初めての方は
Hachi's Diary の歩き方。
をどうぞ。





「あぁ。プロってすごいなぁ…」

初めてそんな風に思った瞬間だった。


アタシは身近な知人様方に
麻雀を教えてもらった頃から
みんなで打つセットのレートは
いつもピンだった。

しかも
協会ルールに限りなく近いルールの為
トビだってない。
アタシは箱下60000点まで経験があるし
アタシの師匠は
親の「小四喜・字一色」で箱下90000点までいったツワモノだ。
素点だけで12000P。
これにウマが付くんだ。ゾッとするな。


その頃は大学生だったアタシ。
アタシが負けると
周りの勝った人達が
いつもゴハンをごちそうしてくれた。

それでもやっぱり出費は減らしたい。
当たり前のコト。


ダンラスで
箱下60000点になったその時。

アタシは時が過ぎるのをひたすら待っていた。
何度も何度も役満を作りながら。

「オーラスで着順の変わらない和了りをするのは良くないよ。」

こう教えられたばかりだった。

アタシにこう言ってくれた知人に悪意があった訳でもないし
言いたいコトだって今はわかる。

でもその時のアタシは
「自分よりも麻雀の上手な年上の知人」が言ったコトを 
「着順の変わらない和了りは絶対にしちゃいけないんだ。」
そんな風に解釈した。


だから例えるならば
3着と4着が微差のオーラスなら
4着のほうが気が楽だった。


ラス親は
どんどんツモり和了る。

アタシに残された道は
「役満を直撃で和了るコト」 
ただそれだけだった。
 
 

大体無理だ。
四暗刻の一向聴で放銃。
国士無双の二向聴で放銃。

素点はどんどん減っていくばかり。

苦しかった。

1000点でも1300点でも和了って
気持ちを切り替えて次の半荘にいきたかった。


そんな中
親がノーテンで半荘は終了。



アタシには疑問が残った。
「着順の変わらない和了りって、本当にしちゃいけないの?」
 
満貫を和了れば800Pがプラスになるし
跳満を和了れば1200Pのプラスになる。
和了りを放棄して
素点が削られていくよりよっぽどいい。
 
「自分がこの状況から少しでも得をする選択」は
してはいけないのだろうか?
 
 

後日。
現・日本プロ麻雀協会代表の五十嵐プロ(当時は副代表だったと思う)に
その時の状況や
アガラスや着順の変わらない和了り・それに対して自分が思うコトを話してみた。

五十嵐プロはこう言って下さった。
「レートを乗せてやっている以上、和了って損なコトなんて何もないんだ。1000点だって100Pの得になる。それを否定する権利なんて誰も持っていない。ただ、もう少し頑張ったら、もっと得出来るなっていう状況もあるんだ。その辺りの考え方は、初音もだんだんわかってくると思うよ。」
そして
「箱下60000点!?そんなのさっさと和了って“はいっ!!次っ!!”って言っちゃえよ。」
 
アタシはあの時初めて思ったんだ。
「あぁ。プロってすごいなぁ…」って。
 
アタシの尊敬するプロの方々は 
麻雀中に一生懸命考えてやったコトを批判しない。
 
そこに何か間違いがあるならば
「アドバイス」という形で助言できる。

だから尊敬出来るのだ。



人それぞれ
その半荘に掲げている目標は違う。

リーグ戦には
それが如実に出ている。

序盤戦ではアガラスだって見るし
高目&裏期待のリーチだって見る。

終盤戦では
昇級を目指す人・残留を目指す人
最終日の成績次第で
どっちにも目がある人。

その人なりのビジョンとプランがあって
その人がその中で最善の選択をすればいいだけのコト。

だって
自分の為に麻雀打ってるんだもの。




先日。
れっど'sにご新規のお客様。

2人組の若い男の子。

どうやらフリーはあまり経験がないらしい。

最初はメンバー2人が同卓していたけれど
そこにお客様がご来店。

1人で立ち番をしていたアタシは
来店した常連さんにこう伝えた。

「2人ご新規様なの。点数計算も自信がないみたいだからよろしくね。」

10分後。
その卓からは何やら他愛もない世間話をする声。

20分後。
とても楽しそうな笑い声。

何だかとても感動した。

こんな空気を作れる人になりたいと思った。

その人はプロではないけれど
その瞬間アタシの中では立派なプロだった。


みんな最初の気持ちを忘れていくから。
だんだん自分の目線でしかモノを見れなくなる。

実力の差が結果として出づらいこのゲームで
ちょっとでもヌルいコトを言うと「コイツは下手くそだ」と思われるのが怖いのかもしれない。

アタシには
そんなコトどうだっていい。

ただ
あの笑顔をもう1度見たいだけ。


 
 
 
議論するつもりも
批判するつもりもない。

でもアタシが1つ言えるのは 
五十嵐プロのあの言葉がなかったら
アタシはきっとココには居ない。

ただそれだけ。