現代の料理屋さんで素から料理を仕上げる店が少なくなりました。
たとえば胡麻豆腐を取り上げてみましょう。
昔は「磨き胡麻」と言う胡麻をつるつるに磨いた純白の物を仕入れました。
それをまず大きな鍋に入れ、中火で30分から1時間ほどじっくりと煎ります。
参考料理画像
もちろん鍋は両手鍋の大きなものを使い、常に鍋を火の上で振りながら胡麻を踊らせる訳です。
これが又重労働でたまらなくしんどいのです!
狐色の少し浅い目に煎ると胡麻は香ばしく厨房に香ります。
火からおろしてもまだ振り続けます。 それは直に止めると胡麻の熱で中が焦げてくるからです。 しばらく荒熱が取れるまで振り続けます。
ちなみにこの鍋は約7Kg程あります。
参考料理画像
そしてここからが更に地獄です!!!!
すり鉢に入れた胡麻は細かくなるまで摺り続け、どろっと油がにじみ出てくるまで摺り続けます。 約1時間から1時間30分ほどです。
丁稚の時は「胡麻を用意しろ」と言われるとゾッとしたものです。
しかし今では「練り状胡麻」と言うのもがあり、1kg単位で売っています。
約3時間近くかけ用意した胡麻のペーストも電話1本で業者が届けてくれます。
そしてその胡麻と吉野葛をボールでよく混ぜ裏ごしで漉し、鍋に入れとろ火で3時間から5時間練り続けます。 もちろん火にかかっている物なので手を休めた瞬間に焦げたり飛び散ったり失敗に繋がります。
そして流し缶に流しいれ冷ませると胡麻豆腐が出来たのですが、ここでも最近は売っている物があります。
一昔前は人件費も安くこのように手間隙をかけて作った料理ですが、最近は工場で作ったものが多くなり、板前さんの素から作ると言う知識や技術がなくなってきました。
私の親方の時代は「味噌、醤油」まで造ったそうです。