と10,000円以上が生き残る。
・しかし、金融危機が進めば、10,000円以上もパイが小さくなる。
・チェーン店の生き残る道は、マイクロ化、専門化。
・システムの時代から“職人”の時代へ。飲食の本質はアナログ。
・敗戦後の焼跡闇市時代に似ている。横丁が流行る。「食べることは生きること」。

「これらは、日頃取材活動や自らプロデュースの仕事を通して、感じたこと、耳にしたこと、である」と書いている。そして一年経った今、大きな流れの予測は、やや“狼少年的”だったが、さほど間違っていなかったと思う。大手チェーンについては、ワタミの渡邊氏は外食の一線から離れ、「すかいらーく」は消滅した。M&Aやファンド主導で再編された外食企業は中身のない“巨大なハリボテ”と化している。ミシュランが煽った高級店は、“上客離れ”という自己矛盾に陥っている。代わって台頭してきたのが、トップにカリスマを頂く「餃子の王将」に代表される“アナログ”的なチェーン店やマイクロ店、専門店。「280円」「270円」という“均一低価格路線”を打ち出したポスト・居酒屋、ニューチェーンである。そして、横丁や小路はトレンドに表に飛び出してきた。

では、2010年は外食マーケットにとって、どんな年になるのだろうか?
浮かんでくる言葉は、残念ながら、「氷河期の入り口かもしれない」である。それは、勝間和代さんが副総理の菅直人氏に提言したように、日本のマクロ経済が“デフレ脱却”をしない限り、ひたひたと押し寄せてくるに違いない。“ラチェット効果”という現象さえ議論され始めた。ラチェットとは“歯止め”の意味。景気が悪くなっても、人々はなかなか生活レベルを下げられないから、消費低下には一定の“歯止め”がかかるというのが、“ラチェット効果”だ。しかし、最近の消費の落ち込みぶりは、この“ラチェット効果”が効かなくなったことを証明しているのではないかというのだ。

さらに、景気が戻っても、もう元の消費行動はとらないという“逆ラチェット効果”さえ心配されるとの専門家の見方もある。それが事実だとすれば、消費の大きな部分を占める外食については大きな影響が出る。ただでさえ、いまや外食の平均客単価は3000円を割り、2000円前半に落ち込んできているという実感がある。単価の下落はばかりか、外食頻度が極端に減ってくることも予測されるのだ。とはいえ、外食が消えることはない。「積極的に外食をする」というコア層が消滅することはない。問題は「選ばれる店になるかどうか」である。「食べログ」などの“口コミメディア”の発展によって、コア層の“店舗選考基準”はますます厳しくなるだろう。そこで、“選ばれる店”とは、“飲食の本来の価値観”を問い、進化し続ける店ではないだろうか。そろそろ“低価格戦争”という血で血を洗う“レッドオーシャン戦略”は終わりにして、“価値改革戦争”という“ブルーオーシャン戦略”に舵を切りかえるべきではないか。

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