◇KYOKO KOIZUMI
 《映画デビュー作は崔洋一監督の「十階のモスキート」(83年)だ》

 すてきなマイナー映画でした。アイドルとしてメジャーから出発していることもあって、アンチメジャーみたいなところが昔からあります。子供の時からハリウッド映画よりヨーロッパ映画の方が好きでしたし、自分が好きな日本映画もマイナーというか、作家性の強い作品が多かった。

 映画にかかわらず、アイドルからこの世界に入り、ここまでと決めてしまったら止まってしまう。生きている限り進化していきたいし、知らないドアを開けていく方が好き。何をやってもキョンキョンと言われるもの足りなさも感じていました。別の環境に自分を置いて、どんどん作品を積み重ねていくしかない。

 《30代になって映画の出演が増え、女優賞を何度も受賞している》

 ターニングポイントになったのは相米(そうまい)慎二監督(故人)の「風花(かざはな)」(01年)でした。相米監督最後の作品で、何とか滑り込めました。余計な説明のセリフやカットを一切撮らないし、映画の表現方法を理解していた監督でした。役者として出会えたことは幸福なことですが、最後の作品に主演した女優としての責任感も感じます。一方、「トウキョウソナタ」(08年)の黒沢清監督は、全員の動きを監督がやって見せてくれました。撮りたいものが決まっていてシンプルだけど、俳優がそれぞれの役の感情に集中できる現場でした。

 《脚本を読むのにすごく時間をかける》

 役にもよりますが、この文字たちが何を伝えたいかを、きちんと受け止めようと思うからです。自分なりに映像や声のトーン、相手の俳優を想像します。読んでいる途中に「このシーン燃える」とか「このセリフ言ってみたい」とたったワンシーンでも感じると役を引き受けてしまいます。

 大きな身ぶり手ぶりをする舞台を経験したことで、映像にフィードバックすることがたくさんありました。度胸がつき、思い切り演じることにちゅうちょがなくなりました。映画は舞台よりライブ感があります。激しく感情を出すシーンなどは特にライブ感を感じています。

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 ■人物略歴

 ◇こいずみ・きょうこ
 歌手・女優。神奈川県厚木市出身。「常夏娘」「水のルージュ」などヒット曲多数。映画はほかに「空中庭園」など。44歳

毎日新聞 2011年2月3日 東京朝刊