「言葉の力」を見直せ!~2009年年頭にあたって

「言葉の力」を見直せ!~2009年年頭にあたって

2009年が始まった。年明けから明るいニュースはない。経済はもちろん、政治も最悪だ。この危機の時代に、リーダーたる麻生首相の言葉が軽すぎる。失言や前言の撤回を繰り返している。これでは、国民から信頼を得られるハズがない。一方、アメリカ大統領に就任するオバマは「言葉の力」をもっている。


『オバマ語録』が売れているという。それもそのハズだ。演説では、「Yes we can」「I have a dream」といった短いが、分かりやすい言葉がリズム感よく飛び出してくる。聞く者は、いつの間にか彼の演説に惹き込まれていく。どんな政治を行なうか、まだ未知数だが、アメリカの未来に、人々は希望や夢を抱く。専門家は「(オバマは)人々のための政治を行う、という一貫したメッセージがこめられており、彼の発言には人の心をつかむ力がある」と解説している。言葉は「気」を変える力をもっているのだ。時代の「空気」を変え、人々を「元気」にし、「景気」を回復させる力である。

年末年始、“巣ごもり”していた私は、偶然にも、普段積極的には見ないETV(教育テレビ)の番組に魅かれて見入ってしまった。年末の「あの人からのメッセージ2008」(2008年に他界された有名人の語録ドキュメント)と正月の特番「ETV50 教育テレビの逆襲~よみがえる巨匠のコトバ」である。思想・文学・科学・芸術の巨匠たちの貴重な言葉の連発。混迷を深める時代、とても心に響く言葉が多かった。「よみがえる巨匠のコトバ」で印象的だったのは、矢沢永吉の言葉。矢沢がたまたま成人式の式典会場をタクシーで通りかかった際に、賑やかな若者たちを見て、こうつぶやいた。
「運転手さん、このなかの何人が幸せになれるんでしょうね?」
私はそれを見ながら、何故か<ゼットンの稲本健一さんがタクシーで派遣村の失業者たちを見かけたら、どんな言葉を発するのだろうか?>と想像してしまった。

「あの人からのメッセージ」では、昨年1月に106歳で亡くなった永平寺78代住職宮崎奕保(えきほ)氏の2年前のインタビュー。この言葉も記憶に残った。
「自然は、りっぱやね。私は日記をつけているけれども、いついつ花が咲いた。いついつ鳥が鳴いた。いつも同じだ。決まっているものは法だ。自然は法だ。変わることがない」
「人間は、いつ死んでもいいと思うのが、悟りだと思っておった。ところがそれは間違いやった。平気で生きておることが悟りやった」
「平気で生きておることはむずかしい。死ぬときが来たら、死んだらいいんやし、平気で生きておるときは、平気で生きていたらいいのや」
「褒められても、褒められんでも、やるべきことをして、黙って去っていく、それが実行であり、教えであり、真理だ」

飲食業界でも新年の挨拶などで、経営者、店長たちがそれぞれの言葉で、2009年という厳しい年を迎える気構えや励ましについて語っていることだろう。あるいは、最近では、経営者がブログで率直な言葉を書き綴ることも多くなった。言葉は力である。混迷の時代は右往左往せず、自らの言葉を磨くことから始めたらどうだろうか?