国外財産調書制度を回避する方法
日本で「資産家」と呼ばれるひとのほとんどは財産の大半が国内不動産か自社株で、自由に使える金融資産はじつはそれほど多くない。海外に5000万円の資産を移転できるということは、数億円の金融資産を保有しているということだから、国外財産調書の提出義務を負うひとは富裕層のうちでもごく一部だ。しかしこの限られた富裕層こそが、PBの得意客なのだ(とりわけ海外のPBは不動産担保融資を扱えないので、多額の金融資産を持つ富裕層に営業するしかない)。こうして、国外財産調書の提出義務を逃れるにはどうすればいいか、PBの担当者がさまざまなアイデアを携えて富裕層に売り込みにいくことになる。
誰でも思いつくように、国外財産調書制度を回避するもっともかんたんな方法は、調書を提出しないことだ。
そもそもこのような制度が創設されたのは、日本の税務当局が海外の資産をほとんど把握できないからだった。税務当局が独力で海外資産を突き止める可能性(納税者にとってのリスク)はきわめて低く、そのうえ万が一問題になったときでも、罰則が適用されるのは“故意”の調書不提出なので、「そんな書類を出さなければいけないなんて知らなかった」といえばいい。故意を立証することは原理的に不可能なのだ。
もちろん税務当局はこうしたサボタージュを予想して、“善意”の納税者でも調書を出していない場合は、過少(無)申告加算税を5%加重するという加罰措置を定めている(国外財産を調書に記載していた場合は、過少(無)申告加算税が5%軽減される優遇措置がある)。逆にいえば、このペナルティを覚悟すれば「善意の無申告」というシンプルな方法を試してみることができる。
それに対してPBは、オフショアに法人や信託を設立することを勧める。これは調書の提出義務が日本国に居住する「個人」であることを利用したもので、国外財産を個人以外に持たせてしまえばいいという発想だ。
典型的なのは、ブリテッシュ・ヴァージン・アイランド(BVI)など法人の登記情報が公開されない国に、弁護士などを代理人としてオフショア法人を設立し、その法人口座をPBに開設するスキームだ。国外財産調書制度の適用前に個人資産をオフショア法人に移しておけば、“合法的に”調書提出義務を回避できる。
だがPBの提案するこの“高度な節税スキーム”は、顧客をより大きな災厄に引きずり込む可能性がある。
アメリカでは、海外に80万円以上の資産があれば申告義務
アメリカは世界でもっとも納税者に厳しい税法を持つ国として知られており、海外の金融機関に1万ドル(約80万円)以上の資産を有する場合は、IRS(内国歳入庁)への報告が義務づけられている。もっとも報告義務の基準がわずか1万ドルでは対象者は膨大になり、条文は死文化して納税者はほとんどこの規則を知らなかった。
ところが09年2月、スイスのプライベートバンク大手UBSが富裕な米国人顧客の脱税を幇助していたとして総額7億8000万ドル(約620億円)の罰金を支払うとともに、285人の顧客名簿を米司法当局に提出(その後の米国とスイスの政府間交渉でさらに4400件あまりの顧客情報を追加提出)すると、状況は大きく変わる。IRSは埃まみれのこの古い条文を引っ張り出して、UBSに口座を保有する米国人すべて(推定5万2000口座)に対して資産情報を提出するよう通告したのだ。
IRSの求めに応じて自主的に海外資産を申告すれば、軽減税率が適用される(それでも追徴課税や延滞税を加えると口座残高の40%を失う)。それに対して口座情報を秘匿し、UBSの提出した名簿に名前があった場合は悪質な脱税と見なされ、口座残高をはるかに上回る罰金を科されるばかりか、訴追されて監獄に放り込まれることにもなりかねない。
それでは、「悪質な脱税」とはどのようなものなのか。
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