◇KYOKO KOIZUMI
《小泉さんが映画「毎日かあさん」の現場の雰囲気を作った》
どの現場でも、全体のムードは絶対女優にかかっていると思います。「トウキョウソナタ」(08年、黒沢清監督)の時もそう感じました。今回は特に、小さな子どもたちと一緒に仕事をしているので、この子たちが朝、楽屋に入ってくる時に勢いよくうれしそうに入ってくる毎日にしたかったんです。夏休みをつぶして、友達が旅行とか行っている中、毎日現場に来て、大人にああだこうだ言われているわけで、毎日来るのが楽しい、っていう環境は、絶対お母さん役の私が作るしかないと考え、そうしました。
《本当の家族のような現場だった》
そうやって、自分も含めてだましていくしかないですからね。だから、家族みんなでいつも一緒にいたんです。
《小林聖太郎(しょうたろう)監督(39)にはいろいろな提案をした》
今回は特にしましたね。やっぱり、役を引きずるんでしょうけど、この作品に対する母親としての責任感なんです。子どもたちの心も含め、守ろうという気持ちが全てに対してありました。監督には厳しかったですね。ふざけたことしてもらったら困るって。何もしてないんですけどね。
小林監督は内気な人だから、あまり言葉にするのが上手じゃなくて、監督の迷いみたいなものが私たち役者に伝わってきた時に、こんなに心細いことってないんですよ。だから監督がしっかりしてくれ、みたいなことをスケバンみたいに言ったことがありました。
助監督として優秀で、「雪に願うこと」(06年)など前にも一緒に仕事したので言いやすかった。私も監督を育てたかったんです。小林監督は、大きな作品としては1作目。久しぶりに、助監督を重ねてきてデビューした監督なんです。そういう人って映画界で減っているので、余計に育ってほしい。そのせいか、他の監督たちがたくさん陣中見舞いに来てくれたんです。
私、監督に対しても母親の気持ちになっちゃったんです。(原作者の)西原理恵子さんがそういう生きざまの人だから、おのずとそうなりますね。
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■人物略歴
◇こいずみ・きょうこ
歌手・女優。神奈川県厚木市出身。44歳
毎日新聞 2011年1月26日 東京朝刊