毎年100冊を目標に読んでいますが、今年は唯一の読書時間である通勤時間をほぼ仕事か勉強に費やしていたので、最終的に68冊止まりでした。

 

 

◆今年のBest 5

 

第1位 宙わたる教室(伊予原新)

「学力」や「成果」だけでは測れない教育の本質を静かに描いた作品だと感じました。教室は単なる知識伝達の場ではなく、生徒が自分の居場所を見つけ、世界とつながるための“出発点”になり得るのだと再認識しました。

 

特に印象的だったのは、教師が生徒と同じ目線で考え、試行錯誤しながら伴走する姿です。生徒の背景や不安、可能性を丁寧にすくい上げ、「できない理由」ではなく「できるきっかけ」に焦点を当てる姿勢は、私たち教師が忘れてはいけないことだと思いました。

 

この物語の中心にあるのは、人が変わっていくプロセスであり、「学ぶことが人生を少し前に進める力になる」という教育の希望が感じられ、それは物語で描かれている科学や探究活動だけでなく他の学問においても同じだと感じました。教える側にとって、教室でのかかわり一つ一つが、生徒の未来に静かに影響を与えていることを思い出させてくれる一冊です。

 

第2位 アラジン(小倉銀時)

京都の裏ビルの管理人・小日向がヤクザから大金をだまし取る復讐劇を描いた作品です。どちらかと言うとうだつの上がらないただの「オッサン」が、悪党たちに対して周到な計画を仕掛けていく展開には、最後まで飽きることなく引き込まれました。

 

深く考えずに楽しめるエンタメとして満足度の高い1冊でしたが、作品中に描かれる某宗教信者のための土葬墓地をめぐる土地買収の話は、単なる物語上の装置ではなく、現在の日本社会が直面している現実的な問題とも重なって感じられました。表では「多様性」や「配慮」の名のもとに進められながら、実際には地域住民への説明不足や、一部の利害関係者による不透明な動きがある構図は、決してフィクションだけの話ではないと感じました。そうした流れに対して、小日向のように行動に移す存在が描かれている点が印象的でした。正義を声高に主張するのではなく、裏側を見抜き、歯止めをかける姿は今の日本にこそ必要な人物像かも知れません。

 

第3位 霧をはらう(雫井侑介)

 

小児病棟で起きた点滴殺傷事件。4人の子どもの点滴にインスリンが混入され、2人の幼い命が失われた。物証がないまま逮捕されたのは、生き残った女児の母親だった。ミュンヒハウゼン症候群が疑われた母親は、医療従事者を含む周囲との軋轢から、不利な立場に立たされ、過酷な取り調べの末に自白するが、のちに否認する。

 

母親は本当に冷酷な殺人犯なのか。弁護士の伊豆原は母親の無実を信じ、有罪率99%といわれる刑事裁判で無罪を勝ち取るため、病院関係者の証言を集め、検察の立証に立ち向かうが、その証言が母親の有罪を示していた。この母親が無罪なら真犯人は?

 

元々小児病院で働いており、多様な家族像を見てきたので非常に興味深い作品でした。人とのかかわり方についても深く考えさせられる作品でした(あまり詳しく書くとネタバレになるので割愛します)

 

 

第4位 殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス(五条紀夫)

 

タイトルの時点で「勝ち」という印象そのままに、勢い・発想・テンポの三拍子がそろった痛快エンタメでした。誰もが知る太宰治の『走れメロス』を、ここまで大胆かつ軽やかに料理できるのは純粋に素晴らしいと思いました。

 

真面目に考え始めたら負け、ツッコミながら読むのが正解で、展開のバカバカしさ(いい意味で)が最後まで失速しません。にもかかわらず、物語としてはきちんと筋が通っていて、「ちゃんとミステリーしている」のがまた笑えるポイントでした。

 

第5位 刑事弁護人(薬丸岳)

 

現役の女性警察官がホストを殺してしまう。本人は正当防衛を訴えるが、実はそれは過去のある事件と結びついた殺人だった。

 

薬丸岳といえば少年犯罪を扱った作品が強く印象に残りますが、本作ではその枠にとどまらず警察官が犯した殺人事件と、過去に起きた事件が静かに結びついていく構成が非常に読み応えありました。

 

物語の中で印象的なのは、「被害者家族に報いるとは何か」という問いを真正面から投げかける弁護士の存在です。殺人事件の弁護士と言うと犯人の人権を謳い、被害者家族を傷つける存在というものが思い浮かびますが、感情的な処罰や形式的な有罪判決ではなく、たとえ残酷であっても真実を知ることこそが被害者とその家族に向き合う唯一の道だと語る姿勢は、本作の倫理的な軸になっています。そしてそれが加害者本人の心理とも結びつき徐々に真実が明らかにされていく様子が興味深かったです。

 

◆今年読んだゴミ

・湊かなえ「暁星」: 公判中の事件をモチーフにしたようですが、焦点がズレまくりでした。公判後、10年ぐらい経ってからならエンタメとして読めたかも。というか湊かなえ作品に飽きたのかもね。もう毒親シリーズはお腹いっぱい。

 

ふぅ、書きあげるのに時間がかかった…。来年は読んだらすぐに感想文を残しておこう。(と言いつつ、すぐに忘れる)

 

来年はもう少し賢くなれるような本をもっと読もう。洋書も読もう。と言いつつ、AudibleにもKindleにもミステリーの積読がありすぎて、おそらく来年1年分は積読消化だけで過ごせそうです。

 

では、皆様来年も良い読書ライフを!