ヤバイね。名古屋飲食マーケット、大丈夫?


 ◇トヨタが「接待自粛」--タクシー「チケット見ない」


 トヨタ自動車が出したA4判1枚の文書が、名古屋を代表する繁華街・錦三(きんさん)(中区錦3丁目)を凍り付かせた。09年3月期の営業利益見通しを前期比7割減に下方修正した11月6日の「トヨタ・ショック」直後、「忘年会やお歳暮遠慮する」と下請けメーカーに通知。下請けも続々と接待自粛を決めたためだ。狙いはコスト削減の徹底。同様の文書を孫請けに出す下請けメーカーも現れ、自粛の連鎖が広がった。

 高級クラブから安い居酒屋まで約1600の飲食店がひしめく錦三は、08年3月期まで7期連続で最高益を更新したトヨタとその取引先の恩恵を受けてきた。だが、今年の夜は例年になく静かだ。客のいないソファを前に高級クラブのママが嘆く。「これまでうちでお金を落としていたのは、トヨタを接待していた部品メーカー。トヨタが接待を受けないようにしたので、全然来なくなった」。客足を戻すためのイベントで、キャミソール姿に着替えて接客していたホステス(27)も「売り上げ? 去年の3割以下」と顔を曇らせた。

 名古屋市の大手タクシー会社は、トヨタの幹部用ハイヤー運転手の3割を別の部署に異動させた。トヨタが、公式行事以外は割安なタクシーを使うよう指示したためだ。そのタクシー利用も自粛が進み、別の会社では前年同月比約2%減で推移していた売り上げが9月は5%減、11月に入ると15%減に。「1日10枚はあったトヨタ系のチケットも見ない日が多くなった。1日の売り上げも1万円落ち、半分くらい。家族持ちは食べていけないよ」。客待ちのタクシー車内で、男性運転手(66)がため息をつく。

 中部経済産業局によると、東海3県(愛知、岐阜、三重)の鉱工業生産指数(02年=100)は07年10~12月期に135・7と過去最高を記録した。しかし、08年以降、下落に転じ、08年7~9月期はピークに比べ5・6%減に。同期間の全国平均(2・8%減)の2倍の勢いで低下した。

 しかも、米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)などの影響で米国経済の落ち込みがより激しくなった08年10~12月期の統計が出るのは年明けで、「より大きな減少になる」(アナリスト)とみられている。これまで日本の景気拡大をけん引していた東海地方は、景気後退のスピードでも全国の先頭を走っている。【鈴木泰広、米川直己】

毎日新聞 2008年12月9日 東京朝刊