低価格志向で復権する「立ち飲み業態」

外食マーケットは、ますます低価格志向が強まっているが、そうした中で「立ち飲み業態」に再び活気が戻ってきた。一時のピークほどではないが、新しいタイプの業態や新規参入も増えている。



10月10日、新宿三丁目、立ち飲みのブームの火付けともなった「日本再生酒場」のほぼ正面に、同じくい志井グループの新業態「新宿三丁目 ホルモン横丁」 がオープンした。「もつやき処 日本再生酒場その弐」「ハラミ屋burrari」「まぐろ屋阪庄」「ホルモン豚や三八」の4店舗が並ぶが、すべて立ち飲み業態である。「日本再生酒場その弐」のほかは新業態で、これまでにない新しいスタイルの立ち飲みとなっている。「ハラミ屋burrari」ではハラミ尽くしの料理とワインの洋風バル、「まぐろ屋阪庄」では珍しい海鮮ホルモンを売る。「ホルモン豚や三八」では焼き網を仕込んだロングカウンターが特徴で、客自らがホルモンを焼く“ち焼きスタイル”をメイン・コンテンツとしている。立ち飲みブームをつくったい志井グループの集大成であり、“立ち飲み第二ステージ”発信基地としても注目される。

立ち飲みといえば恵比寿エリアだが、ここでも西口ロータリー側すぐの好立地にいま話題の“アウトレットワイン”を売りにした「恵比寿ワイン酒場」がオープンした。スタジオナガレ による「渋谷ワイン酒場」に次ぐ「○○ワイン酒場」シリーズ2号店で、わずか8坪の店だが、「日商20万円、一日100人以上の集客がある。目標は月商800万円、月坪100万円です」(横井貴広スタジオナガレ社長)と鼻息が荒い。アウトレットの“激安ワイン”だけでなく、「壷漬け」という斬新なメニューを打ち出したことも奏功しているようだ。今後、「○○ワイン酒場」は居抜き物件サイトを運営する「ぶけなび」(勝山泰樹社長)とFCライセンス販売を手がける「ドリームシェア」(金成樹社長)がライセンス展開を行なう。そのアンテナショップとして、近く「神楽坂ワイン酒場」(ぶけなび)、「人形町ワイン酒場」(ドリームシェア)がオープンする。

新規参入では、全国で100円ショップ「meets」「シルク」を展開する株式会社ワッツ (大阪市、平岡史夫社長)は「ワッツ企画」を設立して外食に参入、9月7日、赤坂に煮込み、焼きとんをメインとした立ち飲み「ほろよい党」をオープンした。「100円もつ煮」が売りで、サラリーマンの味方になるような格安立ち飲み店として「ほろよい党」を展開していく計画だ。“新業態立ち飲み”も続々と登場している。「ホルモン豚や三八」同様に“立ち焼き”ホルモンスタイルでデビューしてきたのは新橋の「闇市ジョニー」、さらにオープン後、神田高架下ですでに話題店となっている「六花界」がある。どちらも極狭小店舗ながら七輪を置く本格スタイルで、素材への自信は高く、立ち飲みスタイルにホルモン人気をうまく反映させている。門前仲町の「松橋商店」は新鮮な刺身を看板とした“魚系”業態、上野の「カドクラ」は鉄板焼きを前面に打ち出した。こうした新業態勢は、これまでの利便性や低価格の立ち飲み業態にとどまらず、マーケットトレンドを捉えた立ち位置を持つことを特徴としている。

ワイン系の立ち飲み業態が広がりも注目だ。先日、銀座にオープンした「ゑびや」は80種類近い低価格ワインと23センチのピザを500円で提供するサービス料・チャージなしのイタリアンバルスタイル。新橋の「NO・MI・NO市」もちょい飲みワインが楽しめる。目黒の「立飲みビストロshin2」はスパークリングワインと鮮魚・野菜をコンセプトとして目黒名物となっている。女性一人でも「さくっと」過ごせるワインは立ち飲み新ステージのキーコンテンツなのかもしれない。先日、渋谷にオープンした「FUJIYA HONTEN DINING BAR」はアルコール・フードのメニューの充実と豊富さで、着席型のダイニング居酒屋をはるかに超える完成度の高さ。この店は立ち飲み業態の老舗であり、古典的な大衆酒場業態として名高い「富士屋本店」の姉妹店で3号店目となる。酒屋の4代目が酒屋をリニューアルしてオープンさせた中野の「鎌倉酒場」は、こだわりの焼酎の甕が壁際に並ぶ“新・角打ち”のイメージを打ち出している。低価格業態が広がるなか、その典型である立ち飲み業態が再び活性化していると言えるが、そこには業態の進化を武器とした新勢力の台頭が垣間見える。

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