拝啓、『週刊ダイヤモンド』様。

拝啓、『週刊ダイヤモンド』様。

『週刊ダイヤモンド』が新年第一弾の特大号で「食品・外食大激変!」という特集を組んでいる。「M&A」一覧や「外食決算ランキングの明暗」など注目すべき記事も多い。しかし、この特集では、外食の最もキモとなる“中小元気企業”たちの分析が抜けている。


この『週刊ダイヤモンド』の特集を、ダイヤモンドダイニングの松村社長やエムグラントフードサービスの井戸社長は、歯がゆい思いをしながら熟読しているに違いない。ダイヤモンドダイニングは「上場外食今期決算ベストランキング」の表で4位にランクインしたものの、記事では一行も触れられていない。“ポストファミレス”で快進撃を続けるエムグラントにいたっては、社名さえ出てこない。一般の経済ジャーナリズムの世界においては、「外食=大手チェーン」「注目経営者=大手チェーン経営者」という図式がいまだにまかり通っている。この特集では、「中小外食企業=厳しい」と総括され、際コーポレーションの中島社長が昨年開催した「外食決起集会」が紹介されているだけだ。『ダイヤモンド』の記者たちは、未上場のアーリーチェーンたちの実態が見えないのか、それとも見ようとしていないのだろう。

編集後記に新井さんという、この特集を担当した女性記者がこう書いている。「…そんな、あり過ぎる食品のデータに溺れかかる一方、なさ過ぎる外食のデータでは干しあがりそうに…。しかし、現在72万社ほどある外食店舗の約75%は調査の難しい個人経営店。データは取りにくくて当然です。身近なチェーン店も『外食』のほんの一部に過ぎないのですね。食の奥深さをしみじみ感じた特集でした」。たしかに中小外食企業の公的なデータは少ない。しかし、個人経営店を調べろとは言わないが、売上高5億~30億円のアーリーチェーン企業を取材してほしい。そこは、この大不況関係なく“元気企業”の宝の山だ。

もう伸びきってしまったゴムのような大手チェーンを追いかけても、外食業界の実態は見えてこない。不況をフォローする低価格路線でたまたま元気を取り戻したファストフードやファンドの資本をバックにM&Aを繰り返して売上高を嵩上げしている居酒屋チェーンを元気だと言われてもピンとこない。挙句の果てに、この特集の結論として、「生き残る外食」のキーワードは「低価格」「ファストフード」「都市部出店」「最低でも50億円以上の売上高規模」を挙げている。これでは外食業界の先行きに夢など持てない。

今年から外食産業記者会の仲間入りをした一人として、私は言いたい。アーリーチェーン企業のデータを集め、それをもっと報道しなければならない。それが外食業界の実態を正確に伝える報道の使命であり、“中小元気企業”がもっともっとメディアに露出してこそ、外食業界が活性化する。その点から注目されるのは「2009年の外食アワード」だ。来週、発表される予定だが、今年の新人賞は誰が獲るのだろうか?この3年間は、もつやき処い志井の石井さん、てっぺんの大嶋さん、DDの松村さんだった。いずれも受賞を機に飛躍している。拝啓、『週刊ダイヤモンド』編集部殿、ぜひ「外食アワード」を取材しに来てください!

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