「現場まで駅からタクシーを使って来てください」
よくあることなのだが、いつも思う。駅にタクシーは停まっているのだろうか、と。
何度か行ったことのあるスタジオだったので、許されるならば自分の車で行きたい。敷地内の駐車場を使わせてもらえる身分ではない。近くにコインパーキングがひとつだけあるのも知っている。そこは6台しか停められない。大所帯の撮影のときは絶対空いていない。
やはり、電車で行ってタクシーに乗るべきだろう。
前日にグーグルマップを最大限に拡大してタクシー乗り場まで記された地図をプリントアウトして、入り時間のだいぶ前に入っても大丈夫な現場だろう、とだいぶ早めに駅についた。
案の定、タクシーはいなかった。平日ならば通勤者などでそれなりに賑わっている駅なのだろう。土曜日の午前中、駅前は閑散としていた。人もほとんどいなかった。待っていてもタクシーが来るとは思えない。
僕は以前、同じような状況になるだろうと、タクシーアプリをダウンロードしていた。そのときは駅前にタクシーがガンガン停まっていたので使わなかった。アプリの使い方はわからない。とはいえ僕はそこまでスマホオンチではない。『ここで乗る』を押してみた。一番近くにいるタクシーでも10分かかるという。押してよかった。
待っていた10分間、僕の目の前を通過したのは軽自動車が1台だけだった。本当に、押してよかった。
颯爽と現れたタクシーは、なんともかっこよかった。
現場に入り支度部屋に行くと、「早くないですか」とメイクさんに言われてしまった。
撮影のほうは、毎度のことだが呼んでもらえたことに感謝しつつ、なんとか無事に終えることができました。少しだけ肩の荷がおりました。また大きな荷物を背負って現場に臨めるよう、頑張ろうと思う。