語呂遊びが好きなBLESSが名付けた新しいコレクション(26AW)のタイトルは “N°82 Heclectic” “慌ただしさ”を意味するHectic、“様々なものから良い部分を取り入れた”状態を指すEclecticから成る造語だ。BLESSは今回、過去のアイテムを再構築したコレクションを制作。同時に、彼ら自身が生み出したプロダクトを振り返り、それらが状況や時間と共に変化してきた様子を観察したという。このBLESSの姿勢は今に限ったことではない。これまでの制作においても絶えず巡らせてきた考え方だと思っている。
デザイナーのイネスとデジレーは自らを、 “Situation Designers”と呼ぶ。彼女たちは単に物そのものをデザインするのではなく、BLESSのプロダクトが置かれる空間や、それを使う人、その周囲で起こる出来事まで含めた“Situation”をデザインすることを目指してきた。BLESSがこれまでランウェイ形式のコレクション発表は一切行わず、生活空間やパブリックな場所をショーの会場として選択しているところを見ると、彼らがいかに物、人、空間が影響し合うことに関心があるかがわかる。これまでを振り返るとBLESSの洋服を取り巻く環境には常に人の笑い声や、「すげー!」と声が上がるようなパワーがあった。シチュエーション・デザインとしてのゴールはここにも確かにあるのかもしれない。
N°20 O.kayers
ホテルのアメニティを全てBLESSのプロダクトで埋め尽くし、実際に宿泊できるサービスを提供。
N°22 Perpetual Home Motion Machines
「私たちの “存在”との継続的な対話は、過去の行為に対して責任を引き受ける姿勢と強く結びついています」 BLESS(N°82 Heclectic ステートメントより)
BLESSは自分たちが取り組んできた一つひとつのアクションに責任を持ち、プロダクトに時間をかけて向き合っていることが伝わってくる。彼らに新しい物=良いという思想はさらさらない。
再構築のシリーズはBLESSがブランド設立当初から取り組んできたアプローチではあるが、近年はその手法をより積極的に取り入れているように感じる。既に存在しているものをどう面白く生まれ変わらせるか。BLESSのテーマであり、我々自身も強く影響された生き方でもある。既にあるものに新たな意味を与えていくその姿勢は、FOMEの店内に並ぶRUN COLLECTIONのデザイナーSusan Ciancioloの信念とも共鳴している。
BLESSの洋服はそれでいて新しい。再構築であろうと全く目新しいものへと変身させるセンスには何かほとばしるものがあり、胸がバクバクする。次々と仕掛けてくる彼らのデザインは「そのやり方があったか」と感じる発明的なアイデアとユーモアが詰まっている。
たとえ創作に対してジレンマを抱くことがあったとしても、慌ただしいファッションサイクルに飲まれることなくとにかく彼らは作り続けている。どんどんと湧き出るアイデアを妥協することなく形にしていく2人の活動をこれからもずっと見ていたい。
Chloë Sevigny wearing BLESS
Photos by Mark Borthwick
ということで、今季のBLESSのアイテムを少し紹介。
こちらは定番でリリースしているMA-1「Sleevebomber」袖の部分が本来のMA-1の袖くらいのボリュームで編まれたハンドニットでドッキングされている。ポップコーンニットのポコポコとした表情に高級感があり、よく見ると何色もの毛糸を使っていて奥行きの感じられるカラーリングになっている。編み地が綺麗で、裏できても全く違和感がない。スラックスと合わせてラグジュアリーに見せるのもいいし、ショーツに合わせた感じも格好良かった。こういうわかりやすくて強いBLESS大好き。MA-1という大衆的なミリタリーウェアを使っているから普通にリアルクローズとして着られるところも気に入っている。
これも同じく再構築のシリーズ「Jeans Doublefront」 名前のまんま、フロントにジーンズの前身頃がドッキングされたデザイン。これが滅茶苦茶格好良い(笑) 一見ふざけたデザインに見えるけど、シルエットが綺麗に出るように細かく作られていたり、付属のボタンをつけるとジョガーパンツのようなシルエットに変化させられたりと、履けば履くほど発見があるパンツ。抜き方も良いし、ただ面白いだけで作っていないところがミソだと思う。欲しい。
これはBLESSの中でも長年気になっていたアイテム「Workcoat」店頭に並ぶのは初めてでテンションが上がっている。前身頃は上質なウール生地を本来のワークコートのように仕立て、後ろはまさかの総ニット。総ニットって初めて言った。ノーマルなデザインに違和感を作るシュールな発想と、ニットを得意とするBLESSのスタイルが反映された純度100%のスペシャルピース。しばらく秋冬のオーダーシートから姿を消していたこともあり、今回飛びつくようにオーダーした。スタイリッシュさとはかけ離れていて、和装や民族衣装に近いプリミティブな雰囲気が妙に刺さる。
そんなこんなでここでは紹介し切れなかった分もあるので、他の商品はぜひ店頭で!
ブレずにBLESS。
佐々木










