はるか昔の話。
引っ込み思案で、いつも誰かの後ろに隠れているような子供だった私。
いじめられることも多くて、小学校の時にはとても傷つくことが多かった。
人を信じることができず、どこか覚めた目で自分を見ていた。
中学生になって、ある出来事が自分を大きく変える事になった。
担任の先生が顧問をしていた演劇部の人数が足りないということで、無理矢理同然で入部することに。
何もわからないまま、何も知らないまま文化祭で初めてお芝居を演じることになった。
初めて台本をもらい、セリフを読んだ時、自分の中で何かが弾けたのを覚えている。
自分の知らない世界で、今の自分ではない人間を演じられると言うことを知って、私はみるみる変わっていったように思う。
舞台に立つと、不思議と自由になれた気がした。
ここにいるのは自分ではない。という安心感と快感が入り混じった感覚を今でも鮮明に覚えている。
周りの反応は特に大きく、いつも存在を消している様な自分が、お芝居を演じていることに同級生や親、先生までも驚かせることになった。
まあお芝居がなんたるかなんて事もわからない状態のまま、夢中になっていたから。
高校生になり、私は迷わず演劇部に入部することに。
将来は役者をやりたい、演じたいと思うようになっていた。
私が進学した高校は、高校演劇コンクールでも毎年全国大会へ出場するような有名校で、それなりに配役を勝ち取ったり、色々大変なこともあったけど、とても充実した毎日だったように思う。
主役として舞台に立つ快感と緊張は、言葉では言い表せないほどのものだった。
今思うと、その情熱はものすごいものがあったようで、何もわからない状態で、気持ちだけで劇団四季のオーディションを受けに行くという手紙を送ってしまったことがあったほど。
学校を辞めて、お芝居をしたいと無謀にも。
困った劇団の方から親に連絡が入って、大騒ぎになって迷惑をかけたこともあった。
今考えたらありえない笑い話だけど、本人は至って真剣だったんだよね。
九州の田舎に住んでいたから、その時は東京に行かなくては何もできないと思い込んでいて、どうすれば役者になれるかなんてことを考えもせず、衝動で動いていた気がする。
続くかも